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0218・王都ルークス到着




 次の日。特に襲われる事も無かった一行は先へと進んで行く。街道ではチラホラと馬車を見かけ、ゴブリンが商人をしているのが分かる。良いか悪いかは別にして、もう違う国なんだなと気を引き締めるエイジ達。


 魔物などを倒しながら進み、アイ村へと到着。愛想は良くないが、これは人間種の村でも変わらない。宿にとって食事をしたら、いつも通りにシてから寝る。分体を停止して、その日は終わった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 アイ村から二日、キーリ町に到着した。町の門では割と質問攻めで時間が掛かったが仕方ない。人間種はここまで滅多に来ないそうなので、不審に思われるのは止むを得ないだろう。それでも町に入って宿へ行く。


 部屋をとってから酒場へ行き、食事を頼んで待っているとオーガらしき男が喧嘩を売ってきた。人間種が気に入らないのだろうが、やっている事はチンピラと変わらない。



 「おいおいおいおい、何でオレたちの町に人間種が居るんだぁ? それも一番しょっぺえ人間じゃねえか!? てめえらみてぇな根性無しのよわっちいのが酒飲んでんじゃねえよ! とっとと失せろ!」


 「なにあれ? そのしょっぱい人間の中でも下っ端の、チンピラと同じ事してるって……自覚してないんだろうね。顔を見ても間抜けそうだし」


 「なんだと、てめぇ! 人間の分際で調子に乗ってんじゃ……ねえぞ!!!」



 オーガが右拳で殴ってきたが、ミクは右手で止めて鷲掴みにする。そのまま力を込めていくとオーガが悲鳴を上げ始めた。それでも放してやらずに更に力を込めようとすると、静かに飲んでいた別のオーガが声を掛けてきた。



 「そこのバカが骨を砕かれようが興味は無いが、お嬢ちゃんはなかなか強いようだ。オレと酒で勝負しないか? そっちが勝ったらオレが持っている全財産を持っていって良いぜ?」



 ミクはその勝負を受け、酒を飲んでいく。ジョッキに入れた酒を飲んでいくも、ミクの顔色は一切変わらない。それどころか飲むペースすら同じであり、徐々にオーガは追い込まれていく。周りのゴブリンなどは煽っているが、オーガは飲むのにかなり苦労している。


 そして、ついに飲めなくなったオーガは床に倒れ、鼾を掻き始めた。文句無くミクの勝ちである。ミクは早速とばかりにオーガの懐を漁るも、多くの金を持ってはおらず酒場の支払いに全て消えた。むしろ足りなかったくらいである。


 残りは倒れて寝ているオーガのツケになったが、微妙に納得がいかないミクであった。それでも表に出す事なく宿の部屋に戻り、ローネとネルを撃沈したら百足の姿で外に出る。目指すはスラムだ。


 魔物の国だろうと何だろうと、チンピラは居るし裏組織もある。スラムに着いたミクは、片っ端から犯罪者を喰らっていき、先ほどの鬱憤を晴らす。ついでに情報収集もしているので、食欲だけで動いている訳では無い。


 ひたすら喰らいつつ情報を集め、終わったら宿の部屋へと戻った。少し前にも食べたが、やはり肉を喰うのは良い。そう思いながらベッドの上で分体を停止した。ヴァルはそれを見てホッとしつつ、自身も肉体を停止するのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 それから七日後。今は王都ルークスに向かって歩いている。村はともかく町に着けば必ず喧嘩を売られ、毎回ミクが叩き潰すという構図が出来ている。とはいえ、思っているより人間種と変わらないというのが全員の一致した意見だ。


 筋力や足の速さなどは違うものの、性根としては変わらない。強いて言えば、人間種より少し脳筋なぐらいか。これは彼らの身体能力の高さの所為だ。身体能力が高い所為で、どうしても力で解決しようとしてしまう。


 ただ、だからといって頭が悪い訳では無い。知識を持ち知恵を使える者が居れば、人間種と何も変わらないとさえ言える。むしろ身体能力の高い人間種となるだろう。唯でさえ彼らは位階が上がると強くなるのだから。


 そんな厄介な未来を頭に描きつつ、一行は王都を目指して歩く。流石に王都近くという事もあり、同じ様に歩いて移動している者も多い。馬車も通るが、御者をしているのがハイオーガだったりした馬車も見た。


 もちろんエイジ達でも戦えるが、あんなのが市井に当たり前に居るのにも関わらず、何故帝国との戦争に勝てないのか疑問である。ミク達はおそらく手加減をしているか、国土を欲していないのだろうと思っていた。


 それはゴブルクス王国が磐石ではないという事だ。ゴブリンの間でもギクシャクした部分があり、人間種の国を攻めろと言っている者もいれば、戦争なんぞ御免だと言っている者も居る。生活が安定すると、態々無駄な事はしなくなるようだ。


 天然の魔物は食べる為に襲うが、人間種のように農業が出来るなら危険な狩りはしなくなる。命の危険を冒さずとも食べていけるなら、そちらを選択するのは理性ある者として当然の事だろう。



 「当然ですよね。幾ら魔物だっていっても生きている訳で、生きる為に人間種を襲っている訳ですもんね。襲わなくても生きていけるなら、そっちを選ぶ者が多いのは人間種と変わりませんよ、本当」


 「アイツら普通に理性あるし、バカみたいな人間種よりまともなのも居たぜ? 何というか、アレ見てると悲しくなってくる部分が無い訳じゃねえな。人間って何なんだろうって思うわ。まともなゴブリン以下がいっぱい居るからさ」


 「言いたい事も分かるが、クソみたいなヤツも居たぞ? 良い部分だけ見るのは阿呆のやる事だから止めておけ。人間種も魔物も理性があるならば変わらんという事だろう。それでも殺して喰らう相手に変わりはない」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「食べるなんて今さら。連中だって人間種を殺して喰う。そこに何も違いはない。私達が何もしなくても、人間喰いたさに襲ってくる可能性も有る。決して安全でもなければ、連中が善という訳でもない」


 「仮に理性があろうが喰らう事に変わりはないしね。連中には滅ぼされるような相手がいない。私でいう神のような連中がさ、居ないんだよ。だから最後には理性を失って争い、大敗を喫するだろうね。欲を止める絶対的な者がいないんだし」


 『そもそも主もそうだが、他者を喰らうとは根源的な欲求だ。余程の事がなければ耐えられんさ。必ず欲に忠実になる。そこは人間種だって変わらんのだしな。そして喰らう事に失敗し国が傾く。人間種もよくやっている事だ』


 「まあ……そうですね。変わらないと言えば変わらないのかー。人間だって元々動物なんだし、魔物だって同じ。そう考えると、どっちもクソだというのが分かりますね。もちろん、まともな人も居ますけど」


 「それが一体どれだけなんだって考えたらガックリくるよな。仕方ないんだけど、俺達を呼んだ国が既にアレだったしさ、オレ達の故郷だって褒められたもんじゃない。余計に空しくなるけど……」



 雑談をしながら歩いていたが、ようやく王都ルークスが見えてきた。なかなか大きな都市であり、石壁の高さは10メートル程もある。そしてその手前は堀で7メートルは幅がある。


 そんな王都に近付くとアレやコレやと質問を受け、それに何度も答えてやっと解放された。時間が掛かるのは仕方ないが、それにしても毎回質問攻めである。流石に鬱陶しくなっているミク達。


 面倒だという気分をさっさと切り替え、王都で泊まれる宿を探して歩く。ミク達が人間種と見るや足下を見て来たので断り、色々と探して歩く。その結果、スラム近くの宿をとる事が出来た。明らかに怪しかったが、洗脳すれば済む。


 これ以上探して歩くのが面倒だったミクはそう決めた。それに賛成した一同は、三人部屋を三つとって近くの酒場に行く。宿探しで時間を喰ったので、既に夕日が沈みかけているのだ。


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