0196・ゼノイセン王国から東へ
外へと強制的に弾き出されたものの、何食わぬ顔で王都へと戻る一行。妙なリアクションをすれば自分達の所為だとバレてしまう為、出来る限り自然に驚くフリをして立ち去った。
夕方には早い時間である為、一旦ミクの部屋に集まって話し合いを行う。その間にミクは部屋から出てスラムへと移動する。情報を奪ったドイルは王都のスラムに財産を隠しており、それを取りに行く為だ。
聞いていた廃屋に行き、そこの地面を掘って箱を取り出す。その中に入っていたアイテムバッグを本体に送り、ミクは宿の部屋へと戻る。窓から部屋の中に入り女性形態に戻ると、ミキとサエから「服を着て!」と怒られた。
「情報通りの場所にアイテムバッグはあったけど、どうする? 今アイテムバッグが三つもあるんだよねえ。エイジとシロウに一つずつ渡すとして、残りの一つはどうしようか? 適当に本体の所に置いとこうかな」
「それがいいだろう。ところで何か良い物でも入っていたか? そこまで良い物であれば使っているだろうから、大した物は入っていないとは思うが……」
「それがねー、呪われた物が幾つか入ってるみたい。多分だけど【ダンジョンマスター】のスキルで出したんだと思う。危ないから本体が呪いを喰ったけど、またもやおかしな物に変わったっぽいね」
「また? 呪いにも意志があるのは分かっているけど、どうして自分の存在を残そうとするのか……? 人間種と同じような本能があるとしか思えない」
「まあ、とにかく一つずつ出していくよ。<鑑定板>は最後ね」
ミクは呪いの箱型道具にアイテムバッグを二つ、呪いの盾に呪いの短槍、そして呪いの棍棒を出していく。やたらに重厚感のある、ヘーラクレースが使ってそうな棍棒だ。元々はどのような呪いが付いていたのだろうか?。
もう分からないが、アイテムバッグをエイジとシロウに渡し、ミクは呪いの箱型道具から鑑定していく。
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<負取り箱>
元は開けると呪いを周囲に撒き散らす箱であったが、現在は逆に開けていると負の感情や呪いを吸収する箱になった。浄化魔法などを外から使えば、何故か箱の中の負の感情や呪いを浄化する事が出来る。平穏に役立つ箱。ダンジョン産。
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<硬化の棍棒>
元は所持した者を勃起させ続ける呪いの棍棒であったが、現在は魔力を流すと更に硬くなる棍棒となった。材質はサレドアムの木であり非常に硬く、使い勝手はかなり良い。見た目が野蛮という事だけが難点である。ダンジョン産。
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<集目の盾>
元は無差別に敵の注目を集めてしまう呪いの盾であった。それは今も変わらないが、効果のオンとオフが可能となっているのが大きな違いとなる。魔力を流している間だけ、盾の前に居る者の注目を一身に集められる。ダンジョン産。
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<魔尖槍>
元は魔力を奪われ続ける呪いの短槍であったが、現在は魔力を非常に通しやすい短槍となっている。練習すれば穂先から魔法を使う事も難しくない。殆ど魔力のロス無く通せるので非常に便利だが、扱いは難しく練習あるのみ。ダンジョン産。
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「これらは丸ごと全部エイジ達だね。というより、槍以外はエイジかな。特に箱はなるべく使って、中に溜め込んだモノを浄化する。それを徹底しようか? そうすればドス黒さも減るんじゃないかな」
「ふむ。可能性としては無くはないが、難しいところだな。一日で溢れ出たらどうする? ミキやシェルの重さや黒さは生半可なモノではないぞ。こんな小さな箱で耐えられるとは思えんがな?」
「「………」」
流石に二人が睨んでくるので話題を変えたものの、冗談では済まないのが二人なのだが、分かっているのだろうか? ローネも半分以上は冗談ではなく本気で言っている程である。とはいえ、やはり本人には自覚が無いのだろう。
そんな話も終わり食堂へと移動したら夕食を食べる。明日は一日情報収集を行い、次のダンジョンがある国へと移動しなければならない。召喚陣は既に破壊したので、この国での用は無くなっている。
暈しながらも移動する話をし、食事をとって宿の部屋へと戻る。明日は休みのようなものなので、早速エイジ達もシロウ達も始めているらしい。ローネとネルも準備をしているので待ち、さっさとヤったら分体を停止するのだった。
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翌日。朝食を食べた後、それぞれに分かれて情報収集を行う。ミク、ローネ、ヴァル、ネルとエイジ達。その形で分かれて情報収集を行うのだが、ミクはスラムに行って脳を操り情報を得ていく。ついでに洗脳もしているので治安は良くなるだろう。
スラムなんて大体が犯罪者である。子供の中にも犯罪者がいるので次々に洗脳していると、とある一角に女性達が大量に居る場所があった。どうやら女性達が集団で固まる事で身を守っているらしい。
ただし、この集団に加わるにも金を支払う必要があるみたいで、金の無い者が叩き出されている。見つからないように動きながら情報収集し、次々に洗脳を施していく。金を要求しているのも叩き出されているのも犯罪者なので、ミクは一切の容赦などしない。
そもそもだが、やっているのは裏組織やチンピラと何も変わらないので、容赦をする必要性が何処にも無いのだ。そうやって一日掛けて情報収集とスラムの浄化を行ったら、宿の部屋へと戻り女性形態になって服を着る。
少し待っているとローネやヴァルも戻ってきたので、情報交換を手早く行う。エイジ達には聞かせられない事もある為だ。まあ、スラムの浄化をやったと言ったら、二人からジト目で見られてしまっているが。
情報交換が終わった辺りでエイジ達が帰ってきたので、食堂に行き夕食を注文したら話を始める。エイジ達は情報収集できたのだろうか?。
「まあ、それなりには出来たと思います。この国の隣の国にはダンジョンが無いそうですが、その向こうの国にはあるそうですね。東にハリベット王国があり、その東にあるドラード帝国という所にあるそうです」
「帝国って聞くと「力こそ全て」って感じに聞こえなくもないけど、実際にそんな感じみたいなんですよね。商人の話では武具が安いらしいですけど、その反面、その安い武具で悪さをする奴も多いそうです」
「よくある国としか言えんな。物作りというか武器作りが盛んな国は大抵そうだ。国の中に武器が出回りやすいからな、どうしても盗賊や山賊などは増える。武器があれば使う阿呆は必ず出るのだ、厳しく制限しない限りはな」
集めた情報を交換しつつ食事を終わらせ、宿の部屋に戻っても情報交換を続ける。なるべく多くの情報を与え、自分達で様々な事を考えさせた方が良い、その為に与えられる情報は与えておいたミク達。
その後は自分達の部屋に戻り話し合いを……と思ったら、早速盛っているようだ。ミクもヴァルも呆れるが、ローネとネルも服を脱いでいる。こっちもかと思いつつ、二人は触手で撃沈させて分体を停止した。
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次の日の朝。それなりに居た宿の延長手続きをせず、食堂に行って朝食を注文する。出てきた朝食を食べつつ雑談をし、終わったら店を出た。次はどんな国なのか、情報はあれど自分の目で見るのとは違うものだ。
エイジ達は少々の期待をしつつ、王都の外に出て東へと移動を開始した。まだまだ愚か者やダンジョンマスターが居る以上、この星でやるべき事は終わらない。次の目的地を目指して一行は歩いて行くのだった。
尚、馬車は買わないで歩く事に決まった。これは昨日の話し合いで、盗賊や山賊に襲われる可能性を考えての事である。




