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0197・面倒な出会い




 ゼノイセン王国の王都を出発してから一ヶ月、ようやくドラード帝国に辿り着いた。現在はハリベット王国とドラード帝国の国境にある砦に居る。


 兵士に冒険者の登録証を見せ、通行の許可が下りた。時間が掛かったが仕方ないなと思いつつ、ドラード帝国に足を踏み入れる。ここからは真っ直ぐ東にセンマ町、ドウ村、バリ村、カーム町とあるそうだ。先ずはそこまで行く。


 足早に移動していき、国境に一番近い町であるセンマ町まで進む。既に旅にも慣れたもので、エイジ達も軽快に歩いている。流石に体力もついてきたのか、それとも長距離を歩くのに慣れたのか、もしくはその両方だろう。



 「それにしてもハリベット王国って何も無かったなー。ビックリするほど何も無いし、ただ移動してただけだぜ? ダンジョンも無けりゃ召喚陣も無い。まあ、召喚陣は無い方が良いんだけどさ。それにしても、あの国は何も無さすぎじゃないか?」


 「まあ、見る所も無かったし、特産品もワインとかチーズとか肉だった。そのうえ美味しいかと言われると……。酒は分からないけど、チーズと肉は普通としか言えない。多い事が特産だと言われれば、こういう時代にはそうなんだろうな」


 「仕方ないとは思うけど、普通は特産と言われれば美味しいと思うのが普通だよ? なのに他の国で食べた物と然して変わらないし……。特産だから多いって言われても、それって沢山作ってるだけじゃない」


 「本当だよねー。幾らなんでも特産詐欺だって言いたくなったよ。沢山作るのは大変かもしれないけどさー、特産って言葉を間違えて使ってるよね、絶対。ああいうのは詐欺一歩手前だよー」


 「そこまで言うほどか? まあ、確かに特産の味かと言われれば努力が足りんとは思うが、あんな物と言えばあんな物だろう。お前達の星では違うのかもしれんが、特産と言っても余程の物でなければな、あんな感じだぞ?」


 「うん、ローネの言う通り。貴女達の星では違うだけで、私達の元の星でもあんな物。そもそも沢山作れるという事を甘く見すぎ。土だったり、水だったり、気候だったりが合わないと量産なんて出来ない。それは普通に特産」


 「あー……成る程。俺達の元の星みたいに、どこでも当たり前に栽培出来るって訳じゃないんですね。まあ、本当にどこでも栽培出来る訳じゃないですけど。チーズや肉は確かに大変かもしれませんが、飼料が適当な草っていうのも……」


 「私達の故郷の星では、肉が美味しくなったり牛乳の出が良くなる飼料を配合して食べさせているんですよ。それも、それぞれの酪農家さんで配合が異なるとかもあるそうで……そういうのを聞いて育った身としては、何とも言えないんです」


 「………牛って、思っているより育てるの大変? 私は適当にダンジョンにでも行って捕まえたり、搾ってくればいいと思ってた」


 「流石にそれはどうかと思うが、味の事を考えれば然程変わらんのか? 適当に育てているのと、ダンジョンの牛系魔物。………何だろうな、変わらん気がしてきた。逆に言えばだが、そこまでエイジ達の星の牛とは味が違うという事か?」


 「いやー、どうなんでしょう? もう召喚されてから二ヶ月以上経ってますし、牛肉の味なんて覚えてませんよ。だいたい、味なんて三日ぐらいで忘れてると思います。食べなきゃすぐ忘れますし、この星の肉の味で上書きされますし」


 「それで気が付いたけどさ、そもそもこの星の肉ってそれなりに美味しいよな? 昔の牛肉なんてガシガシに硬い肉で、まともには食えなかったって聞いた事あるけど、この星の肉って普通に柔らかいと思う」


 「そういえば、そうだね。普通に柔らかいし、普通に美味しいよー。A5ランクとは言わないまでも、それに近い味は普通にするしね。もしかして魔物の方が肉質が良いのかな……?」


 「そうかもしれな……うん? 何か前方に焦ってる精神がある?」



 一行の前方は少し道が曲がっていて、更に林がある事で見えなくなっている。その向こうから焦っている精神が幾つか感じられるとミキが言い出した。実はミクもヴァルもローネも気付いている。だが、敢えて言わなかったのだ。



 「面倒臭いから黙ってたんだけど、ミキが気付いちゃったかぁ。どうも賊か何かに襲われてるようなんだよね。正直に言って関わりたくないからさ、無視しない? 何だか嫌な予感がするんだよ」


 「貴族か王族か。滅多にある事ではないが、無いとは言い切れん。助けてやっても当たり前という顔をし、あまつさえタダで護衛しろと言ってくる。いや、タダで護衛して当たり前、下賤な者は泣いて喜ぶとでも思っているのだ。あのゴミどもは」


 「「「「「「………」」」」」」


 「それでも一応見に行きましょうか。何と言うか、死なれたら死なれたで後味悪いですし。………いや、拍手喝采すると言われても、俺達は後味悪いですから!」


 「そう、アレ? 周りに居る連中が変わった? 周りに居た連中が何人か死んだ後、精神が変わったんだけど、どういう事? ……何かおかしい」


 「ああ、それね。多分だけど馬車が真ん中にあって、護衛の一部が盗賊か何かとグルだったんだと思うよ? 真ん中の方で固まってるのが何人か居るしさ。まだ盗賊とかには連れて行かれてないけど、そろそろマズいかもね。で、どうするの?」



 そうミクが言うと、エイジ達は走り出してしまった。顔を見合わせて仕方ないと溜息を吐いたミク達は、エイジ達を追い駆けて走って行く。人としては良いのだろうが、いずれ必ず足を掬われるだろうなと思いながら……。


 襲撃現場に行くと、そこでは何人もの兵士が殺されていて、思わず「勿体ない」と思うミク。その中で馬車を襲っている賊どもを殺していくエイジ達。中に居る貴族か何かを殺そうとしているのだろうが、外に居る騎士と冒険者に防がれている。


 その後ろからエイジ達が襲っている形だが、首を刎ね、頭を潰し、革鎧ごと心臓を串刺しにして殺している。どっちが蛮族か分からない恐ろしさであろう。その所為で騎士と冒険者がこちらを警戒してしまっている。


 これは都合が良いと賊を殺戮した後、さっさと去ろうとミクは声を掛けたのだが、やはり上手くはいかないようだ。



 「一応伝えておくと、後味が悪いから助けただけで、それ以上どうこうは無いから。それじゃ!」


 「ちょっと待ってくれ! このまま去られたのでは、私の面目が立たぬ。申し訳無いが、礼の一つもせねば私が恥晒しとののしられるでな。礼を致したいのだが……」


 「それで自分を護衛しろか? だからこそ貴族などに関わるのは嫌なのだ。下賤な者は高貴な者を守るのが当たり前だ、泣いて喜ぶとでも思っている。貴様らの狂った妄想にこちらを巻き込むな」


 「何だと! キサマ!」


 「止めよ。言っておる事はアレだが、こちらが護衛を頼もうと思っていたのは事実だ。しかし、いささか言い過ぎではないかね?」


 「ならばここに捨てていくだけだ。お前ら権力者が死のうがどうでもいいし、私には何の興味無いしな。せめてむごたらしく死ね、と思うくらいか……」


 「………」


 「あっはっはっはっ!! こりゃあ、いい! 皇子さんよ、コレが現実だ。あんた達が誇る権力とやらの現実こそが、コレなんだよ。オレは言ったよな、どんな国だって民に足を掬われるんだってさ」


 「それは………」


 「皇族を何だと思っておるのだ、貴様らは!?」


 「はいはい。お前さんのようなのが国を駄目にするんだぜ? オレ達冒険者にとって、権力者なんてそんなもんとしか思っていない。上が幾ら変わろうがオレ達は冒険者だ。何の変わりも無いんだよ」


 「そもそもだが、権力の座から引き摺り下ろされて困るのは権力者だけだ。民からすれば支配者が変わるだけに過ぎん。だからこそ善政を敷かねば民に忠義など芽生えんというのに、そんな事も分からず腐るのみ。民から見放されるのは当たり前であろうが」


 「くっ!? 貴様、何様のつもりだ!!」


 「何様かと問われれば、半神族様だと言っておこうか。貴様ら寿命のある者と違い、千年以上に渡りゴミどもを見てきた者だよ」


 「「「「「「………」」」」」」



 流石に千年を超える寿命は唖然とするらしい。しかし、何故ここまでローネは喧嘩腰なのだろうか?。


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