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0162・変わったミキとアブ村に到着




 次の日の朝、食堂で朝食をとったら早速出発する。東へと進みつつ魔法の練習や魔物との戦闘訓練など、幅広く練習させていく。特にエイジはとにかく動かし続ける。重い荷物を背負わせての徒歩だ。更に魔物を街道脇に捨てる事もさせる。


 魔剣ブレインホワイトを背負わせたりしているので、無駄に重量が多い。もちろん緊急時は使っていいと言ってあるのでエイジとしては得ではあるのだが、それにしても剣一本でも多少の重量は増える。そして、その重量でも厳しいのがエイジだ。


 相変わらず「ひーひー」言っているが、それでも少し前に比べれば体力はついてきた。そこまで時間は経ってないものの、エイジみたいな碌に運動をしていない者の体力がついてくるんだから、流石は【超速回復】である。


 合間に休憩をとりつつ歩き、昼食時は座って食べつつ休憩。再び歩き始める。エイジだけじゃなく、他の三人も多少は体力がついてきただろうか? 最初からマシだったのはシロウぐらいで、ミキもサエも体力は無い方だった。



 「オレ運動してたんですけど、それでもマシですか……。まあ、生き死にが懸かっている人達からすれば体力が無いのは仕方ないんですかね? 流石に体力が無きゃ死ぬっていう生活ではなかったですし」


 「普通……そんな、生活はっ……しない、と思う。はぁ、はぁ……。背中の剣が重いのと、無駄な鉄の鎧が重い。こ、この鉄の鎧……何処から持って、きたん……ですか?」


 「それ? それは本体空間から。大分前に冒険者から奪った物だったと思う。手を出してきたから殺した奴等の持ち物だね。まあ、誰が持ってたかなんてどうでもいいし、大事なのはエイジの負荷になる事だよ」


 「とりあえずの重りだな。鉄の鎧はお前が言った通り無駄な物だ。戦争に行く兵士なら役に立たん事もないが、どの道スキルを使われれば壊される程度の物だ。もしくはメイスでブッ叩かれても壊れる」


 「後は魔法であっさり鉄板になる。特に【火魔法】を使われると、下に何を着ていても肉を焦がす鉄板と化す。正直に言って、そこまで役に立つ防具じゃない。抗魔力の高い革鎧の方が結果としてマシ。鉄を使うなら盾が一番良い」


 「抗魔力……いわゆる魔法に対する防御力ですか? 鉄は魔法を通さないなんて良く聞きますけど、そこんところはどうなんです?」


 「鉄は魔力を通しにくい。これは間違い無い。ただし魔鉄は逆に通しやすいし、竜鉄はもっと通しやすい。それに、魔力を通しにくいだけで魔法を通しにくい訳じゃない。魔法という”現象”になると変わる」


 「魔力と魔法は違うという事ですか? 魔法は現象……ああ、熱は通すって事ですね。魔力は防げても熱が防げる訳じゃない。だから鉄板になってしまう」


 「そう。だから抗魔力が高く、熱を通しにくい素材じゃないと【火魔法】は防げない。そして、そんなものを鎧に求める事が間違い。だから盾となる。盾なら熱くなれば手を離せば済む」


 「確かにそうだねー。いきなり鎧を脱ぐなんて難しいし、戦闘中にそもそも脱げるの? って思うもん。脱げないまま皮膚が焦げていくとか、ちょっとシャレにならないよー」


 「だからこそ冒険者は革鎧が常識。そしてマントとかコートを使う。ここに抗魔力の高い物を身に着ければ、高い防御力と抗魔力を両立出来る。それにマントなどは旅をする冒険者の必需品」


 「雨風を凌げて、寝るときの寝具替わりにもなる。優秀な冒険者ほど良いマントやコートを身に着けているな。私達には必要無いが」


 「何で必要無いんですか? あった方が良いんですよね?」


 「それはな、マントを着て寝ると地面の振動が分かり辛い。咄嗟のときに動けん。濡れると重いし、掴まれて引っ張られると倒れる。色々な理由から、私達はマントを必要としない」


 「でも、初心者の内は持っておくのも間違いじゃない。後ろからの攻撃を防ぐ事も出来る。ただ、慣れてないと重くて動き難いし、宿で寝られるなら邪魔な荷物になる。実用的なマントは思っているより重い」


 「「「「へー……」」」」



 そんな話をしながらアブ村に到着した。夕方ではない今の内に宿をとり、上手く一人部屋を2つと二人部屋を1つとれた。今回はミク達が二人部屋らしい。何というか、サエが対抗心を燃やしている感じだ。


 元々恋人同士だったがミキの男嫌いの所為で言い出せず、やっと言い出せるようになったらミキは重い女になっていた。そのうえ重いからか自重しない。吹っ切れたあの日から、「エイジ大好き!」というオーラを隠しもしなくなっている。


 常にエイジの近くに居るし、買っていた布でエイジの汗を拭いたり、持っていた革の水筒をエイジに手渡したりもしていた。その後に自分も飲んで「間接キス」とか言い出す始末だ。サエが対抗心を燃やすのも仕方ない。


 シロウは爽やかに笑っているように見えて、口元が引き攣っているが諦めるしかないだろう。こういう時の女性は止められないものである。受け入れるしかない。


 ミク達にとっては微笑ましい程度でしかない為、極めてどうでもいい。なので手を差し伸べる事もせずにスルーして部屋に入る。少しゆっくりと休もうかと思ったが、今の内に竜鉄の盾と槍を作るべくネルを本体空間に移動させる。


 ビックリさせてしまったが、何故か<鍛冶の神>が来て槍を打つ事になったネル。諦めて作業をしてもらいつつ、ミクは竜鉄で簡易なナイフを作っていく。もう四人組にはキチンとした装備を渡すべきだろう。


 代わりに徹底的に扱けばいい。そう思い、キッチリとした装備を作っていく。そこまで時間も掛からずに出来上がり、ネルを再び部屋へと戻す。思いっきりジト目で見てくるので、デスホーネットのミードを渡すとあっさり機嫌が直った。


 それでいいのかと思うも、簡単には手に入らない酒であり希少性が高い。デスホーネットのハチミツ自体が滅多に手に入らない物なので当然ではあるのだが。


 それはさておき、そろそろ夕食に行こうと思うもミクが途中で止まる。その行動にローネとネルは訝しんだが、ミクはハッキリと告げた。



 「両方の部屋が取り込み中なんだけど、どうする? 随分盛り上がってるみたいなんだよねー……。ここで止めると文句を言われそうな気もするし、困ったねえ」


 「んー………面倒だ、ドアをノックしてやればいい。それで止まるならば、まだ冷静だろう。止まらないならば放っておくべきだ。男と女がヤっている以上、止まらんとは思うがな」


 「恋人同士だし、仲が良い事はとてもいい事。ヤりたいなら好きにヤらせればいい。一食抜いたところで、若いんだから問題無い」



 そう決めてノックするも、双方の部屋からスルーされたのでミク達だけで食事に行く。食堂に行って夕食を注文し雑談しながら待っていると、エイジ達が慌てたようにやってきた。


 四人も夕食を注文してすぐに席に座り、ホッと一息吐いたようだ。……エイジとシロウが。


 ちなみに女性二人は若干恨めしそうな顔でミク達を見ている。おそらくは盛り上がっていたのだろうが、ミク達も声を掛けないという選択肢はとれない。一応は声を掛けておかないと、後で面倒な事を言ってきかねないからだ。



 「そこまでヤりたかったのなら、食事に来ずに部屋に篭もっていれば良かっただろう。私達はどっちでも良かったのだ。あくまでも”一応”声を掛けただけなのだからな。私だって良いところで水を差される腹立たしさは理解している。が、それとこれとは別だ」



 そう言うと理解したのか、二人は不満そうな顔を引っ込めた。


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