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0177・醜悪な人物




 ここはダンジョン最奥。ダンジョンマスターの男が机の前のイスに腰掛け、机の上の映像をジッと見ながら何かを食べている。それはダンジョンの魔力を使って生み出したポテチであり、それをボリボリと食べながらジッと映像を見る背の低いデブ。


 その足下というか股座またぐらでは、腕が翼となっている女の頭が前後している。男が「うっ」と声を出すと女の顔が止まり、ある程度経つと「ジュルジュル」という音が響いた後に喉が動くが、男がそれを気にした様子は無い。


 そんな男は目の前の映像を喰い入るように見ている。



 「ふひひひひ……。いつになったらここまで来るかな? あの一行、何だかんだと言ってここまで来そうなんだよねー。ひひひひ……ここまで来たら僕がいっぱい使ってあげるよー、星川のお嬢さんと美女さん達?」



 この醜悪な男こそが、このダンジョンのダンジョンマスターであり、かつてトロッティア王国の西にあるハデノン王国で召喚された者である。そんな男のステータスはこういうものだ。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 <西条さいじょう 董二とうじ


 種族・人間族

 性別・男

 年齢・28

 【スキル】・ダンジョンマスター・誘惑の魔眼・支配の刻印・簡易調査



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 非常に犯罪的なスキルばかりを所持している男である。【誘惑の魔眼】で魅了した相手を【支配の刻印】で支配するのだが、【支配の刻印】というスキルは深い魅了状態でないと成功しない。なので、好き勝手に支配出来るスキルではないのが救いだ。


 【ダンジョンマスター】のスキルを持つ所為で、この男から寿命は無くなっている。ダンジョンマスターはダンジョンコアと命運を共にする為、寿命というものからは解放されるのだ。代わりにダンジョンコアを破壊されたら死ぬ。


 この男はそれを利用し、”40年”前からひっそりと生きてきた。元々から重度のオタクであったこの男は、召喚直後に腹が痛いとトイレに行き、そこでメイドを支配して王都から脱出する。


 【簡易調査】というのは自分と他者の所有スキルなどが分かるものだ。自分のものなら全て分かるのだが、他人のものだと殆ど分からない。とはいえ、この男にとっては自分のスキルが分かれば十分だった。


 その後は支配したメイドと共にトロッティア王国に移動し各地を転々。裏組織の人員を支配して狙われたりなどしながら失敗を重ね、現在の場所にダンジョンを構築した。


 元々この場所の近くには町など無かったのだが、この男のダンジョンを目当てにして、いつの間にか町が出来てしまう。最初は腹を立てたものの、都合良く支配できる女が来るからか溜飲を下げ、今の今まで生きてきている。


 この男の名字が示す<西条>。実は星川家の宗家であり、この男はミキの知り合いでもある。同時にミキが男嫌いになった切っ掛けの一人だ。


 エイジが大怪我をしてしまった際、ミキに対し「星川家のお嬢様を守れて本望だろう」と言ったのはコイツである。本当に碌でもない男であるのがよく分かるが、こういうクズほど上手く世の中を渡るもので、今も悪事に手を染め続けている。


 この男はずっとミキを自分の物にしようと画策していたが、本来のヤマト皇国ではそれが実家の者にバレて密かに処分された。つまり、生き残っているのは複製のダンジョンマスターだけなのだ。



 「ふふふ……すぐにでもその邪魔な男どもをブチ殺したいんだけど、生憎と戦闘用のスキルは無いんだよ。だから罠に嵌めたいんだけど、せっかくだから顔を見せてから支配しよう。支配したら人形のようにな、ん?」



 その時ダンジョンマスターの部屋に誰かが入ってくる。ダンジョンマスターの男が振り向くと、そこに立っていたのは冒険者の男を貪っていた蛇女族ラミアーの女だった。女の腹にはハートマークのような模様が浮き出ている。



 「おっ!? ようやく支配の刻印が定着したか。いちいち手間をかけさせやがって! お前の所為で人形が四体も減ったんだぞ。中にはお気に入りの人形もあったっていうのに!! コイツと交代してさっさと始めろ!」



 股座またぐらで顔を動かしていた女はすぐに移動し、代わりに蛇女族ラミアーの女が始める。ダンジョンマスターの男は愉悦を感じながら蛇女族ラミアーの喉を抉っていくのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 21層から先を進む一行、現在は28層の山を進んでいる。流石にこの辺りで体力的には苦しくなってきた。途中で休憩を挟んでいるものの、減った体力は簡単には戻らない。ボス戦前ならゆっくり休憩出来るが、途中では魔物に襲われるので殆ど無理である。


 ミク達も甘えさせる事は無く、自分達で出来る事だけで攻略させる気だ。そうしないと上達しないのと、そうしなければミク達が居なくなった後で困る事になる。それもあって、手出しはしていない。決して楽をしている訳ではないのだ。



 「そう言われると、むしろ疑ってしまいますけど? まあ、オレ達よりも遥かに体力があるでしょうけど。それでも、今のオレ達だと30層のボスで限界ですね。流石にエイジ以外、これ以上は無理です」


 「仕方ないね、それならコレを飲んで頑張ってもらおうか。心配しなくても、いつもの半分で体力回復効果は出るよ。そしてミキとサエも飲もうか?」



 ミクが取り出したのは精力剤。何もここで始める訳ではない。精力剤には体力回復作用もあるのだ。男が飲んでも女が飲んでも色々大変だが、量を少なくすれば十分体力回復薬として使える。


 ミキ達は色々と悩んだものの、最終的には少し飲む事にした。もちろんエイジは飲まない、というか飲む必要が無い。歩く毎に回復し続けているエイジは、疲れながら元気になるを繰り返している。


 それがこの一ヶ月あったので、ミキ達とは比べ物にならない程の体力になっていたりする。筋力も結構付いてきて、体がガッシリしてきた高身長のイケメン。うん、そりゃ色目も使われるだろう。むしろ当然である。


 30層まで到達した一行は、ボス戦前の扉で休憩中だ。食べ物を食べたり、簡易トイレのようにした所で排泄を済ませる。そうやって準備をしつつ、グレーターオーガをどう倒すか確認中だ。



 「やっぱりエイジの盾が要だからなー。何としてもエイジには流してもらわないと。グレーターオーガになると【爆音衝撃サウンドショック】も【閃光フラッシュ】も効かないからなぁ」


 「もはや自力が全ての世界になるからなあ。まさか気絶も目が潰れもしないとは思わなかったよ。どんな目や耳をしてるんだと思うも、それが魔物だって言われたらそこで終わる話だしなー」


 「弱らせる事が出来ないから、真っ向勝負しかないかー。正直に言って、体の小さい二本足が弱いっていうのがよく分かるよね。人間がここまで弱いとは思わなかったよー」


 「とにかくエイジに体勢を崩して貰って、私達は足を攻撃。そうやって地道に攻撃しないと倒せない。身長が3メートル近い相手の首なんて剣じゃ狙えないし、何より皮膚が硬すぎる」


 「オーガの皮膚って硬い癖にやたらに弾力があるんだよな。その所為で打撃も碌に効かないし、刺突もさほど効かない。結局はミキの剣に頼るしかないし、後は魔法なんだと思うけど……」


 「駄目だな。グレータークラスだからか碌に効かない。もっと強力な魔法なら効くのかもしれないけど、今のオレじゃ使えないし、使ったところで魔力が残るか不明。最悪、一発で倒れるかも」


 「やっぱり駄目だな。戦闘中に動けないと殺されるしかなくなる。そのうえグレータークラスじゃ見逃してくれない。前回と同じように地道に戦うしかないな」



 どうやら作戦が決まったようだ。覚悟を決めたエイジ達はグレーターオーガの待つボス部屋へと踏み込んでいく。


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