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0194・38層にて




 30層のボスであるグレーターヴァンパイアを倒し、更に先へと進む一行。31層は砂漠であり急に暑苦しくなる。砂漠なので足をとられる為、ミク達は四方に別れて様子見をしてくる事にした。


 ミク、ヴァル、ローネ、ベル。空を飛べるならこういう地形の際には大活躍するだろう。そんなベルは南に赤い魔法陣があるのを発見した。再び合流した際にそれを報告された一行は、素早く赤い魔法陣に移動して先へと進む。


 その後は全て南ではあったが、毎回調べた所為で無駄に時間が掛かった。35層のボス部屋に到着し、今はその前で休んでいる。素早く抜けてくる為に相当走った為、現在は精力剤を飲んで回復中だ。



 「それにしても厄介な地形を出してくるものだ。砂漠の暑さと熱気で随分と体力も奪われたぞ、しかし、何故地形で攻めてこんのだろうな? もっと体力なりを奪う地形にしていれば、ここまで来れなかっただろうと思うが……」


 「地形を作るのにも魔力を使うんじゃないですか? それと維持するのにも使いそうですけどね。収支が赤字なら魔力は失われていく一方ですから、そんなに厄介な地形ばっかり作れないんだと思いますよ」


 「成る程、そういう視点で考えた事は無かった。確かに魔力がどんどん失われていくなら、砂漠とか氷原とか火山とか簡単には出せない筈。それなら多くはないだろうから何とかなりそうだけど、魔力を大量に溜めてるなら出来る?」


 「それ以外にも、ダンジョンの中で人を殺すと増えるという描写もあったりしますね。人が持っている魔力を奪うとか何とか。実際にこのダンジョンが死体から奪っているかどうかは知りませんけど」


 「そろそろ体力は回復した? あまり時間が無いから一気に行くよ」



 そのミクの一言で気合を入れ直し、ボス部屋へと入っていく一行。出てきたのは一体だけだが、それはアークゴブリンだった。明らかにピリピリした空気と、重苦しいまでの殺気が向けられている。



 「ふむ、そなた達が我が主の理想を理解せぬ者達か。小便臭い小娘をここまで連れてきおって。アークゴブリンである我、ジラウが貴様ら小娘に引導を渡し、そこの男達を主に捧げようぞ」


 「アーククラスが出てきたとはね。流石にエイジ達じゃ駄目なうえ、どうやらまともに動けないみたい。というか、ローネとネルも動けるという程度で戦闘は難しそうだし、ここは………?」



 ミクが話していると、ヴァルが前に出る。どうやらヴァルは目の前のアークゴブリンと戦いたいようだ。



 『すまん、主。目の前の奴の趣味や性癖は理解できんが、奴も主を持つ武人らしい。ここは一つ、俺に任せてもらえないか?』


 「まあ……いいけど。あまり時間がないから早めに決着をつけてよ?」


 『了解だ。………俺の名はヴァル。お前を殺す者だ。お互い自らの主の為に全力で戦おうか?』



 そう言って、ヴァルは自分の右拳を顔の前まで上げる。それで理解したのか、アークゴブリンのジラウという者も右拳を顔の前まで上げた。その後、一呼吸置いた後で両者はぶつかる。ジラウはヴァルの顎を、ヴァルはジラウの肝臓を狙って右拳を振るう。


 両者共にとんでもない速度であり、これがアーククラスかとエイジ達は恐怖しながらも目が離せない。その攻防は両者がお互いに攻撃を受け合っている。お互いの攻撃がお互いに当たり、両者が少し下がった後で再び攻撃をし合う。


 凄まじいぶつかり合いだが、30を超えた辺りでジラウが大きく下がる。流石に耐えられなくなったらしい。



 「ヴァルと言いましたか、貴方は凄まじいですね。アーククラスである私がここまで追い込まれるとは思いませんでしたよ。しかし、私は負ける事は許されていないのです! 例え卑怯な事をしでっ!?」


 『そんな事をしようとしなければ、綺麗に止めを刺してやったというのに……。死なば諸共など許す訳が無かろうが』


 「何と、うこ……てか、んされ………」


 『残念ながら、お前程度に負けるほど俺は弱くないんでな。さらばだ』



 ドパァンっ!!! という音と共にジラウの頭は弾け飛び、ヴァルの勝ちが確定した。ジラウが持っていたのは黒い箱型の道具であり、かなりの呪いを放出している。ヴァルはそれを使って死なば諸共を行うと悟り、即座に左手で心臓を穿った。


 その後に右手の裏拳を叩きつけ、頭が弾け飛んで終了。ジラウは殺された。ミクは素早く動き、ジラウの持っていた呪いの箱型道具とアイテムバッグを、自分のアイテムバッグの中に突っ込む。これで問題無いだろう。


 転移させられるギリギリ前だったので入れる事が出来た。あのジラウという奴は特殊なボスか、もしかしたらダンジョンマスターの眷属か何かだったのかもしれない。ヴァルドラースの様に、ボスとしてダンジョンマスターがどこからか連れて来た可能性がある。


 そもそも普通に言葉を話している時点で、おかしいとは言えるのだ。その前のグレーターヴァンパイアでさえ人語は解していなかった。カレン達でさえ普通に喋っていたのにだ。それを考えると外部から連れて来たという方がしっくり来る。


 そんな話をしながらも36層の海岸線を移動していく。何故か最初の層と同じ地形になったが、クレイジーモンキーがいるので明らかに違う。ここのダンジョンマスターはどこまでもケツを掘りたいらしい。「いい加減にしろ!」とエイジとシロウが怒っている。


 二人が八つ当たり気味に倒しながら進んで行くと、赤い魔法陣を発見。乗って37層へ。今度もウロウロしつつ赤い魔法陣を探し、見つけたので近付くもミクが止める。何故かと言うと、遠くの方に紫色を発見したからだ。



 「ちょっと待って! 手鏡に紫色の点が映ってる。これ初めてなんだけど、皆で行くよ。もし予想が当たっているなら……」


 「ダンジョンコアか。必ず最奥という訳では無いだろうしな。中途半端な所に隠していても、おかしくはない。赤い魔法陣で転移する前に一度、皆で確認しに行くか」



 エイジ達も了承したので歩いていくも、急にクレイジーモンキーが大量に襲ってきた。明らかに行かせないように邪魔をしているように見え、ダンジョンコアの可能性が高くなる。


 そのまま倒しながら進んで行くと。突然凄い速度の矢が飛んできた。運良くミクに飛んできた矢だったので楽々回避したが、ミクやヴァル以外だと死んでいたかもしれない。それを見て慌てて気を引き締めるエイジ達。


 目の前から現れたのはダンジョンマスターと白耳族エルフの男性だった。



 「やー、これは驚きです。まさか<弓聖>とまで謳われたドイルの矢があたらなかったなんてね、初めて見ましたよ。ドイルを雇って50年ぐらいですけど初めてですよね?」


 「その気持ち悪い顔をこちらに向けるな”マリオ”。貴様と私は傭兵としての契約関係しかない。お前の気色悪い趣味の同類だと思われたくないのでな」


 「………」


 「何だかボロクソに言われてるなー。気持ちは痛いほどよく分かるけど。いちいちノンケを汚染しようとしないでほしい。こっちはそんな趣味持ってないっての」


 「本当にな。ああいうのは同じ趣味の人達だけでやってほしいもんだ。ああいうのに限って他人を巻きこもうとするんだよな。傍迷惑な」


 「くっくっくっ……良かったな、マリオ。お前の趣味がよく理解されているようだぞ? 私も同じだ。お前が莫大な契約金や、特殊な道具に”この弓”を渡さなければ、お前のような気持ち悪い者の味方なんぞせんよ」


 「………オマエラ、カクゴハイイナ?」


 「なんだか女装したのがやたらに怒ってるね? モノが小さいと怒りやすいのかな?」


 「「「「「「「ブッ!」」」」」」」


 「………」



 ミクの容赦ない一言がダンジョンマスターを完全にキレさせたようだが、果たして良かったのだろうか?。


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