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0178・30層のボス戦と乱入者




 30層のボス部屋に入った一行は、グレーターオーガが静かにたたずむのを目撃する。何故かその場から全く動こうとしないグレーターオーガ。するとボスの後ろに魔法陣が出現し、一人の背の低いデブと腕が翼になった女が現れる。



 「いやー、ようこそ皆さん! 40層にある最奥の場所から何度も見させてもらったよー。美輝ちゃんも久しぶりだねー、僕だよ西条董二だよ。覚えてるかな?」


 「………西条っていうぐらいだから宗家の人間だろうけど………誰? 私知らないんだけど、どういう事?」


 「……おやおや、随分と酷いねぇ。昔パーティーで何度も会ってるんだけど、よもや忘れられてるとは思わなかったよ。っと、そういえば何故か美輝ちゃんが中学生になる前から、パーティーに出られなくなったんだっけ?」


 「………思い出した。あの男はエイジが助けてくれた後のパーティーで、エイジをなじったクズの一人。「星川家のお嬢さんを守って本望」とか言ったゴミ。私が出入り禁止にした汚物」


 「………」


 「なるほどー。ミキちゃんを男嫌いにした元凶の一人ねー。確かに醜悪な見た目してるし、性格の悪さが顔にまで滲み出てるしー。とんでもなく醜いねー」


 「は? どこの誰か知らないが、下等民は黙ってろよ。これだから国の改革は間違っていたんだ、奴隷如きが調子に乗る世の中など狂っているだろうに。あのような卑しい俗物を見れば誰でも分かる事だぞ。まあいい、さっさと美輝ちゃんを僕の物にしてしまうか」


 「何、あのキモブタ。自分の醜さも知らずにブヒブヒ言ってるんだけど? 人間の言葉を喋ってくれないかな、妄想の中に逃げ込んでないでさ?」


 「グレーターオーガ、行け! 美輝以外のゴミどもを皆殺しにしろ!!」


 「自分の力で出来ないから何かに任せるしか出来ない。その行為自体が無能の証だって分かんないのかな? あっ、ごっめーん、分かる知能無かったよねー。だったら無理だー」


 「ブッコロセ!!!!」



 グレーターオーガが一気に攻めてきたものの、上手くエイジは集中し拳を受け流す。その隙にミキが攻撃する筈だが、何故かミキは動かない。慌ててシロウが攻撃するも、ミキはフラフラと前に歩いて行ってしまう。


 何が起こっているか分からないものの、エイジは再びグレーターオーガに集中する。しかし、何が起こっているか分からない事が、パニックを引き起こしてしまうのだった。



 「ちょ! ミキ! ……いったいどうなってるんだ、ミキ! 何があったんだ!?」


 「あははは……美輝ちゃんをけがしたお前は真っ先に殺すべきなんだけど、そんな暇は無くてなぁ! ひひひひ……【誘惑の魔眼】を持つ僕は神に選ばれたんだよぉ! チートを貰ってるんだからさぁ! ギャハハハハ!!」


 「おい、エイジ! あいつヤバイぞ! 魅了持ちだ!! 前に見た蛇女族ラミアーの女と同じくらいやべぇ! このままだとミキちゃんが連れ去られちまう! お前突っ込め!」


 「いやいや、突っ込みたいけど俺が居なくなったら誰も流せないだろ。目の前に居るのはグレータークラスなんだぞ! ミキ! 俺の声が聞こえてないのか!? ミキ!!」


 「ぶひひひひ。これだから下等な奴隷は愚かだな。一度魅了に掛かった以上、解除できる訳が無いだろう? 後は魅了の状態を深めて【支配の刻印】を刻めば、もう僕の物だ! ひひひひひ……」


 「エイジ君! ミキちゃんを何とかして! 早く!!」


 「行きたいのは山々だけど、誰が攻撃を止めるんだ。ここで俺が前に行ったら二人とも死んじまうぞ!」



 フラフラとダンジョンマスターの前まで歩いて行ったミキ。その醜悪な男の手が触れた途端、激しい嫌悪からか、ミキは後ろに倒れた。ダンジョンマスターはダンジョン内を好き勝手に出来ても、侵入者を好き勝手には出来ない。


 侵入者を強制的に転移させる為には、ダンジョンマスターが触れていて、かつ集中する必要がある。ダンジョンマスターは舌打ちしながら後ろに倒れたミキに手を伸ばすも、それより早くエイジの大声がボス部屋に響く。



 「ミキー!! お前の思いはこんなものかよ! 俺の事を愛していたんじゃなかったのか!? お前の気持ちはもっとドス黒いものだろう!! そんなゴミの言いなりになる程度か!!」


 「ひひひひ、気持ち悪い男はこれだから困る。僕と美輝ちゃんの愛が理解出来ないとはね、下等民が夢を見過ぎなんだよ。奴隷は奴隷らしくしてろ、バーカ!」


 「ミキ! 俺はお前を心から愛してる!! お前はどうなんだ、本気で俺を愛しているのか!? それとも自分を愛してくれれば誰でも良かったのか!?」


 「うわー、気持ち悪いねえ。大丈夫だよ、美輝ちゃん。これからは僕があの気持ちわ、ギャッ!!!」


 「エイジの悪口を言うな! 気持ち悪いゴミが!! ………さっさと死ねぇーー!!!」



 触れられた瞬間激昂したミキは、剣帯に付けていたナイフを手に持ち、全力でダンジョンマスターの足を突き刺した。いきなりのミキの攻撃に、痛みに喚くダンジョンマスター。剣を抜き素早く攻撃しようとするも、翼の腕を持つ女が邪魔をする。


 非常に強力な【風魔法】で吹き飛ばされてしまうが、ダンジョンマスターの男から離れる事に成功した。



 「クソッ、あの気持ち悪い奴が邪魔した所為かぁ!! 僕の美輝ちゃんを奪ったゴミめ! もういい! お前ら纏めて死ね!!」



 そう言うとダンジョンマスターが倒れた地面に魔法陣が現れ、ダンジョンマスターと腕が翼の女性の姿が消えてしまう。ここで倒せれば良かったのだが、倒す事が出来なかった。逃がすと何をされるか分からないので、完全に攻略してしまう事にミクは決める。



 「ごめん、エイジ! あんな奴に連れて行かれるところだった! ありがとう! 私も心から愛してる!! でも、ドス黒いって言ったから、今日の夜は覚悟してね!」


 「俺の下に帰ってくるなら、それでいい。……ミキ! お前は俺の物だ! だから離さないからな!! 絶対にだ!!!」


 「うん!/// 私も絶対に離れないから!!//////」


 「そこでラブラブしてないで、早く倒してよミキちゃん! シロウが一人で頑張ってるんだからー!!」


 「ごめーん!」



 そんなやりとりをわざと何もしないで見守っていたミク達。彼女達が動けばすぐに殺せたと思われるが、敢えて動かなかったのには理由がある。


 一つ目は動いたとしても、ここで止めを刺せるか分からない事。身代わりだったりを使っていて、本当にダンジョンマスターか分からないのだ。


 二つ目は腕が翼の女。あれがどれほどの強さか分からないのと、あれが居る所為で確実性が下がってしまう。


 現にミキが攻撃しようとすると【風魔法】で吹き飛ばしていた。どんな能力を持っているかイマイチ分からないのだ。


 確実性を期す為、ギリギリまで様子見に徹していたミク達。結果としてエイジとミキがいい雰囲気なのだから、様子見で正解だったと言えるだろう。


 そして愛に生きる乙女は強かった。今までなら踏み込めなかったグレーターオーガに対し、踏み込んで【岩落とし】を放ち、足の半分を切り裂いたのだ。


 その一撃と自重で足が千切れたグレーターオーガは地面に倒れてしまい、頭部に集中攻撃を受けて殺された。実に見事な連携攻撃であったが、明らかに今までとは違い【岩落とし】の威力が上がっている。


 愛ゆえの一撃は重かったのだろうが、エイジへの愛も一段と重くなった。


 頑張れエイジ、負けるなエイジ。【超速回復】があっても腎虚じんきょに気をつけろ!。


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