表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/500

0129・冒険者ナナ




 「つまり何か? お主はあの有名なスキルである【深衝強撃ショックスマッシュ】が使えるのか。それをさっさと言わんか、それなら………いや、それでも強い事に変わりはないの。それにドラゴンスレイヤーだったとはな」


 「私も聞いた時には驚いたが、ドラゴンを倒せる者ならばグレータークラスの魔物もソロ討伐出来るのだろう。それにハイクラスか、グレータークラスという言い方だった。グレータークラスといえども下位ギリギリであればな」


 「まあ、そうかもしれんのう。とりあえず書く事があまりないが、それが事実なら仕方あるまい。何より<魔窟>であるランク10なんじゃ。中にはお主のような、名を知られていない怪物も居るじゃろう」


 「王国のドラゴンスレイヤーは、<暴風><聖人><閃光><魔女><首狩>か。この五人は全員がランク14だと聞くし、王国にはランク15の<黄昏>が居る。帝国とはあまりにも違いすぎるな」


 「ランクの高さは強さの指標にはなりませんからな。ランク10以降は、何処に強者が居るかも分かりませぬ。それ故に<魔窟>と呼ばれるのです。流石にそう呼ばれる者を軽んじる訳にもいきませぬしな」



 あからさまにナナに対する喋り方が変というか、目上に対する喋り方になっているんだが、ワザとなのか気が抜けているのか。どちらにしてもツッコんでも得は無いのでスルーする二人だった。



 「で、分かったんだったら、そろそろ帰っていい? 私まだ宿もとってないからさ、泊まれなくなったら困るんだよ。そっちが世話してくれる訳じゃないでしょ?」


 「おお、すまんすまん。もう聞くべき事は聞けたから構わんよ。すまなかったな。報酬は本当にナナ殿に渡して構わんな?」


 「構わないよ。金貨が100枚以上余ってるし、端金はしたがねを貰ってもしょうがないしね。じゃあ、私はこれで」



 そう言ってミクはギルドマスターの部屋を出て行く。足下ではヴァルも開いたドアから外へ出て扉を閉めた。ようやく解放されたという思いが強いようで、さっさと宿の部屋を確保しに行くのだった。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ここはギルドマスターの部屋。ミクが出て行った扉をジッと見ていた二人は、溜息を吐いた後、どちらともなく話し始める。



 「爺。あの方を如何思いましたか? 私には裏表の無い方に見えました。というよりも、裏表を作る必要の無い圧倒的な実力を持つ方だと。私にはそう思えるのですが……」


 「姫、ワシもそう思います。あの者は何か……得体の知れないナニカとしか思えませぬ。確かにランク10の実力者なのでしょう。ですが……根本的な何かがズレているとしか思えませぬ。グレータークラスの魔物を、羽虫を潰した程度にしか思っておらぬなど……」


 「明らかに余裕のある態度でした。正直に申せば、いちいち面倒臭いという程度にしか感じていないのでしょう。その程度で叩き潰しておられました。大して力の入っていない気の抜けた一撃で、グレータークラスのコボルトが死ぬのです」


 「滅茶苦茶だとしか言えませぬな……それですが姫、よく御無事で。もう少しで、この爺めが首をもって詫びねばならぬところでございましたぞ」


 「止めて下さい、爺。とはいえ、此度ばかりは生きた心地がしませんでした。まさかアレほどの怪物が、こんな町の近くにいるなど……何か作為的なものを感じなくもありませんが」


 「それですがな、姫。暗躍している者の目星がついていない訳ではありませぬ。しかし、グレータークラスの魔物を連れてくる。または人為的にグレータークラスの魔物を作るなど、果たして出来る事なのか……」


 「グレータークラスの魔物を連れてくるなど、あの方以上の力がなければ無理でしょう。となるとグレータークラスの魔物を作り上げるという方法ですが……そんなものは古今東西において、聞いた事がありません」


 「ここ最近、神聖国に関わる者どもが暗躍しているという情報はあります。あの国は<幸福薬>を使うロクデナシの国ですからな……もしかしたら魔物に<幸福薬>を使ったのかもしれませぬ。しかし、あの者は……」


 「ミク殿は関係ありませんよ。もしそうなら、あの方が私の命を奪うか誘拐した方が遥かに早いでしょう。わざわざグレータークラスのコボルトを用意する必要もありません」


 「ですな。しかし、あれ程の強さの人物が今現れたというのも……」


 「私が探ってみましょう。既に皇位継承権も返上しているのです、私が居なくなっても問題はありません」


 「姫。左様な物言いはお止めくだされ。姫の希望と政治の事情でございます。政治はともかく姫の希望は姫の責任ですぞ? しっかり生きていただかねば困ります」


 「分かっていますよ、爺」



 こういった遣り取りも城に居る間は難しかった。今でも城を出て良かったと思える理由の一つです。………さて、ミク殿は我が国に何をもたらす方なのでしょう? 斜陽か破滅か、それとも栄光か。


 あれ程の実力の方が何の運命も背負っていないなど、あり得ませんからね。私の力で計る事が出来れば良いのですが……。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ミクは宿の部屋を確保した後、すぐに酒場に行き夕食を注文していた。少し早かったのか時間が掛かるようだが、ミクは気にしていない。そうして待っていると、酒場にナナが現れてミクとの相席を頼んできた。なので了承する。



 「すまないな。ギルドマスターとの話に随分と引っ張ってしまって。私もようやく報酬を受け取って解放されたよ。とりあえず私も食事を注文しよう」



 そう言ってナナは食事と酒を注文した後、こちらに話し掛けてくる。ミクは適当に聞きつつ相槌を打ちながら、運ばれてきた食事を食べていく。少し鬱陶しさを感じるも、やはり食べる事はミクにとって癒しである。


 機嫌はそこまで悪くならず、気分も良いままだった。そのまま食事を終えて帰ろうとすると、ナナに宿を聞かれたので答えたのだが、どうやらナナも同じ宿だったようだ。なので二人一緒に帰る事にする。



 『主。この女は少々あからさま過ぎないか? 確実にこっちを探ってきているぞ。それにギルドマスターの態度がおかしいし、門番の態度もおかしかった。主も気付いているだろうが……』


 『ほぼ確実に貴族か皇族だろうねぇ。私にいったい何の用があるのか、それとも何かを探っているのか。ま、どっちでもいいけど、折角だからここ最近やっている事で化けの皮を剥いでみようかな?』



 ミクは少々聞きたい事があると言ってナナを部屋へと招き、ナナも聞きたい事があるらしく了承した。アイテムバッグからお酒を出してコップも二つ出し、お互いに乾杯して飲み始める。当然ミクにアルコールは効かない。


 今飲んでいるワインは商国のワインで、テオッソ町の質の良い物である。ナナも初めて飲んで美味しいのか、それなりに進んでいるようだ。チーズや干し肉も出しながらミクは聞いていく。



 「ナナはさー、貴族か皇族だよね?」


 「ブッ!?」


 「いきなり聞くのは反則だったかな? でもね、門番からしてダメダメだよ。ランク10の私の登録証より緊張して確認してるし、ギルドマスターは途中で言い直すしさ。私からすれば、むしろバラそうとしている様にしか見えない」


 「………ハァ、そこまで酷いものでしたか?」


 「その喋り方が素というか元々なんだね。自分が楽な喋り方でいいよ。さっきまでの喋り方、必死に作っている感がアリアリだからさ」


 「………そんなに駄目なのですか。頑張っているのですが」



 アレで? と思い、呆れるミクとヴァルだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ