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0223・ドラゴンの踊り喰い




 「アルノー様! 話が違いますぞ、アルノー様!! この鎧はどんな攻撃も通さぬのではなかったのですか!? 我等はアルノー様の絶対的な守護者ではなかったのですか!? アルノー様!!!」


 『醜い奴等だな。己が死ぬとなったら泣き言か。あまりにも無様で憐れでしかなく、お前らは人間種と何も変わらんな。他者を見下し、偉そうな顔して踏ん反り返るだけ。自分は安全な所から一方的に敵を殺そうという浅ましさ。まことに下らん』


 「おのれー! 貴様ら如き、我等で十分だ! 死ねぇーーーっ!!!」


 「ヴァル! 実験するから私が戦うよ」


 『了解だ』



 ミクは前に出て右手にナイフを持つ。相手はミクを侮り攻撃してくるものの、ミクにとっては欠伸をするよりも遅い。避ける事もせず、それより速く”ネメアル”のナイフで相手の肩口を攻撃。この一撃は簡単に相手の腕を根元から切り落とした。



 「ギャーーーーーッ!!! 腕が! 腕がーーー!! この鎧を切れる物など無かったのではないのか!? おのれアルノーーー! 騙したな!! 散々我等の尻を掘ってきて、この仕打ちかーー!!」


 「尻を掘られてたのかよ。気持ち悪いな、こいつら。今までは喜んで尻を掘られておきながら、駄目だったらすぐに掌返し。本当に人間種と何も変わんねーな。こんなヤツ山ほど見てきたぞ」


 「おのれーー! 貴様ら如き矮小な人間種と一緒にするな! 我等は崇高なるゴブリン族ぞ。貴様らのようなロクデナシとは違うのだ! ここで叩き切ってくれるわ!!」


 「無理だって。幾ら武器が強力でも、あんたら碌に戦った事ないだろ。剣の振り方も碌に知らないじゃないか。それでどうやって俺達を倒すんだよ。明らかに無理だろうに」


 「五月蝿い! 五月蝿い! 五月蝿い! 貴様ら軟弱な人間種とは違ウギャーーーッ!!!!」



 いちいち話を待ってやる必要も無いので、四肢を切り落とし終わったミクは大声で喚いて奴に突き刺した。見事に太腿を貫通し、激痛にのた打ち回っている。もう一人残っている奴にはスティレットを使うも、鎧に止められてしまう。



 「成る程。ドラゴンの爪で作ったスティレットは防がれるね。ところがネメアルの牙と爪で作ったナイフは楽々切れると。こいつらの鎧はドラゴンの鱗クラスの防具かな? 優秀だけど、その程度だね」


 「竜鉄はドラゴンの牙や爪、鱗よりは一段落ちる。代わりに鉄と混ぜる事により粘りが出るから、武具にはこちらの方が良い。とはいえ、まさか竜鉄を防ぐ防具があるとは……」


 「相当に優秀なんだとは思うが、それでもアーククラスの魔物であったネメアルの牙や爪は防げんか。まあ、当たり前と言えば、当たり前なのかも知れんがな。それにしてもさっさと殺すぞ。ここで暇を潰す意味は無い」



 頷きあったミク達は四肢を切り落とした奴を残し、後はメイスとウォーハンマーで【深衝強撃ショックスマッシュ】を放ち殺害。残り一人を殺す前に準備を整える。


 そしてヴァルが殺すと、赤い魔法陣と青い魔法陣に小瓶が出てきた。中に入っている液体は黄金色をしており、嫌な予感しかしない。それはミクのアイテムバッグに入れておくとして、ここから先にミク一人で行こうとすると止められた。



 「申し訳無いが、今回はミク一人に行かせる訳にはいかん。相手は光半神族リョース・アールヴだ。私も文句を言わねば気が済まんのでな。悪いが行かせてもらうぞ」


 「なら、俺達も行きますよ。それだけの覚悟はありますし、仲間外れは困りますからね。そろそろこういう事も乗り越えなきゃいけないと思うんですよ。ですから無理にでも行きます」



 ミクは仕方なく両方の意見を受け入れるも、おそらくエイジの方は……と思うのだった。それでも全員で固まって赤い魔法陣に乗り40層に到着。途端に矢を射かけられたが、ヴァルがウォーハンマーで弾く。


 すると追尾するかのように弾かれた矢が曲がって向かってきた。ヴァルはその矢を鷲掴みにして無理矢理止める。ここまでくれば力をセーブする必要も無い。



 「おお! まさか【光の裁き】をそのような方法で防ぐとは、初めて見ましたよ。いやいや長生きしてみるものですね。初めまして愚かなる人間種よ。私の名はアルノークス・ドゥーエスト・フェルセラン・リョース・アールヴと言います。覚えておかなくてもいいですよ。ここで死ぬのですから」


 「何とも傲慢な奴だ。醜さは人間種と変わらんな。己が野蛮だと理解しておらぬから<光の神>はお前を殺せと仰られたのだぞ。頭が悪過ぎるわ」


 「なに?」


 「私の名はローネレリア・エッサドシア・クムリスティアル・デック・アールヴ。名の通り、私は闇半神族デック・アールヴだ。初めて会った光半神族リョース・アールヴがここまで醜いとはな」


 「私の名はネルディリア・アトモスト・ヴァイヘルム・ドヴェルク。名の通り創半神族ドヴェルク。私も同じ思いだけど、ここまで醜いしそれを理解しないから<光の神>から抹殺指令が下る。そして今さら取り返しなどつかない」


 「神からの命が下っている以上。お前はここで殺す、もしくはダンジョンアコアを破壊する。<光の神>は新たな者を作るから、お前は要らないとさ。良かったね、役立たずなのが判明したよ?」


 「………」



 突然ダンジョンマスターが右腕を上げると、一体の魔物が召喚された。それはドラゴンだったものの、どこかキラキラ輝いている鱗を持つものだった。更に普通のドラゴンとは違い、体が細長く、鱗が鋭利に尖って外側に向いている。



 「お前達が同じ半神族であろうが、コレには勝てない。アーククラスのドラゴンである、<剣王竜>にはね。おかげで永きに渡って溜め込んだ魔力が空だが、まあいい。やりなおしは幾らでも出来る。……行け」


 「ガァァァーーーーッ!!!」



 鱗を逆立てたドラゴンこと<剣王竜>が突っ込んできたが即座にミクに止められる。何故ならミクは既に<暴食形態>だからだ。皆を守る為………ではなく、こんな美味しそうな物を前に<喰らう者>が食欲を抑える筈が無い。


 <暴食形態>で<剣王竜>の動きを止めたミクは、片っ端から貪り食っていく。触手の先が口になって齧りつき、元々の口には無理矢理触手で押し込んでいく。腕が噛み千切られ、脚が噛み千切られ、当然のように貪られていくドラゴン。唯の悲劇がそこにあった。


 エイジ達だけではなく、相手のダンジョンマスターまで呆然としており、気付いた時には「グッ!?」という声が聞こえてきた。



 「何を呆然としている、お前の敵は私達だろうが。ミクが目立つのは分かるが、私達を無視してもらっては困るな。そうそう、死んでいくお前に一つだけ教えておいてやろう。彼女、ミクはアンノウンだ。<光の神>がお前の抹殺命令を下したのもミクだ。最初からお前の敵はアンノウンだったんだよ」


 「そ、な……バ、な……ノ、ン」


 「さらばだ、マヌケ。【天命殺】」



 ローネの必殺スキルを受けたダンジョンマスターは数秒で死亡。そもそも神の神子でありながら、神の教えを守らなかったのだ。神に守られる筈もなく、酷くあっさりと死亡しその肉体は光と共に消えた。


 死んだ事により干渉できるようになった<光の神>が、死体さえ残らない様に滅ぼしたのだ。それを見届けて少々感慨に耽っていると、あっという間にアーククラスのドラゴンが喰われて死んだ。


 エイジ達は二重の意味で動けなかったが、<暴食形態>の恐ろしさは理解したらしい。自分達が恐怖して動けないドラゴンを踊り喰いしていた化け物である。


 戦闘中は終始、怖ろしいドラゴンの口から悲鳴しか聞こえなかったのだから。


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