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0147・東へ




 朝、ふと目覚める。アニメを深夜まで見続け、寝坊する事が当たり前の自分にしては珍しい。そう思った瞬間、昨夜何があったのかを鮮明に思い出した。四郎と違い、女性に縁なんて存在しないと思っていた自分が童貞を卒業した事を。


 「三十歳まで童貞なら魔法使いになれたのに!」と思ったが、よくよく考えれば魔法が使える星に居る事も思い出した。なので特に問題無いなと思い横を見ると、自分の顔が赤くなってくるのが分かる。



 (俺のような奴とは絶対に縁が無い筈の美少女と、昨夜アレもコレもソレもしたんだよな。お願いすると何でもしてくれたし……あれって夢じゃなかったんだ。まあ、俺もお願いされた事は全部したけど。……アレだ、美少女は清らかで性欲は無いって嘘だな。昨夜知ったよ)



 精力剤を飲んだうえ【超速回復】の効果もあり、明らかに影二自身もおかしいと思った昨夜の自分の精力。それを最後まで受け止めて悦びの声を上げ続けていた美輝。女性の嬌声を聞く度に自分の中の獣性が……



 (落ち着けー、落ち着けー、俺。昨日の事は俺の脳内フォルダに永久保存しておくんだ。決して色褪せないように念じるくらいで丁度いい。俺如きなんて、いつ別れを切り出されるか分からないんだからな。俺の脳に焼付け! 昨夜の記憶!)



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 どこまでもヘタレな男が脳内に必死で焼き付けている頃、ミクとヴァルも起動した。ローネとネルを起こし、服を着させて出発の準備を整えさせる。ネルはそうでもなかった筈だが、いつの間にやらローネに毒されたらしい。


 準備を整えたら自身のアイテムバッグを持って部屋を出る。尚、ネルのアイテムバッグだけは自作だ。神々がネルにアイテムバッグの作り方を教え込んでいたが、ネルが白目を剥きそうなのが印象的だった。普通は無理らしく、ダンジョンで手に入るのが精々だそうだ。


 なので、何故かネルのアイテムバッグだけドラゴンの皮で出来ている。適当な布が無かったのでしょうがない。ドラゴン狩りをしていただけあって、ドラゴンの素材”は”余っているのだ。その事実にネルは遠い目をしていたが……。


 宿の入り口で高校生達と合流し、まずは食堂に行く。影二と美輝は上手くいったのか聞くと、お互いに恥ずかしそうにしているものの上手くいったそうだ。まあ、揉め事が起こってないならいい。



 「揉める事はありませんけど、まさか美輝が星川財閥の御令嬢だなんて知らなくて驚きましたよ。まあ、俺達は複製なんで意味が無い事でしかありませんが……」


 「私達が複製、つまりコピーされた者なら、元の立場など何の意味も持たない。新たな自分を作るしかないし、元の私は絶対に影二と一緒にはならないでしょう。申し訳無いが、それだけは断言出来る。心の中で男を見下しているだけに、絶対と言えるほど無い」


 「美輝ちゃんは星川財閥っていう超お金持ちの家の御令嬢なんですよー。ただ、その所為で変な男が周りにいっぱい来て、それで男嫌いになったんです。多分ですけど、影二君は男嫌いになる前に知り合ったんじゃないかなー?」


 「そう。まだ私がああなる前だった。ちょっと良いなって思ってた相手が目の前で助けてくれて、でも私の所為で大怪我を負って………ああ、そうだ。ソレで男が嫌いになったんだ、それも思い出した」


 「えっと、どういう事か分からないけど……ちょっと顔が怖いよー? 顔は直そ?」


 「ああ、すまない。私を庇ってくれた影二に対して、「そんな事は当たり前」とか「星川財閥のお嬢様を守れて本望だろう」とか言うゴミが居た事を思い出したんだ。それで、男という者に愛想が尽きたんだったな。影二は別だが」


 「そいつらヒデーなって思うも、ハイソな奴等ってそういうイメージだわ。心のどっかで他人を見下してるって感じ。心底庶民で良かったって思う瞬間だな。まあ複製された星川さんはそうじゃなくなったんだし、良かったんじゃないの?」


 「まあ、四郎の言い方はアレだが言っている事は正しいな。貴族みたいなクソだが、お前も物凄い金持ちの家だったなら貴族と同じなんだろう。同じクソさを持っていたというのは事実だ。諦めろ」


 「……今思い出せばそうだ。私もまた、勝手に決め付けて勝手に見下していた。そんな愚か者だったんだな」


 「それはいいんだけど影二、昨日渡した薬を返してくれる? あげても良いんだけど、ガラス瓶は返してもらうよ。コレ、ダンジョンで手に入れたガラス瓶だからさ、普通のガラスと違う可能性あるし。それで、昨夜はどうだったの?」


 「い、いやぁ、それは………。あっ!? それで思い出したんですけど、昨夜の精力は絶対におかしいですよ。俺のスキルって精力にも効くんじゃないんですか? 何か異様でしたよ?」


 「【超速回復】? 確かに精力も回復する筈だけど……ああ、精力剤と合わさって効果が高まったかー。まあ、良かったじゃない。影二が早く漏れる人でも大丈夫でしょ」


 「違いますよ! 多分ですけど普通です! ……あの、それで思い出したんですけど、媚薬ってあんなに効くんですね。流石にちょっと驚きでした」


 「うん? あれは神様の作った物だから効くのは当たり前。おそらくだけど悪い経験にはなっていない筈。………もしかして、快楽に溺れてた?」


 「その、初めてだったのでよく分からないが、凄かった事だけは覚えている。正直に言うと、気持ち良過ぎて詳しくは覚えていない。恥ずかしい事を口走ったような記憶は朧気に//////」


 「そこのトコロはどうなの!? 影二君!」


 「い、いやー、流石に本人以外がそれを言うのはどうかと思うんでー……俺は言えないですね」


 「まあ、そうだよな。紗枝もあんまり聞かない方がいいって。そっとしておいてやろうぜ?」


 「んー……」


 「お前達それよりも早く食べろ。今日は東に歩いて行くんだぞ」



 それを聞いて慌てて食事を済ませる四人。朝食後は食堂を出て、屋台で昼食を買ったら町を出る。ヴァルに乗ればあっさり着くのだが、高校生四人が居るので徒歩だ。ついでに魔法の練習などをさせながら進んで行く。


 特に【清潔クリア】の魔法を最初に教える。生活魔法系に分類されるが、正式には【浄化魔法】の一つだ。体の汚れを剥離させて落とす魔法だが、夜の汚れも落とす事が出来るし、トイレの汚れも落とせる。それを聞いた四人は猛練習を開始した。


 元の星では清潔で綺麗な生活をしていたらしく、この汚れた生活が耐えられないらしい。トイレにあったのも、よく分からない葉っぱだった。昨日は我慢してアレでお尻を拭いたが、出来ればゴメンなんだそうだ。


 むしろミク達は、無駄に柔らかく作られた紙で尻を拭く事に驚いている。



 「わざわざケツを拭く為に柔らかい紙を作るのか? お前達の星は阿呆しかおらんのか。魔法を使えば済むだろうが、何故わざわざそんな紙を無駄に作るのやら。何とも変な星だな」


 「いやいやいやいや。俺達の星じゃ魔法なんて使えませんから! 魔法なんてラノベとか漫画とか、アニメとかゲームの中にしかありませんよ!!」


 「今、練習してるじゃない。それは何?」


 「いや、この星だから使えてるんでしょう!? 俺達の元の星じゃありえませんって!!」



 他の三人も「うんうん」頷いているので、衝撃の一言をミクが伝える。



 「魔力の無い場所なんて世界の何処にも存在しないけど? そっちの星で使えなかったのは、使い方を知らないだけでしょ。使い方を知らなきゃ魔法は使えないよ?」


 「「「「………」」」」



 高校生四人は、ようやく一番大事な部分に気付いたらしい。そう、単に知らなかっただけだと。


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