0203・ダンジョン20層でギブアップ
ボスが出てくるも、エイジの盾に無理矢理注目させられてしまい突撃してくる。エイジはオーガ七体に集られても冷静に上手く捌き、防御を中心にして凌いでいく。その横からミキとシェルが足を攻撃して動けなくしていき、戦える相手の数を減らす。
七体全てを動けなくすれば最早勝利は確定であり、後は処理していくだけだ。碌に動けないオーガの首を切り、頭を潰し、心臓を貫く。結局は大した活躍も出来ずに殺されていくオーガ。エイジ達にとっては大した魔物ではないので仕方ない。
ここまでゆっくりと進んで来ているが、これは手鏡でダンジョンコアがないか探している為である。それなりに調べながら移動しているので遅いのだが、前のダンジョンの事もあるので一応はチェックして進む。
見落としていた所為で余計な時間が掛かったりすると困るので、どうしても手鏡がある以上は調べてしまう。手鏡が無ければ気にもならないのだろうが……。
11層に転移させられると、そこは平原だった。地形は優しいが魔物が厳しいという、ちょっと変わったダンジョンだとエイジが言う。
「厳しいならとことん厳しくすればいい訳で、地形が簡単で魔物が厳しいというのはよく分かりません。無駄に魔力を消費するような気がしますし、地形が厳しくて魔物が少ない方が魔力の収支としてプラスでしょう。おそらく」
「まあ地形で殺すとなれば、魔力を使って魔物を出す必要も無いもんなー。もしくは罠とかさ。今のところは大した罠も無いみたいだし、地図にも描かれていない。別に警戒していない訳じゃ無いけど、このダンジョンのコンセプトが分からないんだよな。だから何に警戒していいか困る」
「確かにお前達の話を聞いていると、そう思えてくるな。厳しくするなら厳しくすればいい、魔力を稼ぎたいなら稼げばいい。なのに地形は簡単で魔物が多い。魔物を出すにも魔力が要るのだから、わざわざ無駄使いをしているとすら言える」
「侵入者に魔物を持ち帰らせる為? でも魔力がないとダンジョンは運営出来ない筈。損ばかりしているといずれ破綻する。ならば、このダンジョンはしないようになっているという事。……私達はそもそも魔力をためる方法を知らない」
「確かにそうだね。それよりも、魔物が来ているから真面目に戦おうか? この層からランニングカウとゴブリンが共闘してるしさ。思っているより厄介だよ、アレ」
『主の言う通りだな。ランニングカウの上にゴブリンが乗って、槍で攻撃してくるようだ。あろう事か錆びた槍を使っているぞ? 碌でもないが、出来るだけ傷を受けずに突破せねばな』
ランニングカウが突撃してきても、エイジが盾で防ぐ事は可能だ。ゴブリンが乗っているので重いが、だからと言って両手で十分に防げる威力でしかない。むしろゴブリンが盾にぶつかって転げ落ちている。
後はシェルがゴブリンを突き殺し、ミキがランニングカウの首を切れば終わる。誘き出すのはサエが矢を射るか、魔法を使えば簡単だ。結局、この層の魔物もエイジ達にとっては数が多いだけとなる。
どんどんと進んでいき、15層のボス部屋前。今度はハイオーク七体と書いてある。急にハイクラス、しかも七体だ。あきらかに配置としておかしい。とはいえ、神がここのダンジョンに行けと言った以上はダンジョンマスターが居る筈だ。
未だにこの適当だと思える配置が分からない。更には七体にやたら拘っている感じもする。そこまで拘る必要も無い筈なのだが、七という数字に何かあるんだろうか? いまいちよく分からない。
考えても分からない事を考えてもしょうがないと纏め、休息を終えたらボス部屋に入る。出てきたハイオークに対し、盾を突き出して魔力を篭めるエイジ。効果は十分にあり、女性よりも盾に突撃するハイオーク。
女性への性欲以上に注目されるのは凄いが、ハイクラス七体を頑張ってエイジは凌いでいる。その間に素早くハイオークを仕留めていく仲間達。魔力を温存するという理由から、極力魔法を使わずに戦っている。これも訓練の一環だ。
盾に注目させられ、最後まで数を生かす事無く倒されたハイオーク。仮に盾を使っていなくても、女性が居る以上は同じ結果だったであろうが……。
16層に転移させられたものの、再びの平原だ。ただし今度はフォレストベアなどの熊が主体で、コボルトも混ざっている。熊を相手にしているとコボルトが強襲してくるのでウザい配置にしてある。
どちらも嗅覚が鋭いので、人間種の臭いを嗅ぐと襲ってくるのだ。それが連続になると非常に面倒臭い。特にこの辺りの層から冒険者が少なく、その所為で魔物がかなり多く居てなかなか進めないでいる。
連続的に襲われると休息できない為、体力の消耗が激しく疲れてしまう。特にミキとシェルへの負担が激しい。シロウはそこそこ役に立つが、アタッカーはミキとシェルなので、魔力を使わないと負担は増える一方だ。
流石にマズいと思ったのか、シロウもサエもベルも魔法を使い始め、その御蔭で一息吐いたようだ。魔物の多さで加速度的に大変になっていくダンジョンらしい。今ようやくその悪辣さを実感したエイジ達だった。
「意味が分からなかったけど、やっぱりここのダンジョンマスターも性格が悪いな。良い奴なんていないけどさ、それにしても魔物の数が多くて大変だ。俺は何とかなってるけど、アタッカーが苦しいのはキツいな」
「まさか私もシェルも、ここまで体力を使うとは思わなかったよ。特に踏み込むタイミングを計っている最中に邪魔してくるコボルトがウザい。弱いのにすっごく邪魔で、いちいち腹立たしいの」
「本当にね。あいつら無駄に群れていたりするから、余計に性質が悪い。汚いから爪で傷つけられるとさ、どんな病気になるか分からないから神経使うんだよ。ミキの言う通り、弱いから腹が立ってしょうがない」
そんな愚痴を溢しながらも何とか20層のボス部屋前。この層のボスはハイレッドベア七体であり、初めての【スキル】持ちボスである。【火魔法】の【火球】を使ってくるのと、火を吐いてくる熊だ。
吐いてくる火はそこまでの距離は出ないらしく、【火魔法】に注意すれば良いらしい。何故かこのボスには攻略法というか、戦闘のヒントが載っている。不思議ではあるが、後続の為に書いたのだろうか?。
十分に休息をし、気合いを入れてボス部屋へと入る。出てきたハイレッドベアに対し盾を使うも、早速【火球】を連発してきたハイレッドベア七体。流石に予想していなかったのか、必死になって魔法を防ぐエイジ。
幾つかは受けてしまい火傷を負うも、即座に回復していく事で戦闘状態を維持できた。普通なら重度の火傷でまともには戦えない。まともに戦うなら【土魔法】で防ぐか、【風魔法】で逸らすべきである。
エイジが盾で爪の攻撃を防ぐも、その距離なら問題無いと火のブレスを吐いてくる。今さらながらにエイジ達は気付く。今までのボスに比べて物凄く強いと。
慌てて魔法を完全に解禁して攻撃していく。【魔力魔法】の【魔力槍】や、【風魔法】の【疾風強撃】。シロウは【閃光】や【爆音衝撃】で相手を止める。
これが功を奏し、素早く倒す事が出来た。特にシロウの魔法はどちらも効いた為、戦闘続行不能まで追い込めた。耳が潰れて目も見えないとなれば、流石に倒すのは難しくない。
ただし、エイジ達はここでギブアップだ。流石に治ったとはいえ火傷もしているし、何より疲労困憊であった。




