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0158・<穴掘り猿>とオーク




 ヨフレ町から東へと歩いて行く。途中に出てくるゴブリンは四人に始末させ、魔石などを抉らせる。ゴブリン自体は食べられない訳ではないが、好まれない程には美味しくない。なので持って行っても大した額にはならないし、大半が魔石代だ。


 だから魔石だけ抜き出して放置しても構わない。代わりに街道から少し離れた所に、死体を放り投げておく必要はあるが……。街道上に放置すると、他の魔物が群がってきてしまうので褒められた事ではない。


 一行の場合、周りに人が居ないとミクかヴァルが血を吸い取るので軽くて運びやすくなる。ちなみに運んでいるのは毎回エイジだ。痩せるのと筋力を付けさせる為にそうしている。【超速回復】の効果もあるのですぐに体力も回復するし、正にうってつけだ。


 四人はそれなりにはゴブリンと戦う事に慣れてきたらしい。とはいえ頭の悪い二足歩行はそこまで強くもない。コボルトは別枠にしても、オークもオーガも筋力や耐久力が高いだけで、そこまで厄介な魔物ではなかったりする。



 「例えばだけど足の速さなら圧倒的に四つ足なんだよ。更に咬筋力なら狼か熊系だし、厭らしさなら蛇だね。あいつらは毒と締める筋力は凄く高い。結局、二足歩行って頭が悪いと弱いんだ。人間種は頭が良いからマシなだけ」


 「それでもマシっすか……。まあ、狼の咬む力とか、熊のパワーと比べたら人間は弱いですけどね。それに毒なんか喰らったら多分あっと言う間に死ぬでしょうし」


 「それだけではないし、私達の元居た星で怖れられていたのは<デスホーネット>だ。あの蜂は即死毒とも呼ばれる劇毒を持っていたからな。刺されたら死ぬ。……まあ、ミクはその<デスホーネット>を貪り喰って毒を生成できるようになっていたが」


 「「「「………」」」」


 「あの毒ってさ、思っているより使い難いんだよね。体がドス黒くなって死んでいくし、それだと何かの毒で死んだって丸分かりじゃない。流石にそんな毒をホイホイ使う訳にもいかないよ。そういえば話は変わるけど、ミキの心のドス黒いのはマシになったね」


 「「「は?」」」


 「ん? サエは反応してないって事は、気付いてた? ……ミキが気付いてなかったのは知ってたけど、近くに居たサエは気付いてたか。まあ、気付いてても口には出せないよね、アレは……」


 「ちなみにだけど、召喚されて割とすぐに気付いてたよ私達は。私は肉塊だから、人間種の心には鈍感というか分からない事も多いんだけど、負の感情に関してはとても分かりやすいからね。そっちには敏感なんだ」


 「………ふぅ。もう大丈夫って分かったから言ってるんですし、良いんですけど。それでも口に出す必要ってありましたか?」


 「本当に怒ると語尾が伸びんのだな? ま、それはともかく、隠していても暴走された時に困るだけだ。そもそも今まで黙っていたのは、ミキの心の中のドス黒いものが、どの方向を向くか分からなかったからでしかない」


 「私達みたいな千年を超えて生きる者を舐めないでほしい。その辺りの機微は良く知っている。ミキの中のドス黒いものは、今はエイジへの愛情と執着に替わっている。エイジは後ろからグサッとされないか注意しなきゃいけないけど、それぐらいでしかない」


 「そうだ。どうせエイジはモテんのだから丁度良い。ミキの執着は強いからな、何処までもエイジを追いかけるぞ。多分だが子供の頃からの鬱屈した感情の殆どが、エイジへの愛情と執着に替わっている。ま、それだけ重いのは諦めろ」


 「はあ……。まあ、別にグサッとされる気もありませんし、そもそも自分がモテないのは自分が一番理解してますけどね。最初の頃はミキも御堂さんも俺から引いてましたし。どう見ても汗臭そうですから、俺」


 「エイジはああいう視線には慣れてるからな。何より痩せない本人が悪いんだし。だからスポーツしろって言ってるのに、帰宅部を続けてたんだから、間違いなくエイジの自業自得だ」


 「それは分かってるよ。だから特に何も言ってないじゃん。それに今はその分頑張って動いてるし。まあ、これはどっちかって言うと【超速回復】があるからだけど……」



 ミキは何とも言えない顔をしていたが、サエに言われて自分の中にそういうものがあったと何となくは理解したようだ。本人の自覚が無いから周囲は警戒していたのだが、今はミク達が言った通り愛情と執着になっているので問題無い。


 そんな話をしながらもゴブリンを倒していたら、林の奥からオークが走って出てきた。何故か泣いているように見えるのは気のせいだろうか? そう思っていると、オークの後ろから猿の魔物が飛び出してきた。



 「オークが猿に追い駆けられてる? オーク肉が食べたいのかな……その割にはオークが涙目で逃げてる気がするけど。あれってどういう事だろう?」


 『アレは<穴掘り猿>じゃないか。成る程……オークが必死になって逃げる筈だ。魔物としては<穴掘り猿>ことクレイジーモンキーの方が上だからな。オーク一体ではとてもじゃないが勝てん』


 「あー、クレイジーモンキーに追い駆けられるとは……御愁傷様。アレは満足する事を知らない。ひたすらにお尻の穴を掘り続ける。それ故に<穴掘り猿>」


 「「………」」



 男子高校生二人が遠い目をしているが、これが自然の摂理である。女を犯す魔物が居れば、男を犯す魔物もいる。それが”自然”というものなのだから、諦めるしかない。それに……。



 「二人は余裕を持ってるけど、クレイジーモンキーは雄ならどんな種族でも掘るよ? 例え人間種でもね。そもそも前に見たのは盗賊のアジトだったし。盗賊の多くがケツを掘られて悦んでたのを目撃したよ」


 「「うげぇ……」」


 「そ、それは流石に私も見たくないな。エイジが掘られるなんて当然ダメだし、といってシロウならいい訳でもないし。アレはいったいどうしたらいいんだろう?」


 「あのまま無視するのが一番だろう。オークもクレイジーモンキーもこちらに気付いていないしな……と言っていたら気付いたらしい。必死にこっちにって……おぉ、アレは酷い」



 面倒になったのか【落穴】の魔法を使い、オークの足下に小さな穴を作ったミク。そこに足を踏み込んでしまい転がるオーク。哀れ、悲しいオークの悲鳴が響き渡る。どうやら早速ヤられたらしい。


 せっかくなので近付いたミクは、両方の魔物に精力剤を触手で注入し、更に発情の魔剣で二度ほど切ってから離れる。すると、早速効果が現れたようだ。



 「ウホゥ!? ウホッ!! ウホッ!! ウホーーーーーッ!!!!」


 「ブヒィ!? ブヒッ! ブヒッ! ブヒーーーーッ!! ………ブヒッ///」


 「「「「「「………」」」」」」


 「思った通りの結果かぁ……。つまんないけど仕方ないね。オークも悦んでるみたいだし、放っておいて先に進もう。多分あのオークはもう女性を襲わないと思うし」


 『また適当な事をして……。主は適当な実験をして放置するのは止めた方がいいぞ? 新たにケツを掘られて悦ぶオークが誕生したらどうするんだ。魔物の進化は早いんだし、あり得ない訳じゃないんだぞ?』


 「別に良いじゃない。生物の多様性ってヤツだよ。そもそも<穴掘り猿>が居る時点で今さらな話でしかないし。あいつらって何故か他種族の雄と同族の雌にしか興味持たないんだよねぇ。ホント変わってる」


 『まあ、それはな』



 ミクとヴァルは平然としているが、残りの六人が全員同じ感情でいるのは珍しい事である。それぞれが何とも言えない顔をしながら、遠くに見えている国境の砦に歩いて行くのだった。


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