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0217・ゴブルクス王国




 帝国側の砦を越えて中立地帯へと入った。そこを歩きつつ、ミクは国境の町に居た者から手に入れた情報を話していく。



 「ゴブルクス王国が人間種の侵攻を止めているって感じらしいね、こっちの国の感覚では。帝国では魔物の国が侵攻してくるって話してたけど、実際には帝国もゴブルクス王国を攻めてるんだってさ。都合よく言ってないだけ」


 「まあ、そうだろうな。西は人間種の国、東は魔物の国なのだ。どっちを攻めると言われれば、魔物の国をとるだろう。世の中とはそんなものだし、何より魔物の国を言い訳に版図を広げたのが帝国だしな」


 「そういえば帝国ってそういう国だったんでしたっけ。なら都合のいい事しか言わなくても普通の事か。というか何処の国だって似たようなものなんだから、今に始まった事じゃないなー」


 「一つ大きな問題があってね。話を聞いた四人の一人、ゴブリンの爺さんだったんだけど。コイツ、ダンジョンマスターと知り合いだった。だから聞いたんだけど、次のダンジョンマスターの種族は<光半神族リョース・アールヴ>」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「やはりか。我が<闇半神族デック・アールヴ>でなかっただけ、マシと思わねばならんな。ダンジョンマスターに選ばれる者が気に入らねば、当然神々は送り込まれる筈だ、自らの神子をな。……ん? 生きている?」


 「そう。ソイツはどうも微妙なラインみたい。正義を信奉し過ぎておかしな事になってるんだってさ。その話を聞いた後に本体の所に<光の神>が来てさ、そのあたりを説明してくれたんだよ。魔物を改心させるまでは良かったと」


 「何だか、嫌な予感がしますね。特に正義云々とかいうのが、そこはかとなく嫌な予感を感じさせます。正義に狂った悪党とか、よく創作物の題材になるので……」


 「ああ、行き過ぎた正義は悪と変わらないってヤツな。自分の正義が全てで、それを他人に押し付けるあまりに揉め事になるんだよな。で最後には主人公達に倒される訳だ。殺されるまで止めないから」


 「正にそういう奴みたいだね。その<光半神族リョース・アールヴ>の御蔭で知恵を持ち、文字を読み書き出来るようになり、魔物が賢くなったのは間違いないみたい。でもねー……」


 「どうせ戦争は駄目だとか、争いは駄目だとか言い始めたのだろう。もしくは人間種を殲滅しろと言い出したか? 概ねその辺りで間違っていない筈だ。長く生きた者ほど、クズである部分を見てきているからな」


 「そいつも人間種は全滅させろって言ってるみたいだね。魔物を賢くしたのは自分だから、思い入れは魔物の方が強いんだろう。だから人間種を殺せとなったらしい。ゴブリン達は現実問題として難しいと言っているから平行線なんだってさ」


 「まあ、そうなるのが当然ですよね。人間種が憎いとか、国土を広げたいというのはあるでしょうけど、じゃあ現実に出来るかと言えば………。今まで攻めたけど上手くいっていない訳ですし」


 「という事で、次の標的は<光半神族リョース・アールヴ>ね。<光の神>は例外は無いって言ってたよ。自分の神子であっても、道を間違ったならば殺せ。私にそうハッキリ言ったから」



 その場の全員が少し沈黙したが、その後はいつも通りになった。ミクとしては必要ならば殺すし喰らうので、特に思うところは無い。今回は<光半神族リョース・アールヴ>を喰うチャンスだと思っている。


 やがてゴブルクス王国の砦についたが、石壁の重厚な砦を築いている。帝国の方は簡素な木の砦だったのに随分な違いだ。向こうは壊される事前提で、こちらは壊されない事が第一かと思われる。


 冒険者の登録証を見せ、更に色々な質問に答えた後で許可が出た。とはいえ普通の検査と言える程度のものしかされていない。人間種に対してもっと嫌がらせ的に色々されると思っていたのに、随分拍子抜けした一行。


 しかし騒がずさっさと通り抜けていく。面倒な揉め事など要らないので歩き出し、東へと進んで行くのだった。


 国境から東にオット町、アイ村、イエ村、キーリ町、サイ村、エレソ村、バソイ町、キヨル村、アセト村、オイグ村、王都ルークスとあり、この近くにダンジョンがある。派遣されていた奴等は中央の優秀な連中だったようで色々知っていた。


 ゴブルクス王国の東にはアローウェント王国という国がある。この国に居るのが<一ツ目>らしい。本来はゴブリン系しか住んでいないのがゴブルクス王国らしく、アローウェントは雑多な種族構成の国なんだそうだ。


 これはゴブリン系がそれなりに賢かったのと、ゴブリン系は繁殖力が高い事が上げられるらしい。それで人間種への最前線を任せているようだ。ちなみにゴブリン系にはオーガも含まれる。


 それと、オークは理性を獲得出来なかったようで、魔物の国でも駆除対象となっているらしい。奴等は本当にどこでも変わらないらしく、クレイジーモンキーと並ぶ二大駆除対象となっている。ある意味で凄い奴等だ。


 何処までも性欲で動き続ける連中なんて、アイツらくらいしか居ないだろう。本能に忠実過ぎて、魔物からも畜生扱いされている。ビックリ珍生物といったところだろうか。


 そのまま歩き続けていると、突然ミクが右腕を肉塊にし、中からネルが出てきた。どうやら腕輪作りは終わったらしい。本体から肉を通して送られてきたので、全員が身に着けて確かめる。



 「特に問題なく着けられました……けど、これ何で出来てるんです? 妙に白いですし、それでいて光沢がありませんが……」


 「それはドラゴンの牙と骨を混ぜて練りこんだ粘土。御蔭で素材のグレードは相当高くなった。薄く作って乾燥させ、隠蔽陣を組み込んで更に上から練った物を付ける。最後に焼けば完成。分類は陶器になるのかな?」


 「磁器じゃないでしょうから陶器ですね。その割には指で弾くと金属みたいな音がしますけど、それが綺麗な音で何だか面白いですね。それにしても、コレってどれくらい効くんですか?」


 「それは体の表面に出て来ている魔力や闘気を体の中に素早く戻す効果がある。基本的には体表の魔力や闘気を感知しているのが殆ど。体の深くにある魔力や闘気を感じられる者なんて僅かしか居ない」


 「そこまでいけば下手に隠蔽せん方がいい。そいつらに対してまで隠蔽しようとすれば腕輪でさえ足りんだろう。隠蔽用の鎧を作らねばならんかもしれん。そんな物は無駄でしかないし、バレたならばそいつは強いと分かるからな。色々な意味で都合がいい」


 「少なくともコレを着けていれば、大した事がない奴等は騙せるんだから、十分じゃないかなー」



 全員が着けているものの、よくよく考えればミクとヴァルには必要の無い物である。とはいえ、全員が着けているのに自分だけ着けていないというのも変なので着けておく。そのまま歩き続けオット町に辿り着いた。


 門番に冒険者の登録証を出すと普通に通れたが、ここまでであり、これから先は冒険者の登録証は通用しないとの事。住民以外が町に入る際に払う税だが、ゴブルクス王国にそういった物は無いそうだ。


 税が要らないなら確かに登録証を態々出す必要も無い。一行は御礼を言いつつ、オット町に入っていき宿へ。三人部屋を三つとり、さっさと酒場に行って食事にしようと移動する。夕食を注文して席に座ると、意外にもすぐに食事が出てきた。


 魔物の国と言えど、食事内容が然程変わる訳ではないようだ。ただ、人間種の国に比べれば肉が多めというくらいだろうか。そこまでどうこうという味付けでもなかった。


 十分に食事をとった一行は宿へと戻る。尾行者も居ない為、ローネとネルを満足させたら分体をさっさと停止した。


 後はいつも通りの最低限の監視だ。どうやら、いきなり襲われるとかは無いらしい。残念。


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