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0174・修行の日々と蛇女族(ラミアー)




 修行を開始して十日ほどが過ぎた。それなりに体力がついてきたエイジはまだしも、やはり他の三人が遅い。仕方がないのかもしれないが、【超速回復】はやはり極めて優秀なスキルと言えるだろう。未だに太っているが。


 それでも顎のラインは少しシャープになってきただろうか? それ以外にも多少の変化はしてきている。それはともかくとして、戦闘技術としてはまだまだと言わざるを得ない。


 エイジに関してはミクが相手をしたりヴァルが相手をしたりしているが、やはり上手くいなせないらしく、押し込まれたりする事がよくある。もちろん意図的に難しくしているのだが、盾士は咄嗟の判断が要求されるので、出来なければ仲間を危険に晒す。


 ミキに関しては、ようやく基本が出来てきたかな? というところだ。下半身が振り回される事も少なくなり、まともに剣が振れるようになってきた。とはいえ、こちらも咄嗟の判断はまだまだ甘い。突っ込まなければいけない時に躊躇するのは駄目だろう。


 サエに関しては、大分弓の命中力が上がってきた。狙った所にあたると楽しいのか、四人の中で一番楽しんで訓練をしている。もちろん走りこみの時には一番文句を言うのだが。それでも一番体力が無いので容赦はされない。既にエイジ以下である。


 シロウはとにかく素早く魔法を使う訓練だ。これをし続けるしか上達する道は無い。ひたすらに素早く使う練習をし、咄嗟の瞬間に魔法を放てるようにする。簡単な魔法でも、咄嗟に使える事で助かる事は多い。走りこみと並行しての練習だ。


 二日訓練をし、その後ダンジョンに行き実戦訓練。それを繰り返しながら、少しずつ殺し合いそのものに慣れさせていく。自分達でも上達しているのが分かるのだろう、その部分では四人とも楽しそうなのは変わらない。召喚直後とは大きく違う。



 「まあ、流石にあの頃と同じままでは居られませんよ。今は彼女も居ますし、盾を使って皆を守らなければいけない立場ですしね。ただ、その盾の扱いがビックリするほど難しいんですけど……」


 「うん、私も///。やっぱり彼氏エイジが居ると、何としても生き残らなきゃって思えるから不思議。召喚された当初とは自分の心だけじゃなく、見えている物も違う気がしてくるよ」


 「何か微妙にニュアンスが違ってた気がするけど、私も同じかなー。やっぱり彼氏が居ると違うよね。何としても生き残って、夜にいっぱいシてもらわなきゃ! って思うしー」


 「それって普通は男の発想じゃね? いや、女の子も変わらないのかな? まあ、いいけど。オレとしてはとにかく魔法を上手く使うって事しか考えられませんね。駄目だと一気に押し込まれたりするんで、魔法使いがこんなに大変だとは思いませんでしたよ」


 「ああ、それはなー。俺達みたいに生活で使えればいいのと、戦闘中の魔法が大事なシロウは明らかに違ってる。戦闘中に魔法を使おうとした事あるけど、思っている以上に成功しなくてビックリしたよ」


 「戦闘をしていると、戦闘に集中している所為で魔法に全く集中できない。むしろシロウはよく出来るって私も思う。正直に言って、戦闘中と普段があそこまで違うとは思わなかった。アレは本当に大変」


 「私はちょこちょこと使えるけど、それは後ろに居るからで、前で魔物と戦いながらは無理だと思う。シロウは本当に凄いよ。流石は私の彼氏!」


 「そこまで褒められると裏を気にするけどな。それよりも、目の前の敵と魔法に集中しなきゃいけない所為で、代わりに戦闘中の判断とか碌に出来ないんだよオレ。サエの言葉が無いと、どうなってるか分からないくらいだし」


 「そこは仕方ないだろうな。何事も慣れだ。むしろ召喚される前は戦闘などした事が無かったお前達が、一月も経たずにここまで慣れている事の方が驚きだからな。普通の冒険者に比べれば早いペースだろう」


 「だったら少しぐらいペースを落としませんか? オレ達なんだかんだと言って、結構頑張ってますよ?」


 「ペースを落とした結果、肝心な時に間に合わずに死ぬ。そんな事もあるけど、それでもいいなら落とそうか? 別に私達はどっちでもいいよ?」


 「…………今のままでお願いします」



 夕食時のそんな会話も終え、宿の部屋へと戻る。ミクが奪ってきたお金がある為、この生活を半年続けても問題無い。とはいえ、そんな事をしている暇は無いし、次のダンジョンもあるので訓練を進ませたい。


 未だにダンジョンマスターを殺していないのは、一度でも殺すと他のダンジョンマスターに警戒されるからだ。出来れば初めてダンジョンマスターを殺す際には、四人をある程度のレベルまで引き上げておきたい。


 でないと殺される可能性が高くなってしまう。特にミク達と居るとダンジョンマスターに敵視される可能性が高い。それでも身を守れる程度にはしたいが、そこまでになれるだろうか? 今はまだ難しそうである。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 あれから一月経った。エイジ達も大分上達し、今では普通にビッグキャンサーを狩れている。と言うより、とっくにその層を超えている。訓練をしながらダンジョンアタックを繰り返した結果、30層ボスまでを四人だけで撃破した。


 11層~14層が海の地形。15~19層が平原の地形で、20層のボスはハイオーク五体だった。21層~24層は森の地形で25~29層が山の地形。そして30層ボスはグレーターオーガ一体だった。


 道中の罠を使ってサエに【罠察知】を鍛えさせ、その護衛のミキにも【気配察知】を鍛えさせた。その御蔭か、2人とも気配や罠の把握はかなり出来る。それでもミクやヴァルに指摘される事もあるが、相当に高いレベルで熟せるようになった。


 やはり才能を開花させられている影響なんだろう、四人は思っている以上に強くなる才能があったらしい。召喚当初とは別人な程に精悍な顔つきにもなったが、そこまでになった所為で問題も浮上した。それと、他の召喚者の末路も聞こえてきた。


 それは一行が夕食をとっている時の事、近くから話し声として耳に入る。



 「おい、知ってるか? 王都の方で珍しい種族が処刑されたらしいぞ? 何でも<蛇女族ラミアー>らしいんだけど、男を魅了して金を巻き上げていたんだと。本人が言うには男も良い思いしてたらしいけど、操られてるんじゃなあ……」


 「そもそも操られている間の事なんて覚えてもいないしな。本当に良い思いをしたのかも定かじゃねえし、蛇女族ラミアーって確か、男の精を搾り取って強くなるんじゃなかったか? だとしたら自分の為だろうが」


 「だよな。まあ、大した強さじゃなかったらしく、とっ捕まって処刑されたんだから安心だけどな。それにしても王都って所は怖いねえ。【魅了】されて金を奪われるなんてシャレにならねえぜ」



 それを聞いた四人が何とも言えない顔をしながら、ミク達に話しかけてきた。



 「ローネさんが言っていた通りの末路っぽいですけど、やっぱりスキルの悪用って重罪なんですね。まあ、当たり前と言えば当たり前ですけども。それにしても、あの時の蛇女族ラミアーの女性が死ぬなんて……」


 「さて、それは分からないよ。エイジは蛇女族ラミアーと聞いたからそう思ったんだろうけど、別人の可能性もあるからね? 少なくとも、噂が聞こえてくるまでは生きてたんだ。なのに、急に処刑されるようなポカをすると思う?」


 「………じゃあ、ミクさんは蛇女族ラミアーではあるけど、別の人だと思っている……と」



 どうやらミクには思うところがあるらしい。


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