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0019・カレンへの報告




 ひたすらバルクスへの道を走っている。既に昼を過ぎているが、お腹が空く事は無いし疲れないので問題無し。それに、そろそろバルクスの町に到着する。


 途中で何人もと出会ったが、何故か皆ミクに視線を向けてきていた。その事に若干の疑問を持ちつつも、ミクはバルクスの町の門まで走って行く。


 適当に作った薄手のチュニックの一部が、走っている最中に弾んでいるのだが、ミクは欠片も自覚が無いようである。自分が美の化身とまで言われる容姿であり、ブラなど発明されていない世界で弾ませていれば、見られて当然だ。


 自身の魅惑の二つの果実が、どれほどの者を魅了しているのか自覚するべきである。何故ならば魅了されているのは男性だけではないのだ。「お姉様」という言葉すら聞こえている癖に、全く意味を理解していないミクであった。



 「やあ、お帰り。走ってきたみたいだけど、どうしたんだい? それに、その格好はいったい……」


 「これ? 領都に行く時にギテルモ商会の奴に襲われて、夜まで犯され続けてた。それで隙を突いて殺したんだけど、服がズタズタにされててね。仕方なく奴等が着てた服を貰って着てる」


 「何て酷い事を……ギテルモ商会って碌な噂を聞かないけど、最低な奴等だな」


 「何でも<人喰い鳥>とかいう裏組織の奴等が、冒険者のフリして護衛してるんだって。で、見つけた女冒険者を襲って娼館に売り飛ばしてるそうだよ。私を犯していた奴等はそんな話をしてたね」



 それを聞いていた周囲の冒険者や町民はブチギレている。「女性を食い物にする奴等なんぞ許すな!」という声が聞こえてくるが、ミクをチラチラ見ているところを見るに良い格好をしたいだけのようだ。


 それを見て女性が白い目を向けるのかと思ったら、女性は更に声を上げて怒っている。……ミクをチラチラ見ながら。どうやら男女揃って、同じ穴のむじなのようだ。


 バルクスの町に入ったミクは、そのまま真っ直ぐ冒険者ギルドに行く。まだ昼と夕方の間ぐらいなので混雑しておらず、ミクは美味しそうな匂いの人ことカレンの前に行き、子爵からの手紙を渡した。


 怪訝な顔をしたカレンは封蝋を見た瞬間理解し、ミクをギルドマスターの部屋へと案内する。ミクも黙ってついていき、ギルドマスターの部屋へと入る。


 執務机の椅子に座ったカレンは開口一番、聞きたい事を聞いてきた。



 「領都に行ったにしては異様に早く帰ってきたわね。流石に早過ぎて怪しまれるわよ? 周りにバレるような事は慎むんじゃなかったの?」


 「子爵が可能な限り早く持っていけって言ったから、早く持ってきたんだけど? 途中で襲われたけど潰して情報を得て食べたから、時間は無駄に使ったよ?」


 「待って待って。いきなりよく分からない情報が出てきたんだけど、一つ一つ説明してくれないと分からないわよ。貴女、領都に行ったんじゃなかったの?」


 「説明はするけど、先に手紙読んだ方が良いんじゃない?」



 怪物ミクにまさかの正論を言われ、渋々説明を後回しにして手紙を読んでいくカレン。読み終わった後で部屋の外に出て行ったが、様々な者に指示を出したら部屋に戻ってきたようだ。


 手紙の内容とやるべき事より、ミクの話の内容が気になってしょうがないカレンであった。


 執務室の椅子に座り、一旦深呼吸して落ち着いた時、カレンはミクの服装が違う事に気付く。



 「あら? チュニックなんて着てたかしら? 厚手のシャツだったような気がするんだけど……。薄すぎるし、貴女の美しい胸の大きさがハッキリ分かるじゃないの! 何でそんなのを着てるのよ!」


 「ギテルモ商会の奴等に犯されたから?」


 「………」



 その瞬間「ピシッ」という音がしたのではないかと思うほど、部屋の中に強烈な”圧”が生まれた。もちろんだが、それを放っているのは執務机の椅子に座っている人物だ。


 カレンは激怒していた。の邪智暴虐の商会を必ず潰さねばならぬと思った。カレンには権力も財力も暴力もある。……よし、潰そう。


 そう思ったカレンは再び外に出ようとして、ミクに止められた。報告を聞けと。再びの怪物ミクからの正論である。



 「まずはさ、話を聞こうよ。で、最初から話していくんだけど、まずは村に向かって歩いて行ったんだよ。そして村を越えて進んでると、ギテルモ商会の馬車がフォレストウルフに教われてた」


 「別に助けなくてもいいでしょ。そのまま捨てて、狼のエサにでもすればいいじゃないの」


 「え? やだよ、勿体ない。それで襲われてた奴等を普通の冒険者のフリして助けたんだけど、そいつらの視線があからさまでね。絶対私を襲う気だって分かったから、奴等の手に乗る事にしたの。肉が食べられそうだったし」


 「ああ、うん………ええ、そうだったわね。貴女そういう存在だったのよ。今思い出したわ。それで?」


 「麻痺毒が入った水を出してきたから飲んで、痺れたフリして夜まで犯されてた。林の奥に連れて行かれてたし、丁度いいかと思って2人残して食べて、その後で脳に触手を突き刺して全部喋らせた」


 「何気にサラっと、とんでもない話を混ぜ込むのは止めてほしいわ。……えっ!? 貴女もしかして無理矢理に喋らせる事が出来るの? 相手の意思に関わらず?」


 「出来るよ。さっきも言ったけど、脳に直接触手を突き刺して操ってるから。……そういえばイスティアが、<人喰い鳥>の連中は特殊な【スキル】で喋らないとか言ってたね」


 「イスティアって……ああ、<迅雷のイスティア>ね。あの子がどうした……ていうか<人喰い鳥>ってどういう事!? オルドム以外に何があったの! 話しなさい!」


 「今から話すよ。犯されて食べた後、服を切って脱がせてたらしくズタズタだったから、奴等の服を本体でアレコレして作ったの。だから今はこの服なんだよ。これで服の話は終わりね」


 「ええ。そいつらはこの世に居ないから、この怨みはギテルモの奴等にぶつけるわ」


 「??? まあ、話を続けるよ。子爵の屋敷に行ったら門番が、体を使わせれば通してやるとか言ったから、投げ飛ばして門に叩きつけた。その後で執事長とかいうのが出てきて中に通してもらえたね」


 「へ~ぇ………あのバカはそんな門番を雇っているのね。昔の事は若気の至りで許してやったけど、ミクに手を出そうとするクズを雇っているなんてねえ……」


 「ちなみにそいつらの前でオルドムの事を喋ったら、慌ててオルドムの所に言いに行ったらしいから、多分だけどオルドムの内通者? とかいう奴じゃないかな。逃げられたらしいし」


 「………逃げられた? ふ、ふふふふふふ。随分、私を舐め腐ってくれるじゃないの。久々に本気で暴れようかしら?」


 「子爵から手紙を受け取って帰ってくる際に、イスティアを連れてくる事になったんだけど、帰りの途中で急いでる馬車が居てさ。それを追いかけたらクロスボウを射ってきたから投げ返して、石を投げて車輪を壊したの」


 「貴女の人外パワーなら楽勝でしょうねえ。で、その馬車がどうかしたの?」


 「そいつら<人喰い鳥>の連中だったからリーダーだけ残して殺して、その後リーダーから情報収集した。で、その情報を聞いたイスティアは領都に帰って行ったよ。私はバルクスの町に帰ってきたけど」


 「成る程ね、お疲れ様。それにしても領都の子爵に手紙を届けるだけなのに、何でこんなに色々起こるのかしら?」


 「知らないよ、そんなの。私からした訳じゃないし」



 ミクから何かをした訳ではないが、ミクが中心である事実は変わらない事である。


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