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0157・美輝のドス黒い愛




 好きな男性と二人で密室にいる。宿の部屋なんだけど、これから”する”事に期待し興奮しているのをハッキリと自覚してしまう。自分はこんなにもイヤらしい人間だっただろうか? 最近、自分の事が分からなくなってしまった。


 確かに初めての時は凄い効果の媚薬を使ったし、二度目だってそうだ。でも、それだけじゃない。気付けば無意識に影二に近寄っている自分が居て、汗の臭いを知らず知らずに嗅いでいた自分も居る。自分は匂いフェチなんだろうかと思うも、影二以外の匂いなんて興味も無い。


 影二の汗を行為の最中にコッソリ舐めていたりする自分も居る事を考えると、自分自身が変態に思えてくるから不思議だ。でも、止めろと言われて止めるかと自分に問うと……。



 「どうしたの、何か考えてるようだけど……」


 「あ、えっと、その……。影二の匂いを嗅いでいただろう? その、変態的だとは思うけども……私は影二の匂いが好き。変に思われるかもしれないけど、好きな人の匂いだから……」


 「あ、ああ。うん。その、俺からは何とも言い辛いかな……。あくまでも自分の臭いってそんなものだし、太ってるから汗もよく掻くし。なるべく【清潔クリア】で綺麗にする「それは駄目!」ぐらいしか」


 「外なら仕方ないけど、二人っきりの時は駄目!」


 「あ、はい。えーっと、それは横に置いといて……そろそろ始めよっか?」


 「あっ///。う、うん。今日も、お願いします///」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……影二は今日も素敵だった。私をいっぱい気持ち良くしてくれたし、沢山中に出してくれた。朝になればミクさんに【超位清潔アーククリア】の魔法を使われてしまうけど、これは仕方ない。私達に子供はまだ早いから。でも、いつか……とは思ってしまう。



 「……影二、今日もいっぱいありがとう。お疲れ様。まあ、【超速回復】ですぐに体力も回復すると思うけど、今日も凄く気持ち良かった///」


 「…はぁ……はぁ。そう? それなら良かった。頑張った甲斐があったよ。ほ、ほんとうに痩せなきゃなあ。はぁ、流石にこれじゃあ情けない。……ふぅ、そろそろ【清潔クリア】を使って寝ようか。流石に汚いままじゃ寝れないし」


 「あ、待って影二。私が綺麗にしてあげる///」


 「ふぉっ!?」



 ふふ、影二が気持ちよくなって悶えている。こういう顔の影二も大好き。……ああ、そうなんだな。私は影二が好き。心から愛してる。


 だからこそ匂いも好きだし、味も好き。これからは終わった後のお掃除は私がしよう。大好きな影二が凄く喜んでくれるから。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 「どうやら美輝の中のドス黒いものも、随分マシな方向に向いたみたいだな。召喚当初は危ういものだったが、影二への愛情と執着になったのならば問題無い。どうせアイツはモテんし、お似合いだろう」


 「うん。美輝の執着は思っているよりも強い。愛情と表裏一体のものだから影二から離れないと思う。ああいうタイプはむしろ勘違いに注意しなきゃいけない。でないと、妙に拗れたら影二をグサッとやるかも……」


 「そういう事もあるんだねえ。そういえば珍しく途中で止めたけど、何か心境の変化でもあったの? 私やヴァルは楽で助かるけど……」


 「いや? 単に良い気分のまま寝たかっただけだ。毎回々々、気絶するように寝るのもどうかと思ってな。それで今日はこのまま寝る事にした訳だ」


 「ん。という事で、お酒飲んでから寝るから先に寝てて。後、本体空間に貯蔵してるお酒は残ってる?」


 『ネルが結構飲んでるが、まだ半分くらいは残ってるぞ? <創造の神>が何故か大量に作物を作りだしたから何だと思っていたら、まさか主に酒作りを教えるとは思わなんだがな』



 神もそうだが、本体空間で酒作りをしていたのはネルも同じである。しかも鍛冶よりも料理よりも気合いが入っていた。それはもう魂を込めるが如く、一つ一つの作業を怖ろしいほど丹念にやっていた。<酒の神>が爆笑していたくらい丁寧にだ。


 もはや本体空間は神の娯楽スペース兼、四人の住居というレベルになってしまっている。それで本当にいいのだろうか?。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日の朝。宿の入り口で合流すると、爽やかな笑顔の美輝が居た。何かが吹っ切れたような顔をしているが、本人の中で何かあったのだろう。周りの誰も何も言わずに、食堂へと移動する。


 朝食を注文し、テーブルで待っていると昨日の歌い手がやってきた。怒っているところを見るに、昨日の男は失敗だったのだろう。



 「ああいうのも見れば分かる。具合の良い男が相手だと同伴で朝食をとる事も多いからな。ああいう体を売っている者にとって上客は特に重要なんだ。良い客には良い思いを、悪い客は適当に。それが基本となる」


 「そういうところから、碌でもない冒険者かどうかも分かる。それに、ああいう女性は吟遊詩人と同じくらい情報に精通しているから、情報源として凄く大事。場合によっては、特殊な者しか知らない情報すら持っている事がある」


 「貴族の浮気相手とか、どこぞの貴族がお忍びで来ていたとかな。場合によっては貴族の不倫相手から、子供の親まで知っている事もある。父親が違うという事すらあるのが貴族の家だからな」


 「そう。高貴な血筋と言いながら、途中で何処の誰とも分からない男の血にすり替わってる事すらある。それ程までに魔境なのが貴族の血筋。中には正統な血筋なのに、監禁されたうえ拷問されて始末されるとかもある」


 「「「「えぇ………」」」」


 「いや、貴族ってエグ過ぎないですか? 何ですかその血筋が分からないって。滅茶苦茶すぎて意味不明ですし、そんな血筋を誇られても……。いや、本当に庶民で良かった」


 「本当になぁ。オレ達の祖国がそこまで酷いとは思いたくはないけど、どこの星も似たりよったりの歴史なんだろう。そう思うと、何とも言えなくなってくるぜ。養子だと公表してる方がマシだよな」


 「確かにねー。戦国武将とかでも、どこそこの家からの養子だって書き残されるし。ああいう風に養子だって残ってる方がまだ調べられるもんねー。調べられない場合、全く分からないからどうにもならないよー」


 「まあ、何処の誰でも良いんじゃない? 私は私だし、正直に言ってもうどうでもいいかな。特に気にならないし、この星風に名前を変えても良いぐらいに思ってる。オリジナルとは違うって意味で」


 「えー……せめて名前ぐらいは残そ? 幾ら複製でも親が付けてくれたものだし、簡単に忘れたり捨てて良い物じゃないと思うよー?」


 「確かに美輝の言う通りかも。御堂さんの言う通り名前は変えなくても、カタカナに変えるとかは有りかもしれない。俺だとエイジって感じになるのかな?」


 「おー! ならオレはシロウだな。……何かこの名前の主人公ってどっかに居たような? 英霊が出てくる奴だっけ? オレは聖杯なんて要らないけどなー、欲しいヤツとかは要るんだろう。あんな中身でも」


 「いやいや、まだマシだろう? 俺なんて多分あのロボットアニメの主人公だぞ。青き流星にどうやってなるんだよ? まずロボットが無いし、そんな技術の欠片も無い。魔法技術のロボット? それも無理だな」


 「よく分からんが、さっさとメシを食え。男のお前らが待たせるとはどうなってるんだ。早く詰め込んでしまえ!」


 「「はい!!」」



 慌てて朝食を詰め込み、口をパンパンに膨らませる二人。リスみたいに膨らんでいてミキとサエが笑っている。どうやら四人ともに吹っ切ったのだろう。


 これからは本当の意味で、複製ではなく一人の個人として生きていく。そんな想いの四人を連れて、ミク達は国境に向かうのだった。


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