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0155・次の町へ




 影二は美輝を背負っているからか、いつもに増して「ひーひー」言っている。むしろ重りが増えて都合が良いので、あのまま体を鍛えていてもらおう。ミクは四郎と紗枝に魔法を教えつつ、ローネとネルが警戒と排除を行う。


 ヴァルが常に警戒してしているので、相変わらず気付かないという事は無い。何度かオークの襲撃を受けながらも、その全てを叩き潰してアイテムバッグに収納していく。奴等は雌の天敵ではあるが、同時に食肉としては美味しい部類に入る。


 なので売る事も考えて収納しているのだが、四郎が食べないのかを聞いてきた。頓珍漢な事を聞いてくるので、ネルが話していく。



 「そもそも殺してすぐの肉は食べられない。ミクかヴァルが居れば完璧な血抜きは出来るけど、肉は熟成させないと駄目。……それとも貴方達の星では殺してすぐの肉を食べるの?」


 「あー……いや、すみません。オレ、どうやって肉を捌いているとか全く知らないんです。肉が売ってるのは見た事ありますけど、どう解体してるとか、どう処理してるとかはサッパリ」


 「成る程。貴族の子供と同じと考えれば分かりやすい感じかな? 村や町の子供なら肉屋の近くで見ている事は多いから何となくで知っている。それすら知らないとなると貴族の子供しかいない」


 「げー、横暴な貴族の子供と一緒かー。それはそれでキツイなぁ。とはいえ、肉屋自体を滅多に見かけなくなったから仕方ないのか? 大型の店ばっかりで、スーパーすら減ってるって聞くし」


 「お肉なんて大抵工場で捌かれるんじゃないの? お肉を自分の店で捌く肉屋そのものが、多分あんまり無いと思う。ああいう所も仕入れて売ってるだけの所が殆どらしいし……目利きは出来るらしいけど」


 「お前達の話を聞いていると、肉を捌く専門の者が居て、普通の者は肉を捌く所も見た事が無いという感じだな? そこから運ぶのかもしれんが、肉なんぞ簡単に腐るぞ? それはどうするんだ」


 「お肉だけでなく魚もそうですけど、大抵は冷凍して運ぶんですよ。一度カチカチに冷凍すると死滅する菌も多いし、凍っている間は腐らないので時間が掛かっても問題無いんです」


 「へー。魔法で凍らせる事は出来るけど、それでも同じ様に腐らなくなるのかな? 特に実験とかする気ないけどさ。後、私の場合は生きながら食べるから、特に硬いとかはどうでもいいね」


 「そりゃそうでしょ。多分ですけどアレですよね、ミクさんって何でも溶かせますよね?」


 「まあ、そうだね。<死の神>の実験で、神どもの肉体すら溶かして吸収出来るのは分かってるからさ。凄い力になるけど、神どもの肉ってマズイんだよ。ビックリするぐらい。だから、あんまり食べたい物じゃないね」


 「「「「「「………」」」」」」


 『まあ、神の肉体を喰らったと聞けば、唖然とするのも当然だろうな。神が行った実験だから何の問題も無いのだが、それでも驚かずにはいられんだろう。……っと、主。またオークだ。やけに多いな?』


 「そうだねえ。私からすれば血を飲める相手でしかないけどさ。今は肉よりもお金を優先しなきゃいけないから収納するけど、オークの集落があるなら行って喰い荒らしておきたいところだね」



 ミクはアイテムバッグから”魔剣”を取り出して、迫ってきたオークを浅く切る。その一撃を受けてオークはうずくまった。少し離れた一行だが、オークは突如として暴走したように突っ込んで来る。


 ミクが更に三度ほど切りつけると、猛り狂っていた股間から大量に精を噴出して倒れた。ミクは「ほうほう!」と言って実験結果を興味深く確認しており、他の全員はミクをジト目で見ている。


 気にしないミクはオークを引っ繰り返して確認し、最後に首を刎ねて始末したら血を綺麗に吸い取って収納する。再び歩き出すも、限界に達した影二から質問が入った。



 「いやいや、サラっと歩き出さないで説明して下さいよ。さっきの実験っぽいのは、いったい何なんですか? 何故かオークがおかしな事になりましたけど、撒き散らすって色々おかしいでしょう」


 『何だか溜息が出そうになるが、変ではない。おそらくだが、アレは<発情の魔剣>の効果だ。切りつけた分だけ効果が大きくなり、最後には精を撒き散らして倒れる結果になったのだろう。怖ろしい武器ではある』


 「「「「発情の魔剣……」」」」


 「元々は屋台の景品としてオッサンが渡してきた呪いの付いたナイフだったんだよ。<喰らう者>である私にとっては呪いでさえ食い物でしかない。だから喰らったんだけど、何故か効果だけがこびり付いて残ってさ。それで魔剣になったんだよ」


 「でんでんでんでんでんでんでんでん、でんでれでん。あなたはのろわれました」


 「懐かしのレトロゲームじゃねえんだからさー。いや、俺も動画で見たことあるけど、ミクさんは呪われないだろ。………ちょっと待て、呪いの武器で呪われないって強くね? 呪いの武器って強力なのばっかじゃん」


 「呪い自体が強力な物だから当然そうなる。むしろ呪いの武器で弱い効果なのを見た事は殆ど無い。異性に嫌われやすくなる、あるいは髪が薄くなっていく。これらがマシな方」


 「十分キッツイ効果だと思うのはオレだけですか? 異性に嫌われやすくなるってシャレにならないですよ。っていうか、何で同性は問題無いんでしょうね。ソレ」


 「ん? 男性の同性愛者が、女性に浮気した男を呪ったらしい。その男が着けていた腕輪だったと思う。呪いながら自殺した結果、呪いの腕輪として出来たんだったかな? あんまり詳しくは覚えてない」


 「江戸時代だって浮気されたから切り殺したって事件があったらしいからなぁ、男同士で。何やってんだって思うけど、許せなかったのかねぇ? 暗持家は由緒正しい庶民だから、同性愛とか関係ないけど」


 「ウチも多分だけど関係無いなぁ。昔、武士に仕えてたって聞いた事あるけど、活躍したとか聞かないしさ。多分だけど嘘っぱちなんじゃね? って思ってる。あの時代なんて言いたい放題だったろうし」


 「私の家は古い時代は武家だったって聞いた事あるんだよねー。御堂家って古くからあるし、家系図も残ってるし。そもそも公家の家から輿入れした記録すら残ってるから、結構良い家だったと思うー」


 「星川家は古くは公卿の家で、華族になる際に枝分かれした家なんだよ。だから古くは朝廷に出仕してたのかな? と言っても、宗家の方がちょっと没落気味だから、分家の星川家の方が大きくなっちゃったけど」


 「世界の星川財閥だもんね。宗家の方が肩身が狭いって、また色々文句というか嫌味を言われそうー。……あ、うん。これ以上は何も言わないでおくー」


 「そろそろ町に着くな。美輝もそろそろ影二の背中から降りろ。彼氏が大好きなのは分かるが、汗の臭いを嗅ぐのはそろそろ止めておけ。変態過ぎるぞ」


 「なっ!?//////」


 「影二には気付かれてなかったのに……ローネさん容赦ねえ!」



 美輝は顔を真っ赤にし、影二は何とも言えない顔になる。それ以外の皆は笑っているが、もうヨフレ町の目の前だ。流石に変態行為は止めさせないと変な目で見られてしまう。


 四郎と紗枝は言うかどうしようか迷っていたが、ローネが容赦なく言う形となった。今は美輝が影二の背中から降りたが、若干名残惜しそうな表情をしている。美輝の中のドス黒いものは、順調におかしな方向に進んでいるようだ。


 それでも怨みや憎しみに向くより遥かにマシである。


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