0192・謎の美女?
夕食を食べ終わる頃にはサエは冷静になっており、ベルに対して怒っていた。流石に頭がボケている時はされるがままだったが、冷静になれば元に戻った様でヤレヤレである。ミキはまだしもサエまで色ボケすると色々マズいだろう。ストッパーが居なくなる。
そんなエイジ達とシロウ達も、部屋に戻ったら再びヤるらしい。好きにすればいいと思うが、明日もダンジョン攻略だとは言っておいたので、夜更かししても無理矢理に連れて行く事を決めるのだった。
ミクが部屋に戻ると、またいそいそと準備をしだしたローネとネル。ミクは二人でしたら? と言ったのだが、それでは駄目だとの事。二人から色々と力説された為、仕方なくヴァルと一緒に挟んで満足させるのだった。
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翌日。スッキリと起きてきたエイジ達と共に、食堂に行って朝食を食べる。その後、準備を整えてダンジョンへ。昨日と同じ様に進んで行くものの、いつダンジョンマスターが介入してくるか分からない為に緊張感を持って進む。
5層ボス、10層ボス。そして15層のボスと20層のボスも事前情報と変わらず。むしろ昨日より簡単なので、あっと言う間に倒して進む。21層の山に再び到着したが、またもクレイジーモンキーがウザい。
ここからは地図が無い為、ミクは手鏡を使ってみた。使い方はシンプルで魔力を流せばいいらしい。なので手鏡に魔力を流してみたのだが、綺麗に映っていた手鏡が灰色に曇り中心に白い点が光る。
ミクは意味が分からず壊れたのかと思ったが、手鏡の右上の方に黄色い点が映った。ミクは気付いているが、そちらの方角にはクレイジーモンキーが居る。となると、この黄色い点は魔物を表しているのだろうか?。
そんな事を考えているとクレイジーモンキーがこちらを見つけ、急速に接近してくる。すると手鏡の黄色い点がオレンジ色に変わった。エイジ達が前に出て倒すとオレンジ色の点は消える。成る程、アレは魔物だったらしい。
そんな事を手鏡を見ながら話していると、エイジ達は何とも言えない顔になった。
「それって多分ですけど、ゲームとかのレーダーと同じだと思います。自分が中心の白い点で、気付いていない魔物が黄色、気付くとオレンジに変わるんでしょう。普通、魔物は赤で表示されるんですけど……」
「赤の魔法陣があるから、そっちに赤色を使ってるんじゃね? つまり手鏡で青色が見えたら脱出の魔法陣だと思う。ある意味でスゲー便利な道具ですよ、それ」
エイジとシロウの言葉でこの手鏡の使い方が完全に分かったミク。確かに言われた通りなら物凄く分かりやすいし便利だ。何より魔法陣を探しやすくなったのは助かる。地形を何度も変えられたら突破出来なくなるから作ったんだろうか?。
流石に腐っても神、何も考えずに作った訳では無さそうだ。それでも素直に信じられないのが神々なのだが……。そんな事を考えながら赤い光点を探して歩く。程なく見つかり、赤い魔法陣だった事も判明した。
非常に便利な道具を使いつつ順調に進んでいき、25層のボス部屋前。流石に事前情報が無いので、気合いを入れて色々なパターンを考えておくエイジ達。買ってきた昼食もとり、十分に準備が出来たので、最大限の緊張感を持ったままボス部屋に入る。
すると中にはドレスを着た一人の人間種が立っていた。その人物はこちらを見てニッコリとした後に話し掛けてくる。歪な魔力を含んだ”声”で。
「皆さん、よく来られました。私はダンジョンマスターのマリオン。せっかくそちらの男性三人を素敵な世界にお連れしようと思ったのに、失敗してしまって悲しいです。ですがまだ諦めていませんので、早く”こちら側”にいらして下さい。では……」
そう言って地面から現れた魔法陣と共に消え去っていったダンジョンマスター。とても美しい容姿と声であった為か、ヴァルはともかくエイジとシロウが固まっている。素早くミキとサエが思いっきりビンタをした事で正気に戻ったが、痛みに二人は呻く。
「いつつつ………。ありがとう。御蔭で正気に戻ったけど、ボスはどこだ? いまだにボスが居ないし、さっきのダンジョンマスターは消えたし。いったいどうなってるんだ? このダンジョン」
「あててて………。確かにエイジの言う通り、ここのダンジョンは明らかにおかしいぞ。さっきのダンジョンマスターも何かしてきやがったが、それ以上にどっか変だった。何が変だったかは分からないがっ!? 何か出てきた!!」
その時、地面に魔法陣が現れて魔物が三体出てきた。それを見たエイジとシロウは明らかにゲンナリした顔になる。
「「何で、クレイジーモンキーなんだよ!!!」」
そこには三体の筋骨隆々なクレイジーモンキーが居た。明らかにランクで言えばグレータークラスだろう。にも関わらず呼び出してくるのは<穴掘り猿>。ダンジョンマスターの意図が欠片も理解出来ないが、今はそんな事を言っている場合ではない。
ボスのグレータークレイジーモンキーは、三体それぞれが分かれ好みの男を襲う。一体はエイジに、一体はシロウに、そして最後の一体はヴァルに。ミクチーム、エイジチーム、シロウチームに分かれて戦う羽目になったものの、ヴァルを襲ってきた奴は瞬殺された。
襲ってきたグレータークレイジーモンキーの攻撃を避け、バルディッシュで足を切り落とし、倒れたグレータークレイジーモンキーの延髄にバルディッシュを叩き込んで終了。驚くほどあっさりしたものだった。
そしてミク達が他のチームに加勢に行った御蔭ですぐに終わる。流石にグレータークラスが一体に対して三人だけだと、エイジ達が殺されかねないので、ミク達も介入する結果となった。ダンジョンマスターに介入するように仕向けられたというべきか。
そんな事を26層の草原で話す。
「今もこっちを監視しているのか分からないけど、あのダンジョンマスターは思った以上にやり手だよ。流石に尻を掘られる以前に殺されかねないからね、私達も介入せざるを得ない。おそらく私達の実力を見たかったんだとは思う」
「成る程、それにしても思っているより遥かに厄介な女性ですね。妙な精神攻撃っぽいのを仕掛けてきましたし。警戒していないと、今度は俺やシロウがやられそうです」
「そうだな。前回はミキちゃんが魅了されたけど、今回は男ならお構いなしって感じだ。厄介なもんだと思うけど、何でダンジョンマスターが魅了のスキルばかり持ってるんだろうな? おかしくないか?」
「あれは【音魔法】の一種で【魅声】の魔法だね。ただ、普通とはちょっと違う感じがしたけども。少なくとも魅了系のスキルじゃないよ」
「そうなんですか……。それにしても女性なのに、何故クレイジーモンキーを出してくるんでしょうね。男が犯されるのを見て喜ぶタイプなんでしょうか? 世の中には様々な人が居ますけど、今回のダンジョンマスターは色々おかしいですよ」
「それな。流石に、あんな女にどうこうは無い。クレイジーモンキーを嗾けてくるって、絶対まともじゃないぜ。あんなトチ狂った奴は見た事がない」
「エイジとシロウが何を勘違いしているのか知らないけど、アレは男だよ。精の臭いがしたし間違い無い。掘りたいのか、掘られたいのかは知らないけどね。少なくともクレイジーモンキーを好んでるんじゃないかな?」
「「うげぇっ………」」
「エイジもシロウも心底嫌そうな声が出たね。気持ちはよく分かるけど。それにしても無理矢理エイジのお尻をどうにかしようなんて許せない。この層でもクレイジーモンキーが出てくるし」
「地味に罠の難易度も上がってるけど、それ以上にクレイジーモンキーがウザーい。更には連中が勝手に罠に引っ掛かる所為で、こっちまで被害受けるじゃん! 本当に鬱陶しい猿だよ! そんなにお尻がいいなら同族で掘ればいいでしょ!」
「サエの語尾が伸びないという事は、よほど怒ってるな。まあ彼氏のケツを狙われたら納得も出来んか。それにしても、ダンジョンマスターが同性愛者とはな。それ自体は好きにすればいいが、趣味に留めるべきだろうに」
神に「殺せ」と言われるのがダンジョンマスターである。まともな奴など殆どいないのは当たり前の事であろう。




