0161・ゼノイセン王国の地理情報
昼になったので【超位清潔】を使ってから町へと戻る。エイジの練習量に、門番も顔を引き攣らせていたがスルーし、食堂へ行って昼食を頼む。午後からも町の外に出て訓練し、夕方になったので再び綺麗にしてから町に戻る。
門番が恐怖した顔でローネを見ているが無視して町に入り、食堂に行ってネルとヴァルの分も合わせて夕食を注文。待っているとヴァルとネルが来たので、二人は椅子に座って話を始めた。
『今日一日調べて色々分かった。まず、この国は四角い国土だ。今の俺達は一番西のピータ町に居る。そしてここから東に村を三つ行くと町があり、そこが第一のダンジョンのある町、フロットンだ』
「間の村はアブ村、イゼ村、ムオ村。そしてフロットン町。その後はデフ村、ハゼ村、ソロト町、ヤーデ町。そこから北にウェク村、パッテ町、そして王都イーセン。この近くに二つ目のダンジョンがある」
「とりあえず、まずはフロットン町という所に行かなければならんな。それはそうと、ここからは訓練をしながら進んで行くから覚悟しろ。特にエイジ、お前は早急に痩せさせんと戦力にならん。本来なら盾士はパーティーの要だぞ」
「動く度に「ひーひー」言ってるようじゃねえ。流石に盾士としては失格としか言えない。苦しくても相手に悟られないようにしなきゃいけないのに、あっさり「ひーひー」言ってたら、体力が無いのがバレバレじゃない」
「うっ………」
「まあ、確かにゲームでもタンクは大事なポジションだからなー。タンクが前で防いでくれないと、後ろのアタッカーやメイジが攻撃できないし。何より殺されるからなあ……」
「庇うだけじゃなく一番前で踏ん張らなきゃいけない。そしてその為に必要なスキルを持ってるんだから、諦めるしかない。次に大変なのはサエ。指示役の指示間違いで全滅はあり得る事。責任は重大」
「うー………」
「そう考えるとアタッカーとメイジは楽だなぁ……と思ったけど、ダメージディーラーなんだから早く敵を倒さなきゃいけないのか。それはそれで大変だし、オレは魔法だからフレンドリーファイアが怖いな」
「フレン……まぁいいが、多分味方に当てる事だろう。それが一番パーティーが解散する理由だな。味方に攻撃を当ててしまったが為に全滅、などもあり得るから注意しろ。とはいえミキも楽ではないがな」
そんな話の最中に食事が終わったので、朝のうちにとっておいた三人部屋に移動する。ちなみにエイジとミキは一人部屋”が”良いらしい。どちらが強く言ったかは考えなくても分かるだろう。ドス黒い方である。
「ミキは【勇剣術】を使い熟すのと、【覇気】を上手く使えるようにならないとね。使う場合とそうでない場合。ちゃんと分けて使えるようにならないと戦っていけない。人間種はすぐに魔力や闘気が無くなるから」
「ミクさんは無くならないような言い方だが、無くならないのだろうな。無尽蔵にある訳ではないのだろうが、それに近いほど持っている? でも、そこまでだと危険視されるような?」
「ミクの魔力と闘気の量は非常に多いが、それはほんの一部だ。本体は更に莫大で、回復力も異常と言っていい。それをスキルも無しに能力として所持している。一度見たものはあっさり覚えるし、聞いた事も忘れない。本当に滅茶苦茶だぞ?」
「「「「………」」」」
「そもそも私は必要のない事を選別して忘れてるからね。自分から記憶に残す必要の無いものを消去してる感じかな? それと自分の肉の全部で、思考も、消化も、吸収も、五感もあって動く事も出来るんだよ」
「「「「………」」」」
「あまりにもバケモノ過ぎる。そもそも人間の何百倍の思考能力してるんだ? その時点で圧倒的すぎる。そのうえ多分だけど、五感だって人間より遥かに上だ。それに筋力がシャレにならないし、知識量も……」
「いやいや、更に毒とか薬とか作り放題だぜ? あまりにも最強無敵すぎる。神様には勝てないとか言ってたけど、オレ達のような人間じゃ、そんな高レベルな事は分かんないしさ。十分に無敵でしょうよ」
そんな話をしていると、ミキが瓢箪を出してきた。どうも、この辺りでは瓢箪が採れるらしく、普通に水筒として使われているそうだ。
その小さな瓢箪の中に媚薬を入れてほしいらしい。昨日買ったのだが、その後のゴタゴタで忘れていたそうだ。
「はいはーい、サエも入れてくださいー。このお薬使うと凄いんで、今日は使って楽しみたいですー」
「別に良いんだけど、依存しないようにしなよ? 私だってローネとネルに使ったりは殆どしてないからね。変に薬に依存ってなると困るしさ、私達がいつまでも居る訳じゃないよ? この星が終わったら次の星に連れて行かれるし」
「「「「えっ!?」」」」
「私達が受けた神命は、クズどもの始末とダンジョンマスターの抹殺だ。クズどもを殺すのは変わらないが、この星には【ダンジョンマスター】というスキルを持つ奴が居るそうだ。この星特有のスキルらしい」
「それを持つ奴は、例外無くクズだと言われてる。運営に失敗した奴はともかく、成功している奴は例外無く犯罪者。呼び出した魔物を犯すクズまで居るらしい」
「「「「うわぁ……」」」」
流石に四人も顔を顰めている。呼び出した魔物を犯す。そのうえ男も女も関係無くそれをヤるという異常性。【ダンジョンマスター】というスキルを持つ奴はトチ狂っているらしいと理解した四人。
「ラノベにもダンジョンマスターを主人公にした作品とかありますけど、確かに犯罪に使えそうなの多いですしね。何故か殆どの主人公は悪用しませんけど……。それを現実で使えるってなれば、そりゃ悪用するかー」
「だな。幾らなんでも呼び出した魔物を犯すとか、正気とは思えないぜ。オレもダンジョンマスターが主人公の作品で好きなヤツとかあるけどさぁ。ちょっと見方が変わるなー」
「その知識は邪魔になる事も多いけど、私達としても初めてなんだよね、【ダンジョンマスター】のスキルって。そういう創作物ではダンジョンマスターってどんな事してるの?」
「魔物を召喚して、ダンジョンに入ってくる奴等を倒す。罠を設置したりして侵入者を殺す。こういった辺りが定番ですかね? 後は宝箱とかを設置して、高く売れる物や良い物を手に入れさせる事で、他の連中をダンジョンに誘うって感じでしょうか?」
「それ以外にも果物とか生らせたり、美味い肉の魔物とかを呼び出したりとかして誘い込むってのもあるな。他にはサキュバスとインキュバスを呼んで、男も女も堕とすとか。後は奴隷にして売り払ったりとかか?」
「そういう作品もあったなぁ……ダンジョン同士で争ったりとか、相手のダンジョンに魔物を攻め込ませるとか。まあ、ダンジョンから魔物が出られなきゃ意味無いんですけどね」
「ふーん……。まあ、どのみち何があろうが私とヴァルだけで攻略出来そうだね。この分体が殺される事も無さそうだし、特に問題は無いか。後はローネとネルだけど、わざわざ連れて行く必要があるのかどうか……」
「ダンジョンのある町に行ってから決めればいい。ダンジョンの浅い層なら問題無いなら、四人の実戦をそこにした方が良いかもしれない。今は全く戦えない訳ではないし、ギルドに行けば浅い層の地図か情報くらいある筈」
「そうだね、そうしよっか」
話し合いはここで終わり、女子二人は男子の腕を抱いて部屋へ引っ張って連れて行く。そしてローネとネルもいそいそと準備を始める。面倒になったミクとヴァルは男性形態になり、アレの表面から媚薬を滲み出して準備。
その状態で相手を挟み、さっさと満足させて寝かせていく。綺麗にしたら分体を停止させ、最低限の監視だけにして朝まで暇を潰すのだった。




