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0220・ダンジョンマスターの殺意




 ダンジョンに進入し1層目。周りは草原で、そこかしこで魔物が魔物を倒している。まあ倒す側はゴブリンで、倒される側はネイルラビットらしい。そんな光景を見つつ、ミク達は手鏡を使って攻略していく。


 魔物の国には冒険者ギルドが無いので、当然ながら地図は売っていない。というより攻略しようという意識が無い。ゴブルクス王国の民にとって、ここは食い扶持が得られる場所でしかないのだ。だから攻略という考え方自体が存在していない。


 自分達で地図を描かねばならないが、それは本体がやっているので気楽なものである。本体も暇潰しでやっている程度なので、気分転換には丁度いい。そんな事を話しつつ、どんどんと進んで行く。


 最初の方は多くの者が移動していく方向に進めば赤い魔法陣があったのだが、7層目辺りから自力で見つけ出す必要が出てきた。いまだ草原ではあるものの、周りにはフォレストウルフなどが出現している。


 5層目で魔物が変わったので、このダンジョンはそういう風に作っているのだろう。時間を掛けて赤い魔法陣を探しつつ、着実に進んで行く。そうして10層目、ボス部屋の前に到着した。


 ダンジョンの中での戦闘はエイジ達に任せている。雑魚ばかりなのでミク達が倒してもいいのだが、エイジ達のスキルの練習台になってもらった。連携の練習も含んでいるが、基本的にはスキルの練習だ。


 今はボス部屋前で休みつつ、スキルの使い方をどう改良するか話し合っている最中だ。最初のボスなので強いボスは出てこない。なので話し合いの俎上そじょうにも上らなかった。


 十分に休憩してのボス戦、出てきたのはアーマーウルフ10頭だった。コイツは毛が強靭で、なかなか厄介な魔物だ。自然界ではレアな魔物なのだが、ダンジョンでは幾らでも出せるという事だろう。普通なら苦戦する数である。


 とはいえエイジが<集目の盾>を使って敵を集め、その横でシロウが【閃光フラッシュ】を使う。それだけで目が見えなくなったアーマーウルフは唯のザコに成り下がる。あとは1頭1頭確実に始末していくだけだ。


 余裕を持ってボスを倒し、11層へと移動していく一行。危な気なくどころか楽勝である。もちろん油断はしていないが、何処か弛緩した雰囲気のまま11層に転送された途端、矢が飛来した。


 素早くヴァルが掌で受け止め大事には到らなかったが、何かのスキルで飛ばしてきたのか、ヴァルの掌が貫通していた。そのうえ鏃には毒が塗ってある。素早くミクはヴァルに<紅の万能薬>を飲ませ、【高位治癒グレーターヒール】で治す。



 『すまない、主。それにしても転送されてすぐに攻撃を受けるとは思わなかった。明らかにおかしいし、やっている事は異常だぞ。間違いなくダンジョンマスターだろうが、アレは普通なら避けられん。やってくれる』


 「いやいや、それ以前に転送されてすぐの攻撃は反則でしょう! アレが許されるなら一方的に殺されるじゃないですか! 今までのダンジョンでも、あんな反則はされた事ありませんよ!?」


 「出来るのだから、されたのだ。どうやら向こうは一方的にこちらを攻撃出来るらしいな。初めてではあるが、狙われたのがヴァルの横に居たエイジで良かったぞ。他の者なら場合によっては殺されていたかもしれん」


 「次からは私とヴァルが前と後ろについてから、赤い魔法陣に乗った方がいいね。それとボスを倒す前には固まっておいた方がいい。そうしないと何処から攻撃されるか分からない。思っている以上に厄介な事をしてくれるよ」


 「転送されてすぐは明らかに反則としか言えませんからね。こっちは準備も何も整っていないのに一方的です。ここのダンジョンマスターは、今までで一番性格が悪いですよ。間違い無い」



 シロウが敢えて挑発する事を言ったものの、反応は特に無し。既に周りには居ないようだ。11層は森だったので、何処から狙われたかは分からない。それに西条董二も転移していた。少なくともダンジョンマスターはダンジョン内を自由に転移できる。


 それだけは確実なので、おそらくは逃げたのだろう。余計な情報を与えてやる必要は無いので【念話】で会話をしつつ、一行は森の地形の攻略に掛かる。こういう姑息な手を使ってくるダンジョンマスター相手には、手鏡が威力を発揮してくれるだろう。


 隠すような位置にあっても手鏡ならあっさり発見出来る為、そこまで苦労する事無く先へと進んで行く。途中で昼食を食べつつ進んで行き、遂に20層へと到達した。一行は再びボス部屋前で休憩と対策を話し合う。



 「性格の悪いダンジョンマスターですから必ず介入してくると思うんです。その場合どうなるかが読めません。20層ってどんなボスが用意出来るんだろう? 何となくハイクラスまでだと思うんだけど」


 「今まで20層でハイクラス以上のボスが出てきた事は無いね。だから最高でもハイクラスだろうけど、問題はハイクラスの何なのかという事だよ。場合によってはエイジ達でも苦戦するだろうね」


 「ハイオーガ……はそこまで苦労しないし、前に五体がボスで出てきた事あるしなぁ……。ハイクラスの魔物って言われても、今まで戦ってきたタイプじゃない気がする。いきなりアーマーウルフだったし」


 「次も動物系かなー? 狼じゃなかったら蛇とか? もしくは蛙とか。後は狐とか狸とか、それとも熊かなー? どれにしても四つ足系の魔物の可能性が高そう」


 「その覚悟でいようか。サエが言った辺りのを警戒して、二本足なら足を切れば済むからそこまで面倒は無いし。倒す際に注意して倒そう。最後の一体にするヤツだけ手足を落としておこうか」



 ミキの無慈悲な提案に皆も了承する。仮にダンジョンマスターが怒ったとしても、あんな不意打ちをしてくるのが悪いのだ。誰だって警戒するに決まっている。そして警戒する以上は万全の態勢を作るのは当然の事だ。


 ボス部屋に入り扉が閉じられると、現れたのはハイゴーレム10体だった。エイジはいつも通り盾を使いつつ、ミキとシェルとオーロがゴーレムの足を破壊して動きを悪くしていく。シロウ達はゴーレムへの牽制だ。


 流石にゴーレムの足を破壊する為の魔法と消費魔力は大きい。それならば牽制に徹し、破壊は武器に頼った方が無駄がない。そうして破壊していき、最後の一体は両手両足が破壊された。


 その状況で全員が固まり、最後の一体はヴァルがバルディッシュで叩き潰す。倒してすぐエイジ達の所へ戻ると、足下に魔法陣が出てきて転送される。21層に到着すると四方八方から矢が飛んできた。


 既に準備万端だったシロウとベルが、風魔法の上級である【竜巻トルネード】の魔法を使い吹き飛ばしていく。吹き飛ばされなかった矢はミクとヴァルが弾き、結果として怪我を負う事は無かった。


 一息吐いたものの、異常なほど敵視して殺しに来るダンジョンマスターにゲンナリするエイジ達。意識していなくとも愚痴が零れ出る。



 「流石に勘弁してくれって思うわ。どれだけ俺達を殺したいんだよ。いい加減にしろって思うし、気持ち悪い。流石に吐き気がしてくる」


 「とことんまでにオレ達が気に入らないんだろうな。あまりにも異常すぎて関わりたくないレベルの気持ち悪さだ。粘着質でストーカーのような性格のヤツだろうさ、間違いない」


 「幾らなんでも必死過ぎると思うー。殺したいほど人間種を憎んでるのかもしれないけどさ、やり方が陰湿で気持ち悪い。まともな奴じゃないのは間違い無いよー」



 あそこまで四方八方から矢が飛んでくれば、そう思っても当然であろう。そんな愚痴を言いつつ、一行は直ぐに見つかった青い魔法陣で王都に帰るのだった。


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