0193・ダンジョンのルールと30層ボス
26層を進んで行くも、なかなか赤い魔法陣が見つからない。流石に赤い魔法陣が無く、先に進めないようにはなっていないだろう。そんな事をすればダンジョンコアのある場所へは行けないからだ。流石にそれは反則であろう。
ミクがそう考えていると、<空間の神>が来て多少のルールを教えてくれた。細かくはもっと沢山あるらしいが、それでも教えて貰えた事は有益であった。
第一に、必ずダンジョンコアの下には辿り着けるようになっている。ダンジョンコアを隔離するような事は出来ない。またダンジョンコアに繋がる通路は縦横2メートル以上の空間が無ければならない。要するに通路を塞ぐ事は出来なくなっている。
第二に、一度設置場所を変えると三日は変えられない。つまり一度変更されてから三日以内に攻略すればいい訳である。これはミクにとってありがたい情報だった。
第三に、ダンジョン内に侵入者が居る間はダンジョンコアを動かす事は出来ない。これは事前に聞いていた事の一つだ。
第四に、ダンジョンマスターは出られるが、ダンジョンコアがダンジョンの外に出る事は出来ない。つまりダンジョンマスターが外に出ても追い駆ける意味は無い。ダンジョンマスターすら外に持って出る事は不可能であり、コアを持ち出される心配は無用。
第五に、侵入者が居る間は地形の変更は出来ない。ただし魔物の変更は可能。これはボスも同様だが、実は段階がある。層の深さによって呼べる魔物のクラスが決まっているのだ。最初から強い魔物を呼ぶ事は出来ない。
第六に、層の数は全部で40層までしか作れない。これはミク達にとって最も有益な情報だった。延々と続くようなダンジョンは無いという事である。
「つまり後14層進めば、ダンジョンマスターも居るし、ダンジョンコアも必ずあるって事ですね? ………いや、そうとは限らないのか。場合によっては、ここ以前の層にダンジョンコアを隠している可能性もある」
「そうなってくると厄介だよなー。ここまでの層だって全て調べている訳じゃ無いし、地図に描かれていない先だってある。それに何処に隠しているかなんてダンジョンマスター以外は知らないしなぁ。1層目に隠してあったら、どうにもならないぜ?」
「少なくとも誰かがダンジョンに居れば、場所の変更も地形の変更も出来ないんでしょ? だったら今の内に調べ尽くして行くか、それとも誰かが1層で夜を明かせば大丈夫じゃないかな。もしくは全員でキャンプ?」
「あー、キャンプはいいかもー。ちょっと楽しそうだし、1層なら弱い魔物しか召喚できないから安全だと思うー。案外、本当に良い案かも?」
「いきなり魔物を近くに大量に出現させるかもしれないし、止めた方がいいとは思うけどね。ダンジョン内では、ダンジョンマスターが圧倒的に有利。その事は変わらないみたいだからさ」
「そうだねー。いきなりお尻を掘られたら困るよ。シロウがお尻好きになるのもちょっと見てみたいけど、やっぱり駄目ー」
「なる気はねーよ!? 何でオレがケツを掘られなきゃなんねーのさ、オレは絶対に嫌だからな! 死んでもケツなんてゴメンだ!!」
「俺もヤダよ。何で彼女が二人も居るのに、猿にケツを掘られなきゃなんないのか。死んだ方がマシだって気持ちもよく分かる。ケツを掘られても生きているだけマシって言われましたけど、その後に殺される可能性もあるなら死んだ方がマシです」
「まあ……そういう事もあるから、エイジの言いたい事も分かる。太いのを入れられて裂けたのとか、お尻でヤられ過ぎて捲れ上がったのも知ってるから。エイジの言いたい事も分からなくはない」
「捲れ上がるって………」
「「「「「………」」」」」
26層を移動中だが暢気に会話をしているのには理由がある。この層、クレイジーモンキー以外は出てこないのだ。ハイクレイジーモンキーまで登場したが、あのダンジョンマスターはどこまでケツの穴に狂っているのだろうか?。
非常に強い執着を感じるが、意味が欠片も理解出来ない事に変わりはない。どこまでも頭がおかしいと思えるが、おかしくなきゃダンジョンマスターとして生き延びていないだろう。そう考えると納得のおかしさである。
ウダウダとしながらも20層まで進み、ボス戦を前に話し合いを行う。ボス戦前で休憩をしている時にベルがある事を言い出した。
「ボス戦前のここだと魔物が出ないから寝やすいねー。ちょっと、うとうとしてきちゃった……」
「おい、ベル。こんな所で………あれ? ここで寝れば安全で、しかもダンジョンマスターはコアの場所も地形も変えられないのか? いちいち実験する気にはならないけど、最悪の時の為に覚えておくべきかな………?」
「確かにそうかも。ボス部屋の層って必ずボス戦の部屋と、その手前の休憩所しか作れないみたいだしな。ここでは確実に休憩できるようになっているけど、ずっと居続けることができるかは分かっていない。おしおきモンスターが出てきたらどうする?」
「ああ、たまにゲームでいるなあ。今居る場所に不釣合いなほど強い魔物って。そのうえ倒しても何も手に入らないし意味が無いって魔物だけど、実際に居そうな気がするな。絶対に遭いたくないけど……」
「そんな事よりもダンジョンマスターの男が姿を現した以上は、もはや一気に攻略するしかない。このまま進んでダンジョンコアを壊すぞ。ここで手間取ると何を用意されるか分からん」
ローネの言葉を聞いて準備をしていくエイジ達。とにかく準備だけは済ませ、後は行き当たりばったりで何とかするしかない。ある程度ボスを自由に変えられるなら、ピンポイントで準備しても意味が無いのだ、
だからこそアバウトな形でエイジ達は準備をするのだった。そうして入った30層のボス部屋。そこに出てきたのはグレーターヴァンパイア三体だった。それも全員男で何処か怪しい雰囲気を醸し出している。
「何だよ、ネット広告でたまに見るBL雑誌のキャラみたいな連中! 物凄く嫌な予感しかしないだろうが!! こんな事もあろうかと教えて貰っていた【浄化魔法】を喰らえ、【高位聖化】!!!」
「「「ギャーーー!!!!」」」
【浄化魔法】の中でも、レイスを消滅させたりヴァンパイアを弱らせる魔法である<聖化>系統の魔法。その中でも強力な【高位聖化】をシロウは使えるようになっている。
サエは【上位聖化】までしか使えないが、シロウの魔法は一種の切り札として温存していた。早々に使ったのは間違いなくグレータークラスのヴァンパイアだったのと、あからさまにエイジやシロウにヴァルを狙っていた視線だ。
一瞬見られただけで怖気が走ったシロウは、後の事など考えずにブッ放す。結果的にコレが最適解であり、一気に弱体化したグレーターヴァンパイアは簡単に倒されるのだった。
ミキに首を刎ねられ、シェルに心臓ごと大穴を空けられ、ローネが胴体を一突きで殺した。何故ローネだけ適当に刺してあっさり死んだのかというと、【天命殺】のスキルの効果となる。
【天命殺】のスキルは体を傷つけた際に、そこから【闇神術】の【死命】を注ぐスキルであり、どんな状態であっても死に向かう。体の生きようとする機能を反転させ、死に向かわせるスキルと言えば分かりやすいだろうか?。
実は闇半神族の中でもローネしか使えないスキルであり、非常に珍しく貴重なスキルでもある。ローネ自身は滅多に使わないが、今回は確実に止めを刺す為に使用した。
相手はヴァンパイアなので念には念をいれた形だ。




