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0136・ナナドーアとの別れ




 朝になりミクは起動して身支度を整えたら、宿の延長をして食堂に行く。朝食を注文して食べていると、食堂に騎士が入ってきてミクの方に歩いてくる。威圧にならないように歩いているのは好感が持てるが、何の用か訝しむミク。


 その騎士はミクの前で止まると、頭を下げた後、要件を言ってきた。



 「冒険者ランク10のミクさんですね。ナナドーア第一皇女殿下がお待ちです。城まで御同行を願えますか?」


 「申し訳ないんだけど、少し待ってくれる? すぐに食べ終わるから」



 <喰らう者>として食事を残すなんて事はあり得ない。それ故の行動だが、騎士達はどうやら待つようだ。それを見たヴァルは安堵し、ミクが食べ終わるのを待つ。まあ、殆ど終わっていたからこそ騎士も待つ事にしたのだろう。


 素早く食べ終わったミクは、騎士についていき貴族街へと入る。更に連れられて行き、城の門も越えて帝城へと入っていく。昨夜は侵入したが、今日は正門から真っ直ぐ入る事になった。そんな事を【念話】でヴァルと話しつつ、騎士に先導されていく。


 とある部屋へと案内されたのだが、そこにはナナと覇気のある青年が居た。何となくは当たりを付けたが、気付かないフリをしておく。案内された部屋にはソファーがあったので、さっさと座ってナナに話しかけた。



 「呼ばれたから来たんだけど、コレってどういう事? 何が目的で呼び出されたかサッパリ分からないんだけど」


 「お姉様がグレータークラスのコボルトから助けて下さったのを話すと、陛下が挨拶がしたいとおっしゃられまして……。私としては特に何かを言った訳ではありません」


 「うむ、呼び出してすまんな。余がアロンドゥル・ズェン・フィランオルドだ。この国の皇帝をしておる。………はあ、堅苦しいのはコレで終わりな。正直に言って面倒臭い」



 急にダラけたように見せているが、どうやらこちらが素らしい。ならばこっちも砕けようと適当に力を抜くミク。それを見て嬉しそうな顔をする皇帝。どっちもどっちな気がして溜息を吐きそうになるナナ。



 「とりあえず、お姉様が何を申されても構いません。この場は何の問題も無く、誰も気にしないと決まっておりますので……。そのうえでお姉様にお聞きするのですが、昨夜から皇妃様がおかしいのですが心当たりは?」


 「………」


 「あー、まあ急に言われても無理だわな。アロンドゥル・ズェン・フィランオルドの名において宣言しよう。この場で申したあらゆる事で罪に問われる事は無いと。……すまないんだが、この宣言で話してくれ」



 えらく軽い皇帝だが、本当に良いのだろうか? そう思っているとナナが教えてくれたが、皇帝は既に50を越えているらしい。長生きである白耳族エルフを母に持つ為、見た目も年齢的にも若いそうだ。



 「まあ、最悪は力尽くで逃げればいいか。とりあえずだけど、昨夜皇妃が訳の分からない儀式をしてたんで止めて話を聞いたら、ナナを呪う儀式だったみたい。バカバカしいし面倒臭いから、媚薬を大量に注入して放置した」


 「またそんな事を………。媚薬ってアレですよね? 私に使われたダンジョン産の……」


 「ああ、ダンジョン産って言ってたのは嘘。いちいち説明するのも面倒臭いし、本物は余計にややこしいから、あの時はダンジョン産って嘘を吐いたんだよ。アレ本当は神から貰ったもの」


 「「は?」」



 ミクは自前の<鑑定板>と媚薬を出して、皇帝に鑑定させる。それが一番確実だと思ったからだ。室内の騎士が一瞬体に力を入れたがすぐに抜く。なかなか訓練された立派な騎士である。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 <媚薬・神級>


 <※の神>が、とある存在に渡した薬。どんな女性でも耐えられないほどの発情を与え敏感にするが、大量に注入すると人格を破壊してしまい交わる事しか考えられなくなる。そうなった者は元に戻る事はないので処分するしかない。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 「「「「………」」」」



 皇帝もナナも騎士もミクも唖然としている。皇帝とナナと騎士は神の事で、ミクは鑑定結果が微妙に変わっている事に対してだ。まさかこんな事になるとは思わず、微妙に困ってしまうミク。


 状況によって変わるとなると、面倒な事をバラされるおそれがある。少し<鑑定板>の事を考えた方が良いのかもしれない。


 ミクが思考していると、ナナが作ってやったメイスを鑑定しようとしていた。何がしたいのか分からないが好きにさせる。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 <竜鉄のメイス>


 とある存在が、フィランオルド帝国の第一皇女ナナドーアの為に作ったメイス。非常に高品質の竜鉄が惜しげもなく使われており、とても頑丈な物となっている。珠玉の一品。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 <竜鉄のラウンドシールド>



 とある存在が、フィランオルド帝国の第一皇女ナナドーアの為に作った盾。竜鉄をとある存在が作り、残りの部分は<※※の神>が助言をし、創半神族ドヴェルクが作製して完成させた品。珠玉の一品。



 ■■■■■■■■■■■■■■■



 「「………」」


 「やはり……。これで鑑定結果の<とある存在>が、お姉様である事は間違いありませんね。何故私の名前は出るのに、お姉様は<とある存在>としか出ないのでしょうか? 神様とて<○○の神>とは出ていらっしゃるのに……」


 「さあ? 鑑定結果がどうなのかは私も知らないから、どうなっているのかは分からないよ。それはいいんだけど、ここに連れて来られたのは皇妃の話をする為だけ?」



 <鑑定板>と媚薬を仕舞いながらミクが聞くと、慌てたようにナナが首を横に振る。すると横に座っている皇帝が話し掛けてきた。



 「他にも聞きたい事が幾つかある。我が国のペイダ町にて、絶世の美女が町全体に殺気を振り撒いたと報告があった。それとスラムの裏組織を監視させていたんだが、今日の朝にはもぬけの空になっていたそうだ」


 「ペイダ町の殺気は私だね。朝食を食べていた時に兵士についてこいと言われたんだよ。朝食を食べてからだと言ったら、私の食事を全て床に叩き落としやがったの。今思い出しても腹が立つ!」


 「ああ、うむ。……少し殺気を抑えてくれると助かるのだが?」


 「ごめん、ごめん。スラムの組織だけど、こっちは神聖国系の組織だからブッ潰しておいた。今まで、王国、商国、魔導国でも神聖国の裏組織は潰してきたからね。これで周辺国に神聖国の裏組織は無くなった筈だよ」


 「ありがたいと言えば、ありがたいのだが……。いったい何をやっているのかと、呆れてくるな。一歩間違えれば<幸福薬>で狂わされるかもしれんのだぞ?」


 「多分大丈夫だと思うけどね? それに周辺国の組織もブッ潰したから、後は神聖国に直接乗り込むだけだし。諸悪の根源とも言える<神聖教>の教皇をブチ殺せば終わるよ。ソイツが<幸福薬>で支配してるんだからさ」


 「「「!?」」」


 「知らなかった? 神聖国は<神聖教>が裏で支配してる国だよ。そのうえ<神聖教>の教皇は悪魔だって分かってる。精力絶倫の悪魔だからインキュバス系なのかな? ソイツを潰す為に、まずは各国の裏組織を潰して歩いてるってわけ」


 「尋常ではない事をしているなー。いや、笑うしかない。ここまで凄まじいとな。言葉は悪いが本当にやってのけそうだし、神聖国をどうにかしてくれるなら大半の事は見て見ぬフリをするぞ」


 「「陛下……」」



 妙な話し合いとなったが、それ以上は向こうも聞く気がなくなったらしく終わりとなった。皇妃は壊れたので、今までやってきた事を含め実家に引き取らせるそうだ。


 そしてナナは城に戻って皇女の仕事を熟さなきゃならない。ミクからしたら御愁傷様と言ったところだ。


 城の入り口まで見送りに来たので、最後にキスをして別れる。笑顔ではあったものの、ナナは泣いていた。その泣き顔を背に、ミクは宿へと戻っていく。


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