0242・ライブ配信されるという事
「2000度ですか……コレはとんでもない兵器と言っても過言ではないのでは? 流石に信じられません。どのようなものかは詳しく分かりませんが、本当に敵に対して2000度もの熱を加えられるなら……」
「剣造さん、顔! 顔!」
「あ、ああ。これは申し訳ない。元軍人としては、これ程怖ろしい兵器はありません。もちろん人が使うという前提なのでそこまでではないでしょうが、それでも使われたら戦車でも耐えられませんよ。少なくとも中に乗っている者は耐えられません」
「「「「………」」」」
「まあ、かつてのゴブリン四将軍どもと同じだな。アレも自称していただけだが、ダンジョンマスターが作り出したプレートアーマーを装備し、こちらの武器が効かなかったからな。ドラゴン素材のバルディッシュでさえ弾かれた程だ」
「「「「「ドラゴン!?」」」」」
「ほ、本当にドラゴンが実在するんですか? あんな空を飛ぶバケモノが!? ………うわー、ファンタジーってシャレにな「おい、音声入ってる!」らねえ」
「はははは、見ている方々にはすみません。スタッフの子達も仰天したようです。それはともかくドラゴンというのは翼が大きい、空を飛ぶ大きなトカゲの様な生き物でしょうか?」
「そうそう。分かりやすいのならコレかな? 私の防具だけど、コレを鑑定してみれば分かるよ」
そう言うと、ミクは服というか防具と鉈を取り出した。今のミクはワンピースとスカートに竜革のサンダルというラフな格好だ。透けないものの、薄いワンピースを押し上げている双丘がハッキリ分かる姿で映っている。
剣造は流石に失礼な視線は向けないものの、若いスタッフからはガンガンに視線が向けられているが、ミクは欠片も気にしていない。だって肉塊だし。
それは横に置いておくとして、再びの鑑定結果に驚く剣造。
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<竜革のライダースーツ>
ドラゴンの翼膜を使い<喰らう者>が作り出した全身型の防具服。元は<※の神>が作り出した物を<喰らう者>が複製して使っている。オリジナルは神の手製なので性能が高いものの、それは<喰らう者>によって保管されている。
1000度までの熱量なら耐えられる素晴らしい装備だが、<喰らう者>は過去にドラゴンのブレスと【白光陽熱衝】で焼かれた事がある。珠玉の一品。
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<剣王竜の鉈>
剣王竜ことアークソードドラゴンの骨と牙から作られた鉈。<喰らう者>が新たに己を表現する為に作り上げた武器であり、通常のドラゴン程度ならば何も存在しないかの如く切り裂く。珠玉の一品。
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「「「「「………」」」」」
「一応伝えておくと、魔物というのは区分があるんだよ。下からレッサークラス、ノーマルクラス、ハイクラス、グレータークラス、アーククラス、そしてアンノウン。最後のは正体不明かつ理解不能な相手の区分だね」
「えーっと……さっきの鑑定結果には、確かアークソードドラゴンと出てましたけど、それって滅茶苦茶強いって事ですよね?」
「もう少し正確に言うとな、それぞれのクラスで下位、中位、上位と区分される。アークソードドラゴンはアーククラス下位だと思う。もしかしたら中位だったかもしれん。あっさり終わってしまったのでな、よくわかっていない」
「というより、アーククラスからは強過ぎる。例え誰であっても喧嘩は売らないのが常識。基本的にアーククラスの魔物は理性が強い。なので無意味に暴れたりはしない。暴れているならば、それはバカが喧嘩を売った所為」
「そもそも何処にでもそういうバカは居るけど、最悪なのが周りを巻き込む事かな。一旦アーククラスが暴れ始めると普通は止められないね。奴等が落ち着くまで暴れ回らせるしかないよ」
「そうだ。そして出来得る限り速やかに、仲間を生贄にしてでも逃げる。これがアーククラスに対する基本的な行動だ。仲間なのに何故、と思ったか? それが甘い。そんな事を考えていると、全員殺されるぞ」
「アーククラスから上は強さの桁が変わる。ほんの僅かな隙で殺されるレベルの強者がアーククラス。生き残りたければ仲間だろうと犠牲にすべし。それができない者はアーククラスに近付いては駄目。邪魔にしかならない」
「魔物というのはそれほど……。ではダンジョン? という場所はとても危険なのでは? そのような場所が何故出来たのかは分かりませんが、仮に神が創ったとするならば、人類を皆殺しにしたいので?」
「神どもの事を私達に聞かれても困るけど、神どもならこう言うんじゃない? お前達に関わるほど暇ではないってさ。そもそも神どもが助けてくれるって考えるのが大間違いなんだよ。あいつらがどれだけの数の宇宙を見てると思う?」
『その中のちっぽけな一つの星に、神どもが注力する事など無い。奴等はそれほど暇ではないしな。精々、勝手に生きて勝手に死ねと言うぐらいだろう。滅びるなら勝手に滅べと言って終わると思うぞ』
「そもそもだが、この星はある程度成熟しているのだろう。ならば何時まで神々に助けてもらうつもりだ? 神は人間種を助けて当たり前だとでも思っているのか?」
「「「「「………」」」」」
「そんな醜い者達は捨てられて当たり前。そもそも最後には自立しろと手を放されるのが神々。私達を派遣されただけマシだと思うべき。私達が派遣される事もない星がどれだけあると思う?」
「「「「「………」」」」」
途中から軍の話は関係無くなったが、各国の宗教者が発狂しそうな言葉を平然と吐く四人。とはいえ、当たり前の事を言っているに過ぎないので文句を言われても困るというところだろう。
その後も適当な話をし、剣造は去って行った。ライブというものを何となくでしか理解していなかったミク達は、事の重大性を把握していない。このライブ動画はコピーされ、各国の字幕付きで放送されたのだ。それが波乱を起こすのは、まだまだこれからである。
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その後も食堂でコンビニのお菓子などを食べていたミク達の下に、突然東達が雪崩れ込んできた。いったいどうしたんだと思うも、周りをキョロキョロした後でズンズンとこちらに近付いてくる。
「先ほど<剣造ちゃんねる>でライブ配信していたと聞いたのだが、間違っていないか!?」
「ライブ? っていうのはやってたよ。話を聞かれたから答えたけど、何かマズかった? 特に問題のない事しか答えてない筈だけどね。そもそも軍の機密? とかいうのは知らないし」
「軍の機密よりも遥かにヤバい情報が流出した可能性があるんですよ! いったい何を話したんですか!? 答えてください!!」
「どうしたんだ急に。まずは興奮せず落ち着いて話せ。そう興奮されても鬱陶しいだけだ、会話にならん」
「「「「………」」」」
東達四人は一旦冷静になろうと深呼吸を始めた。そもそも興奮していても事態は良くなんてならない。軍でも口を酸っぱくして教えられる事である。それを思い出した為、とりあえず冷静になれた四人。教育は偉大である。
そんな四人を見つつ、特に大した事でもないのに何を大袈裟にしてるんだろうなー、と思っているミク達。温度差が激しいが、往々にしてこんなものであろう。
冷静になった東達四人は一つ一つ詳しく聞き取りを始めるのだった。




