0195・王都のダンジョン終了
完全にブチギレたダンジョンマスターは【風弾】や【土弾】を乱射してくる。どうやらここのダンジョンマスターは魔法使い系らしい。その魔法に紛れるように白耳族が矢を放ってくるが、それらはヴァルがバルディッシュで弾いている。
周りから魔物が襲ってくるものの、それらはミク達が完全に排除していて、ダンジョンマスターの魔法はエイジが弾いている。ただし、それが精一杯で近寄れない。どちらの陣営にとっても、この膠着は予想外であった。
「まさか、ここまでダンジョマスターが厄介だとは思わなかったぜ。ダンジョンを弄る能力しかないのかと思ってたら、まさか普通に戦いも出来るなんてな。200年以上生きてるってのは伊達じゃないって事か?」
「そんなこと言ってる場合か!? 俺は防ぐので精一杯なんだから何とかしてくれ! これ以上はどうにもならないぞ!!」
とはいえミキ達も周りから襲ってくる魔物と戦っている為、そう簡単にダンジョンマスターに対処する事が出来ない。更に言えばミク達が全力を出していないので、対処で手一杯状態になっている。これは先に決めておいた事だ。なるべく手は出さないと。
「<弓聖>と呼ばれていた割には、相手に中っていませんねえ! 随分ヘタクソになってしまったようで、二つ名を返上した方がいいんんじゃないですかぁ!!」
「チッ! 鬱陶しい。下らん戯言を言っている暇があるなら貴様が何とかしろ。私は唯の雇われでしかない、貴様が死ぬならばさっさと逃げるだけだ。沈む奴を助けてやるほど、私は奇特な者ではないのでな」
「ハッ! だったらお前の手からその弓を取り上げるだけですよ。その弓があって初めて<弓聖>と呼ばれた癖に! 自分の実力を勘違いするとは、随分浅ましいですねえ!!」
「………」
後ろに跳んだ白耳族の男はダンジョンマスターを射るも、ダンジョンマスターに矢は中らない。何故か勝手に曲がってダンジョンマスターを避けていく。
「私がダンジョンの機能で特別に作った弓なのを忘れましたか? そもそも私に中るような物を渡す筈がないでしょう!! 頭が悪い奴ですね! だからこうなるんですよ!!」
白耳族の男の後ろから突然大量のクレイジーモンキーが現れ、白耳族の男を押し倒す。突然の事に驚く白耳族の男だが、強力な魔法を使ってクレイジーモンキーを吹き飛ばした。
しかしながら大量のクレイジーモンキーは次々に現れ、やがて白耳族の男のケツを貫いた。絶叫ともとれる悲鳴が響き渡るが、ダンジョンマスターの男は笑っている。
「あはははは……! ドイル、いい気味ですねえ! 貴方は本当に高慢ちきで鼻持ちならず、いつかクソのように叩き潰したいと思っていたのですよ!! お前達の御蔭でようやく叩き潰すことが出来ました。いやー、今日は凄く気分がいいですねー!!」
「アイツ味方まで犯しやがったぞ、流石に狂ってやがる。そもそも戦闘中に仲間割れとか、幾らなんでも頭がおかしいとしか思えないぜ。ああいうのは戦闘に勝った後だろう、普通は!」
「あははは……! バカだなぁ、いつでも勝てるからに決まってるだろうが!! 「覚悟はいいな?」と言ったぞ、小僧ども!!!」
使っていたのは【風弾】や【土弾】だったが、【烈風弾】や【岩弾】に切り替えて連射してきた。慌ててエイジはメイスを捨て、両手で盾を持って全力で防ぐ。【超速回復】と【怪力】の御蔭で何とかなっているが、これ以上になると難しい。
「チィッ! いつまで防いでやがる! さっさと潰れろや、小僧ども!! 潰したら女どもをブッ殺して尻を愛でてやるからよぉ!!!」
「クソキモイ事ぬかしてんじゃねえっての、気持ち悪いんだよ! ……エイジ無事か!? 何とか耐えてくれ! こっちの数が多過ぎて助けに入れねえんだ。さっきより増えてて手が回らねえ!」
「あははは……200年ほど溜め込んだ魔力が早々尽きる訳が無いだろう! しかもクレイジーモンキーは安いんだよぉ! 大体、どいつもこいつも騙されてんだ! 女なんぞ、すぐに裏切るだけだろうが!! 緩い穴しか持ってねえ、腐れビッチどもめ!!」
「お前に何があったのか知らないけど、そんな女ばかりじゃないだろ! 俺の彼女は二人ともドス黒いぐらい重いぞ? 世の中にはそういう女だって居るんだよ!!」
「そんな異常者を持ってくんじゃねえ! 気持ち悪いんだよ!! ビッチよりクソじゃねえ、ガッ!?」
気付いたら極大な【覇気】を使い、ミキが竜鉄の直剣をダンジョンマスターの男に投げつけていた。それは見事に心臓を突き抜けており、完全な致命傷だ。周りの魔物を倒しながら、「どんな威力!?」とエイジ達は恐れ慄いている。
やがて周りの魔物も駆逐し終わったが、その時にはダンジョンマスターの男は息を引き取っていた。ミキが心臓に突き刺さった剣を抜いているのを見ながら、ミクはドイルという白耳族の男に群がっているクレイジーモンキーを殺していく。
全て倒し終わったものの、ドイルという男はケツを掘られ過ぎたのか、白目を剥いて気絶していた。何故か口から白いモノが垂れていてアヘ顔を晒しているが、それは見なかった事にする。ミクは頭に手を置くと脳を操って情報収集をし、終わったら喰い殺した。
突然の事なのでビックリし、エイジ達が抗議するもミクはスルーして現実を突きつける。
「あのねえ、コイツは既に私達の事を知っているの。そのうえ先ほどの情報収集でトロッティアの召喚者である事も勘付いていた。となると、このまま逃がせば確実に私達にとって都合の悪い情報をバラ撒く。それを放置して、エイジは責任とれるの?」
「あ、いや……それは………」
「危険の芽は早めに摘まねばならん。そのうえダンジョンマスターを殺した事もバラされるだろう。色々な意味で、あの白耳族を生かすのは都合が悪いのだ。ここで情報が拡散してしまった所為で誰かが死ぬ、その責任がとれるならば構わんのだがな? 誰かとれるのか?」
「「「「………」」」」
「ミキとシェルは助ける気が無かったようだけど、それが正しい。アレもコレもソレも何て助けられない。そういう事を考える者ほど、全員を死なせる。確実に命を助けたい者だけ助ければいい。それが繋がっていくと、大きな輪になる。そう考えるべき」
「うむ。そもそも全てを助けようなど傲慢なのだ。そういう考え方では絶対に失敗する、何故なら人間種の能力では絶対に出来んからだ。だからこそ傲慢なのだしな。出来ん事をやろうとするのは、妄想を実現しようとするに等しい。だがな、それは妄想なのだ」
『説教はそこまでにしておこう。主がダンジョンマスターを喰ったし、そろそろダンジョンコアを破壊しに行くぞ。白耳族の男のアイテムバッグも手に入ったしな』
ミクは手に入れていた呪いの箱型道具とアイテムバッグを取り出して、それを肉を経由して本体に届ける。白耳族の男のアイテムバッグも転送したら、皆と一緒に紫色の反応に近付いていくのだった。
海岸線の高くなっている所は崖になっており、その垂直の壁の途中には洞窟があった。その中にダンジョンコアを隠していたらしい。崖の上から見ても、垂直なので洞窟が見えないようになっている。厄介な事をするものだ。
無理に全員で行ってもしょうがないのでミクだけが行き、中にあったダンジョンコアを正拳突きで破壊する。その瞬間、ダンジョンから外へと出された。これで終了だが、何だか攻略した感の無い終わり方である。
最奥まで行っていないからだろうか?。




