0148・魔法の練習とイッテ村到着
東へと歩いて行くミク達。その間にも魔法を教えていき、何とか使える様になった。この世界の魔法は”定められた魔法陣”を魔力で作り出して行使する。当然だが定めたのは神々だ。よって、それ以外の魔法陣を勝手に作っても何も発動しない。
魔力を扱うのはそれ以外にも色々あるが、魔法に関してはこう決まっている。身体強化などは魔力や闘気を自ら扱うが、アレは筋肉など自分の体が前提に有るものであり、魔法とは少し違う。
魔法も既存の物を扱うという意味では何も変わらないのだが、自分の力で扱うのと半ば以上まで魔法陣に定められているという部分が大きく違う。そんな魔法の基本などを話しつつ、各々に魔法の練習をさせていく。
「魔法を使える事は始まりでしかない。使い熟せるようになって一人前であり、そこから突き詰めていく事になる。下級の魔法でさえ突き詰めれば十二分に敵を殺せるのだから、重要なのは使い熟す事。それは忘れないように」
「アレだな、影二。魔法を使えるようになったら熟練度が表示されるようなもんだ。使っていったら段々熟練度が溜まっていって、それに比例して威力が上がっていく感じ。そんなゲームあったよな?」
「あったけど、それとはちょっと違うんじゃないか? 何かコツを掴むと一気に上手くなるそうだし、その反面コツを掴めなきゃ延々とヘタクソなままな気がする。そこはリアルに考えた方が期待しなくて済むと思うけどな」
「何て言うか、夢の無い話だなぁ……と思うけど、よくよく考えたら魔法を使ってる時点で夢があるんだよなー。よもや自分が魔法使いになるなんて思ってなかったけど、現実の魔法使いは大変だよ」
「何言ってんだよ。昔のゲームとか作品なんて、変な薬草とかを煎じたりしないと魔法が使えないんだぞ? それに比べたら回復する魔力だけで魔法が使えてるだけマシだろ。草とか葉っぱとか根とか持ち歩きたいか?」
「うへぇ………勘弁してくれよ。そんなもん持ち歩いて魔法使うなんてダサ過ぎるだろ」
「下らない事を喋ってないで練習、練習。使って失敗しないと学ばない。ひたすら練習」
「「へーい」」
影二も四郎も言葉や態度はアレだが、実は女性二人よりも真面目に練習していたりする。女性二人は昨夜の話を「ボソボソ」小声でしている為、そこまで真剣に練習していない。とはいえ、全くやっていない訳でもないので放っている。
どのみち練習を始めたばかりなので肉体に溜め込める魔力も多くないし、練習できる回数は少ない。どんな存在でも溜め込める魔力や闘気には限度があるので、そこに到達するまではゆっくり増やしていくしかないだろう。
「つまり魔法を使いまくっても限度があって、それ以上は魔力を増やせないと……。現実が思っているよりも世知辛かった件」
「いや、仕方ねーんじゃねえの? スタミナっていうか、体力だって限度があるんだしさ。後は使い方っていうか、上手くなる事で何とかするしかないんじゃないの? ……ですよね?」
「それで合ってる。上手い奴は威力も高いし消費魔力も低い。つまり、そういうところで大きな差が出るんだよ。本当に魔法を使うって事は使い熟す事であって、使えるだけなら子供と変わらない」
『まあ、頑張る事だ。一応言っておくと、主は行き着く先まで行っているからな。最高の魔法の使い方が出来ていると言って間違い無い。魔の神もそう言っていたくらいだ』
「神様にOKもらうレベルって、俺達が到達出来るように思えないんですけど? 流石にそこまでになれって言いませんよね?」
「流石にそこまでは言わないね。ただ、出来る限り上手くなってもらうけどね。特に影二は他のメンバーに比べて練習回数は多いんだから、そのぐらいは頑張ってもらおうか?」
「………」
影二がガックリと肩を落としているが、本人が望んだチートを持っているのだから諦めるしかない。そんな練習をしつつ街道近くの草むら等で用を足すと、早速【清潔】を自分で使っていた。
「魔法って凄いね。あんなに一瞬で綺麗になるなんて思わなかった。真っ先に教えて貰えて本当に良かったよ。やっぱり綺麗に出来ないと気持ち悪いし、お風呂も無いみたいだから」
「もしかしてお風呂チート……無理か。魔法があるんだからお湯は簡単に作り出せるだろうし、誰もお風呂屋を作らないって事は面倒臭いんだな。【清潔】の魔法とか使えば、お湯も綺麗になると思うんだけどなぁ」
「汚いお湯に【清潔】を使っても、汚れが沈むだけじゃないかなー? だから使っても意味無いと思う。それに、この星の人って【清潔】を使うからー、お風呂に入らなくても綺麗なんじゃない?」
「「………」」
「確かに魔法使えば綺麗になるなら、わざわざ風呂に入ったりはしないか。魔法ですぐに綺麗になるんだし、服だって魔法で綺麗になるんだから洗濯機も要らない。……アレ? 元の星より凄くね?」
「「「………」」」
「生活の質を上げたいなら頑張りなよ。そうすれば君達の言う豊かな暮らしが出来ると思うし、後は閃き次第かな? 私も多少は教えて貰ってるけど、あんまり機械がどうこうには興味無いし。それはネルの担当かなぁ」
「私もそんなに興味無い。魔道具で代用できるし、魔装具作る方が楽しいと思う。今のところは素材が無くて作れないけど……」
「魔道具は分かるんですけど、魔装具って何すか?」
「魔装具はミクが着けているピアスのような物。装飾品だけど特殊な効果があるものかな? 精神を守る効果とか、集中力を増やす効果とか、様々な効果を付与できる。ちなみに奴隷の首輪は呪物、つまり呪いの品だから間違えないように」
「「「「奴隷の首輪!!」」」」
「あんな物が現実にあるんですか!? 命令したら何でも言う事をきかせるとかいうヤバい物! うわー、絶対に気を付けないと!!」
「あれって呪いだから、私が持ってる<聖霊水>で解除できるけどね。後、命令に従わせる効果なんて無いよ。あるのは着けた奴に攻撃出来なくなるのと、離れすぎると首が絞まる効果だね。そのまま離れると最後には首が千切れる」
「「げぇっ!?」」 「「………」」
「奴隷の首輪で首チョンパってシャレにならねえ。マジかー、色んな意味で気をつけないとヤバイ。こりゃ本気で今までの常識を捨てた方がいいな。そう思わないか? 影二」
「今ごろか? って思うけど、本当に常識を再構築しないとマズいな。色々なものが違いすぎる。特に奴隷の首輪はマズ過ぎるし、美輝は絶対に守らないと……」
「//////」
「良かったねー、美輝ちゃん。本当に喜んでるのがよく分かるよ。ハッキリ言って安堵したよー、本当。美輝ちゃんが男性嫌いなの知ってたし、それで四郎の事も口に出来なかったもん」
「そろそろ村が見えてきたからイチャイチャは終了な。村に入ったらすぐに宿をとりに行くぞ。駄目なら家畜小屋だな。商人に取られている場合は、村の宿などまず泊まれん。そういう事も覚えていけ」
「「「「家畜小屋……」」」」
「仕方がない、屋根があるだけマシ。場合によっては外で野宿もあり得る。無駄な道具など持てないのだから、雨ざらしで寝る事も覚悟しなきゃ駄目」
「「「「………」」」」
流石にそこまでの覚悟はしていなかったのか、遂には祈るような顔になった高校生四人。大抵はお金を払って村長の家などに泊めてもらうのだが、意図的にミク達は言っていない。
高校生四人には、早急に今までの常識を壊してもらわねば困るからだ。場合によっては、今までの常識の所為で誰かが死ぬかもしれない。その事もあって厳しめの態度をとっている。




