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0154・キレる美輝




 魔法の練習や魔物を倒しつつ東へと歩いて行く。着いたのはサノイ村。ここで村は三つ目、つまりここの東は国境近くの町という事になる。宿に行くと部屋が空いていたので確保しておく、何故かあの商人はまだこの村まで来ていないようだ。


 そんな事を話しつつ、ミク達の部屋で魔法の練習を続ける高校生四人。実は足が痛くなる毎に<紅の万能薬>を飲ませている。四人はあまり体力が無いが、それ以上に靴擦れだなんだと色々起こしていたのだ。


 ミクは面倒臭がって<紅の万能薬>を飲ませていたが、普通なら猛烈なほどの無駄使いである。半無限に生み出せるミクからすれば大した物ではないが、普通なら大量の金貨と交換される代物だ。そんな物をあっさりと作り出すミクに、高校生四人は呆れていたが……。


 夕食の時間が来た為、食堂に行って食事を頼む。運ばれてきた食事を食べていると、給仕の女が影二と四郎に声を掛けていた。まあ、即座に美輝と紗枝が足を踏んだので痛みに呻いているが……。おそらく誘われたのだろうと思われる。


 食事後、聞いてみたら案の定だった。怒る理由も分からなくもないが、いちいち面倒なのでハッキリ言っておくようだ。



 「お前達の言い分も分からなくもないが、向こうも商売だ。いちいち騒ぎ立てるな。そもそもだがな、ああいう女は前にも言ったが血の澱みを解消する為の女でもある。あまり邪険にするとお前達の方が恨まれるぞ、気を付けろ」


 「ああいうのは流せばいいだけ。変に反応するとおかしな事になるし、向こうも客に変な事をしたのかと疑われて、肩身の狭い思いをする事もある。迂闊な事は慎むべき」


 「「すみません……」」


 「まあ、今回は大事にはなってないみたいだけどね。常識を学んでもらわなきゃ困るんだけど、盗賊どもと同じでいいと思われても困るしねえ……」


 「流石にそんな間違いはしませんよ。………しないよな?」


 「プッ……いや、流石にそれはないだろ。というか、冗談だろ冗談」



 ようやく理解して一頻り笑った後、高校生四人は部屋に戻っていった。流石に媚薬と精力剤は渡していないので普通になるだろうが、いつまでも薬に頼ると碌な事にならないので今の内に使用を止めさせておく。


 ローネとネルもいそいそ準備し出したので、今日はミクとヴァルが一対一で相手をするようだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日の朝。宿の入り口で合流し、食堂で朝食を注文したら昨夜の事を聞いておく。流石におかしな事になってはいないと思うが、薬が無ければ全然ともなれば不満が溜まるのは確実だからだ。



 「影二は童貞だったし、最初から薬で……だからな。上手くなっているとは思えんし、昨日は薬無しでは初めてだろう。ヘタクソなのは分かっているが、それが不満となっておかしな事になっても困るのでな。聞いておきたい」


 「いやいやいやいや、何を言ってるんですか。そんな事は聞く事じゃありませんし、言う訳ないでしょう。そもそも聞く意味無いですよね?」


 「お前は何を言っている? 男はともかく女には不満に思う事など沢山あるのだ。出せば終わる程度の男と一緒にするな」


 「まあ、ローネは流石に言い過ぎだとは思うけど、女の体はスロースタートな事は覚えておくべき。男のように刺激されたらすぐにスタートする訳じゃない」


 「あ、はい。分かりました」


 「それはともかく大丈夫だった? 流石に薬が無ければ駄目ってなったら困るから、正直に言ってもらいたいんだけど……」


 「えっと、無くても特に問題はなかった。その……始めるまでには色々してくれたし、始めた後も自分の事より優先してくれたので……。それに【超速回復】のおかげで、満足するまでシてくれるから///」


 「あ~……気持ちは分かる。私一昨日薬を貰ったけど、凄かったもん///。これ以上ダメって言っても止めてくれないし………でも、それが凄く良かったから、気持ちはよく分かるよー///」



 女子高生二人が盛り上がるも、その分男子高校生二人が落ち着かなくなっていく。何だか生温い視線が男子二人に向いているが、必死に食事をする事で受け流す二人。諦めて我慢するしかないね。


 朝食後、街道を歩きながら魔法の練習をする。食堂を出るまで生温い視線を向けられ続けていた二人は、相当疲弊したらしく疲れた顔をしながらの練習だ。それでも魔法に集中すると回復してきたのか顔色も良くなってきた。


 途中で出てきたゴブリンを倒したりしながら進み、昼食の休憩を挟んで歩いていると、林の中からオークが出てきた。何故か一体しかいないものの、女子高生にロックオンしたオークは美輝に突進してきた。


 即座に横の影二がカバーに入るが、邪魔に思ったのか先に影二を殴りつけてきた。「ガァンッ!!」と大きな音が鳴り、影二の持つ盾が割れる。薄い銅を被覆しただけの安っぽい盾だったのでしょうがないが、オークの膂力には耐えられなかったらしい。


 オークはすぐに美輝に向かうも、運良くオークの目に紗枝の放った矢が刺さる。痛みに呻き顔を手で覆うオークに対し、チャンスとばかりに美輝が攻撃するも薄皮一枚しか切れない。オークの皮膚は思っているより硬いのだ。


 怒ったオークは美輝を殴りつけようとし、そこを影二が庇うものの、殴られた影二はぶっ飛んでしまう。かなりのダメージを負ったが、代わりに美輝がキレてしまい【覇気】を全力で発動した。



 「影二っ!? こんのクソ豚ぁ!! 死ねぇーーーーっ!!!!」



 流石に財閥の御令嬢の使う言葉ではないが、彼氏が殴り飛ばされてキレた彼女は強かった。剣が壊れたものの、オークの体の半ばまで剣がメリ込んでいる。その殆どを切れ味ではなくパワーで押し込んでいるのだから、怖いものだ。


 体の半ばまでを袈裟懸けにされたオークは、そのまま後ろに倒れ死亡した。それよりも美輝が倒れてしまい、紗枝が慌てる。四郎は影二に近寄ったが、大怪我をしている事に気付いた。



 「影二! お前、眼鏡の破片が刺さってるじゃねーか!? 目は見えてんのかよ! おい、見えるか!?」



 その言葉に慌ててミクは影二に近寄り、右腕を肉塊にして顔に付いているガラス片などを全て綺麗に取っていく。どうやら幾つか眼球に刺さっているものもあり、影二は左目が見えないようだ。どうしてコイツは不用意に怪我をするのだろうか?。



 「はいはい、ジッとしててねー。それにしても、何で慌てて動くと毎回怪我するかな? いちいち面倒だからさ、これからは冷静に動いてくれる? ………【超位修復アークリペア】!!」



 徐々に左目が見えるようになり安堵する影二。庇いようは幾らでもあったというのに、何故自分は顔面から庇いに行ったのか……。確かに、言われれば意味の分からない庇い方だったと反省する影二。


 その時、倒れた美輝に気付いて慌てて近寄る。すると美輝は倒れているものの、意識はちゃんとあり問題無いようだと分かり胸を撫で下ろす。



 「何を慌てているのか知らんが、全力で【覇気】を使ったから全身の筋肉が疲れ果てて動けんだけだ。先ほどの一撃に対し、強制的に全ての力を使ったからだろうな。失敗としてはよくある事だ。こういうのも経験せねば分からん」


 「それより【超速回復】がある影二が背負ってね。そろそろ出発するよ」


 「分かりました! ……って、アレ? ………目が普通に見えてる。何で眼鏡が無いのに普通に見えてんの!?」


 「さっき【超位修復アークリペア】で治したからに決まってるじゃない。体の悪い部分まで全て修復できる魔法を使ってるんだから、当たり前でしょうが。それよりさっさと背負え」


 「は、はい! すみません!!」



 視力が元通りに治るという事はとんでもないのだが、何故か大した事が無いみたいにスルーされてしまうのだった。


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