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0213・ニューデ村に到着




 「別に喋りにくい事でも何でもないんですけど、本能が認めた番でないと牛人族は生まれにくいそうなんです。何故かどうしても相手の種族が産まれてしまうらしく、牛人族が産まれず悲しい思いをした方も多かったと聞きました」


 「それだけじゃなくて、本能が認めた番でないと満足し辛いそうなんです。それが牛人族が生まれない理由なんじゃないかと……。産み分けなんて出来ませんけど、そう言われているらしいですし気持ちは分かります」


 「満足出来る相手と子作りすれば、そりゃあ良い子供が生まれるさ……多分。私も子供を産んだ事は無いけど、せっかくなら自分の愛する旦那様の子供が欲しいからね。そういう思いもよく分かるし、やっぱり不満が子供に影響するんじゃないかねえ」


 「どうなのだろうな? 私は一度も満足できんかったが、男2の女2だったぞ。そもそも闇半神族デック・アールヴからは黒耳族ダークエルフしか生まれんからな、何とも言えん。相手がどんな種族でも、それは変わらんのだ」


 「私も同じ。創半神族ドヴェルクはどんなに頑張っても山髭族ドワーフしか産めない。まあ、別の種族を産みたいとも思った事は無いけど」



 一行は適当な会話をしつつ、暢気のんきに歩いて移動していく。特に気を付けなければいけない事も無く、後ろから追い駆けられる事も無い。最近はミクもゆっくり移動するのに慣れたので、前みたいに遅い移動がストレスになってはいない。


 そのままミク達は、帝都を離れるように移動していくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから四日経ち、今日はジーム町を東に出発する。帝都への分かれ道まで戻ってきたが、今度は東の国への移動だ。なかなか大変だが、一日一日ゆっくりと移動していく。馬車を買ってもこの大所帯じゃ大変なので、結果としては徒歩しか選択できない。


 ジーム町から東へと歩いて行くが、何故か後ろから追い駆けられない。もしかしたら犯人探しを真面目にしていない可能性がある。


 これは皆と話していた事なのだが、皇帝は脅されていたので、たとえダンジョンマスターが死んだとしても犯人探しはしないのではないか。ヴァイセリオン侯爵家の離れに居た、よく分からないヤツが死んだ。これで片付けて終わりにする可能性がある訳だ。


 唯でさえ自分の息子を殺そうとした奴だし自分も脅されていたのだ、そんなヤツを殺した相手なら御礼さえ言いそうな気がする。元冒険者である事も加味すれば、可能性として無いとは言い切れない。


 まあ、そもそも最も可能性が高いのは、まだ何も知らないという事だ。ヴァイセリオン侯爵家は皇后の実家でもあり、初代の血を継いでいる裏の皇族でもある。そういう意味でも伝えない気がするのだ。



 「案外、別の奴をダンジョンマスターとしてデッチあげていたりして。そうすればヴァイセリオン侯爵家が儲かりそうじゃないですか。まあバレたら家ごと潰されるでしょうけどね。皇族の家が二つなんて無理でしょうし」


 「無理だな。絶対に揉める元だ。ダンジョンマスターが居る間は良かったんだろうが、居なくなったら骨肉の争いとなるだろう。特にダンジョンマスターを匿っていた家でもある。族滅しても驚かんよ」


 「「「「「「「族滅………」」」」」」」


 「何故驚く? 当たり前の事。権力者は権力を奪われる事を何よりも恐れる。奪われない為にはどうしたらいいか? 答えは簡単、奪う奴は皆殺しにすればいい。それなら奪われずに済む。だから王は過酷な仕事であり、常に誰かを疑い続ける」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「あの国の皇帝が本当に冒険者気質であれば、皇太子に丸ごと放り投げて逃げる可能性も無い訳ではない。皇太子はヴァイセリオン侯爵家の子でもある。後は全部そっちにくれてやると言って、逃亡する事も否定できん」


 「気持ちとしてはそっちの方が分かります。権力者の椅子なんて蹴り飛ばして好き勝手する。そういう思いの方が冒険者らしいと思いますしね。現実には無いでしょうし、やったらバカだとは思いますけど」


 「まあな」



 暇なミク達は下らない会話をしつつも、順調に歩いて進む。まずはオーロの故郷だが、そこまでも時間は結構掛かるのだ。一日で一つの村や町。ゆっくりと一行は進んで行く。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから八日。現在ニューデ村に移動している最中だ。ここに来るまでに一度、盗賊がいたのでミクが喰らっている。そこまで人数は多くなかったが、肉が喰えた事で上機嫌なミク。それとは違い不機嫌なローネ。


 何があったかと言うと、盗賊の中に黒耳族ダークエルフが居たのだ。仕方がないし、この星の黒耳族ダークエルフは血が繋がっていない。とはいえ、ローネにとっては納得できる事ではないようだ。随分と怒っている。



 「愚か者どもにほだされたのか、自分から堕ちたのかは知らんが馬鹿めが。何ゆえ下らぬ阿呆どもの真似事などするのだ。半神族の子孫たる自覚がないとは……かつてもあったが、私の手で始末するべきだった」


 「ま、それは忘れようか。覚えていても意味無いしさ。それより、この道の先にニューデ村っていうオーロの故郷があるんでしょ? 人間は歓迎されないみたいだけど」


 「ええ。とはいえ、故郷の者達も石を投げて追い返したりなどはしません。実際に人間の商人と商売をしたりしていますので。ただ、あまり関わろうとはしないだけです。小さな村でもありますから……」


 「基本的に村は閉鎖的。でも、それは仕方ない。盗賊などから村を守らなきゃいけないし、そうなると村人以外を安易に信用できない。それは何処でも変わらない事」


 「そう言っていただけると助かります」



 その後は適当な雑談や出てきた魔物を倒しつつ、ニューデ村の近くまで来た。いざ村に近付くと、何故か殺気立った村人が農具を手に持ってワラワラ出てくる。戸惑うオーロは慌てて村人に走り寄って話しかけた。



 「待って、待って。皆、私よ! 二年前に村を出たオーロ! 東に行くのに仲間と故郷に寄っただけ。それより皆が殺気立って、いったいどうしたの!?」


 「何だオーロか、脅かすなよ。それよりもそっちの者達は大丈夫なんだろうな? 最近盗賊が出て村を攻撃しやがるんだ。今までは何も盗られてねえけど、段々数が増えててな。お前さんらは………まあ、違うだろ。オーロが居るしな」


 「当たり前でしょ! 何で村にそんな人達を連れてくるのよ。だいたい、それって私をバカにしてるじゃないの!!」


 「おお、怖! それよりもそっちの人達、宿をとるなら早めにしなよ。今日は商人が来るんで部屋をとられっちまうぞ?」


 「まあ、駄目なら村長の家にお金払って泊めさせてもらうからいいけど。それより商人が来るって事は、何かの取引でもするの?」


 「ん? ああ、そりゃそうだろ。村で作ってる野菜売って、代わりに運ばれてきた干し肉とか買うんだよ。そうしなきゃ食っていけねえしな」


 「じゃあ、余った物があるなら私が買うよ。更に東に行くし、食料があって悪い事なんてないしね。ちなみに肉もあるよ。冷凍の肉だけど」



 ミクのアイテムバッグの中には、凍らせた魔物の肉などがそれなりに入っている。ちなみに調味料なども入っているので何処でも料理は可能だ。なので歩いて移動している時の方が、美味しい物を食べていたりする。


 それもあるからなのか、存外に徒歩での移動が苦ではなくなっているエイジ達だった。もちろん体力が十分についたのも理由にあるのだろうが。


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