0015・色々な情報と意味不明な報告書
ここは道から外れた林の奥まった場所。既に何度も犯されたのか、ミクの体は汚液塗れになっていた。それでも男達の欲望は治まらないようで、行為をひたすら続けている。そんな中、気になる情報が聞こえてきた。
「ここまで良い女だと、俺達が壊した後でも高く売れるんじゃねえか? <淫蕩の宴>の連中なら、高く買い取ってくれるだろうしな」
「でしょうねえ。ここまで具合の良い女も初めてですよ。顔もさる事ながら、とんでもない体をしてますしね。ここまで男を誘う体をしている者は、早々居ませんよ」
美の女神監修の肉体なのだから当然である。むしろ男達の呟きは美の女神を褒める事にしかなっておらず、ミクはあっさり罠に掛かっている連中に呆れてくるのだった。
下らない思考は放り投げ、そろそろ良いかとミクは動く事を決意する。既に夜になっており、それなりに町から離れているらしいので悲鳴も聞こえまい。勿論、男達もそういう理由で選んでいるのだが、逆に使われるとは思わなかっただろう。
突然ミクの体から触手が飛び出たかと思うと、先ほど話していた離れている二人以外の心臓を貫いた。そして離れている二人を触手が縛りあげ、口元も覆い喋れない様にしてしまう。
男達は全員馬車に乗っており、逃げられる者は当然誰も居ない。ミクは汚液塗れの体を起こして胴体を横に開くと、心臓を貫いた者達をそこに入れて貪っていく。「ボリ!ゴリ!バリ!」という音がする度に、ミクの顔が嬉しそうな表情に変わる。
ソレを見て失禁しながら気を失った、生きている二人。今その連中は眼中に無い、そう言わんばかりに肉を貪るのだった。
ミクは喰い終わった後、腹を殴って無理矢理に二人を気絶から回復させる。意識を取り戻した瞬間、発狂して喚き散らそうとしたが、口を押さえられている為に声を出せない。
ようやく自分達が手を出したものを理解した男二人は、首を左右に振りながら後ずさりを始めた。
ミクはそんな事は気にせず、護衛をしていた<荒地の鷹>のリーダーの頭の上に掌を乗せる。すると「ビクンッ!」と一度震えた後、目の焦点が失われた。その後、拘束している触手から解放して、質問を始めるミク。
実はミクの掌からは極々細い触手が出ており、それが頭蓋骨を貫通して脳に突き刺さっている。こうする事で相手を自在に操る事が出来るのだ。尚、触手を千切って自立行動をさせる事も出来る。洗脳よりも遥かに怖ろしい肉塊であった。
「お前達はいったい何者? 本当は何をしている?」
「俺達は領都最大の裏組織である、<人喰い鳥>のメンバー。ギテルモ商会に雇われて、馬車の護衛と女冒険者を売る商売をしている。他の奴等も居るが、俺達は護衛だけだ」
「そう……<淫蕩の宴>を知っているでしょ。接触する方法は?」
「アレらとの接触は娼館に行けばいい。<踊り子の家>という店に行けば接触できる。そこの支配人の名はオーセス。ソイツに話せば<淫蕩の宴>に接触できる」
「ん? <淫母フェルーシャ>じゃないの? そいつがトップなんでしょ?」
「<淫蕩の宴>は王国どころか、周辺国に支部がある巨大組織だ。王国に進出した理由は<黄昏>欲しさだと言われてるが、本当の事は分からない。元々<淫蕩の宴>は商国で生まれた組織だ」
「ふーん。成る程、ありがとう。よく分かった。それじゃあ、いただきます」
再びミクの体が横に開き、もう情報の無い男を貪り喰う。目の前で人間種が喰われる様を見せられたベイスは、恥も外聞も無く泣き叫び、下から漏らすものを全て漏らした。絶対者の前では皆が哀れな子羊である。
その絶対者たるミクは、今度はベイスの頭に手を置き脳を操る。すぐに動く事も無くなったベイスを触手から解放し、話を聞く。
「お前はギテルモ商会の者。バルクスの町の代官が、盗賊にアロマット商会を襲わせている事は知ってる?」
「知っています。そもそも<死壊のグード>は<人喰い鳥>に雇われており、その仲介をしたのが代官であるオルドム男爵と聞きました。<死壊のグード>は元々商国の賞金首ですので、商国の裏組織とも関わりがあるのではと言われています」
「ふんふん。<死壊のグード>も<淫蕩の宴>も商国かぁ……。今のところ王国を離れる気も無いし、他国に行く気も無いんだよね~。この国のゴミを全然食べてないし。他には……ギテルモ商会は何故、アロマット商会を襲わせてるの?」
「商売敵という理由が大きいのですが、それ以上の理由としては元々一つだったからです。アロマット商会から出たのがギテルモ商会なのですが、それ故に多くの分野で衝突しますので」
「成る程、独占体制を崩すとかいうヤツだね。神連中が言ってたから知ってる。商売は基本的に奪い合いだって。長く支配している所に新規参入してぶっ潰し、新しい風を吹かせるとか言ってたよ。興味無いけど覚えてはいるね」
ミクの聞きたい事も無くなったのか、【清潔】を使って綺麗にしてから食べて終わらせた。馬車の外に出て【清潔】を使い、汚液を全て落とす。そして服を着ようと思ったらズタズタにされていた。どうやら切り裂いて脱がせたらしい。
そこまで調べていなかったミクは困ってしまい、仕方なく男達の服を改造して服を作った。チュニックとズボン。ブーツは履いたままだったので問題無し。剣帯と武器は無事。これで問題無しとして、馬車の中の物を外に出していく。
魅惑の二つの果実がチュニックを押し上げているのだが、この肉塊はどれほどの異性を魅了する気なのだろうか? ジャケットを着ていないので大きさがハッキリと出てしまっている。
外に出した物を色々と調べると、リュックがあったので取り戻し、中の貨幣は入ったままだった。次に馬車の中の積荷を調べると、単なる小麦や干し肉が入っていただけで、他には積荷らしき物は無い。
急いで届ける物など無く、アレはやはりミクを罠に嵌める為の方便だったようだ。小麦や干し肉を吸収しながら食べつつ、適当に考えを纏めていく。流石に今の時間から行っても、領都には入れてもらえないだろう。
とはいえ、ミクには睡眠が必要ない。新たに手に入れた武器も幾つかあるが、無理に作らなければいけない物も特に無し。困ったと思いつつも貨幣などを集めると、それなりに連中は持っていた。
銅貨8枚、大銅貨43枚、銀貨21枚、大銀貨2枚、金貨2枚。これが連中の持っていた貨幣の全てである。儲かったと言うべきか、それなりでしかないと言うべきか。判断に迷う量と種類だ。
とはいえ本体に転送しておき、ミクは最後に馬車の幌も取り去った。それを肉に収納した様だが直ぐに取り出している。ミクの手には何処から出てきたのか手紙があった。
「何で幌の布の中に二重になってる所があって、そこから手紙が出てくるのさ。何か物凄く面倒くさい事をしているみたいだけど、そこまでするコレって何?」
何だか嫌な予感がしつつも、好奇心を隠せないミクは封筒を開け、手紙を出して読んでいく。それはバルクスの町にある裏組織の支部からの報告書だった。つまりコイツらは数日前にバルクスの町に居たらしい。
そこで報告書を受け取り、戻る最中にミクに手を出したという事だろう。あまりにも間抜けな連中である。
「う~ん……? バルクスの町の情報を書くのは分かる。何で裏組織の報告書なのに、カレンの事がこんなに細かく書いてあるの? 半分以上カレンの事なんだけど? いつも変わらない日常なのに、異様に細か過ぎない?」
何故か声を掛けた人物や話した内容。受付の時の仕事の速さやトイレの頻度。お昼の食事内容から笑顔の回数まで。
信じられない程に細かく書かれている報告書であり、現代日本なら間違いなくストーカーで訴えられるレベルの内容だ。
流石のミクも意味が分からず首を傾げるのだった。




