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0011・カレンの屋敷




 ミクは迷う事も無く、町で一番大きな屋敷に移動し、その門前に居た。周りには門番も居ない為どうしようか迷っていると、中からメイドの格好をした女性が出てきて問いかけられる。


 ミクが素直に自分の名前を言うと、向こうは門を開け中に案内を始めた。どうやらミクの事は伝わっていたようだが、どの様な方法かミクは分からない。


 屋敷の入り口まで30メートルほどあり、田舎の屋敷にしては敷地面積が広く豪華な屋敷である。この町には大きな屋敷が二つあるが、そのうちの一つは代官の屋敷。つまり、クソ豚の屋敷ハウスという事だ。


 中に案内されたミクはそのままメイドについていく。案内された場所は応接室の様な部屋で、そこでゆっくり待っていれば良いらしい。別のメイドが紅茶とお菓子を持ってきたので、暇なミクは少し飲んでみた。


 特に美味しくも不味くもない物だったので、紅茶を置いてお菓子を食べてみる。まあ、こんなものじゃないの? という味だった。暇になったミクは、カレンが来るまでソファーに寝転び停止する事にした。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「貴女は他人ひとの家で何をやっているの? それとも眠かったのかしら?」



 若干怒りを込めた口調で寝ているミクに話しかけるカレン。すると、ミクは目を開き起き上がった。人間種とは違う為、ミクには起き抜けの眠たさや微睡まどろみなどは存在しない。停止と起動だけである。



 「違うよ。そもそも私寝ないから、眠たくなる事が無い。本体はずっと起きてるし、この体は停止させるだけ。そもそも、コレはそういう物でしかない。それと停止させていたのは、本体でガントレットを弄ってたから」


 「………そういえば、そもそも眠る必要すら無かったのよね。お腹も空かず、眠たくもならず、疲れもしない。食べるのは本体の肉の量を増やす為。まさに怪物としか言い様がないわね。貴女、無敵すぎない?」


 「一応前にも言ったけど、神連中には勝てないから無敵ではない」


 「言ったのは私だけれど、そんな天上の事は聞いていないし、当然だとしか思えないわよ。神様ですら勝てないなら、どうしようもないじゃないの。……それで、ガントレットを弄るってどういう事?」


 「ジャーン。さっき完成したばかりの、新しいガントレット! 握り拳の部分に鉄の爪を付けてみました。後、ロングソードを分解して融合したから、その分だけ重くなってるよ。私にとっては軽すぎるけど……」


 「ああ、爪の付いたガントレットにしたのね。稀に使っている奴が居るわ。大抵の場合はガントレットを防御に使うから、爪は付けないのよ。何処かに引っ掛かって邪魔になる事もあるから」


 「ふーん。私の場合は…………コレもしかして、普通に分厚くして殴った方が早い?」


 「貴女の人外パワーの場合、殴った方が圧倒的に早いわね。どうせ一撃で敵は死ぬだろうし、無理に爪を付ける意味は無いでしょう。それに骨を飛ばせるんでしょ? 尚の事、意味が無いと思うわ」


 「んー……残念。ちょっと格好良いと思ったけど、使い辛いんじゃ作った意味が無い。素直に諦めて、その分殴りやすいガントレットにしようっと」


 「そもそも防具を着けなさいよ。必要無いんでしょうけど、一応格好だけでも整えなさいって事よ。勿論、貴女が馬鹿を誘う為にワザとやっているのは知っているけれど、鎧も着ていないと……いえ、大丈夫かも。ガントレットを着けるなら」


 「どういう事?」


 「<闘鬼>と呼ばれる、徒手空拳を得意とする人物が居るのよ。ソイツはグリーブとガントレットだけで戦っている酔狂な奴なの。それに比べれば、剣もメイスもダガーも持っている貴女の方がマシね。あの男は素で頭がオカシイから」



 そんな事を話していたらメイドに呼ばれたので、二人とも食堂へと移動する。そこそこの人数が一度に食事が出来る場所で、二人っきりで食事をするミクとカレン。この屋敷に居る執事とメイド二人、実はカレンの眷属らしい。


 その三人は食事中の二人の傍に控えており、話を聞きながら世話をするべくたたずんでいる。とはいえ、マナーも完璧で所作も美しいミクに、カレンも三人もビックリして固まっているのだが。



 「??? ……どうかした? 何か変なところある?」


 「いえ。貴女ああなのに、マナーも所作も完璧じゃないの。ボリボリ食べるって話は何処にいったの? わざわざ三人に控えてもらった意味が無いじゃない」


 「そんな事言われても……。宿のオッサンにも言ったけど、私はコレしか知らない。あの連中に教えられたのはコレだけだし、他の食事の作法? というのは分からないよ」


 「神が教えられたのなら、そうもなるでしょうね……。それはともかく、貴女が泊まっていた宿と言ったら、<閃光のガルディアス>の所ね。あの男も暇人というか、情に厚いというか……」


 「情に厚い……?」


 「あの男は魔境の近くにある、この町の冒険者の死亡率が高い事を知ってね。それで安い宿を経営して泊めてやり、成り立ての若者に色々教えてやっているのよ。その御蔭で死亡率は結構マシになったわ」


 「ふーん……ごちそうさま。ところで、この後どうすればいいの?」


 「ちょっと待って。……マリロット、彼女を私の部屋に連れて行って頂戴。それと、体を拭いて綺麗にしてあげて」


 「!? ……かしこまりました」



 マリロットと呼ばれたメイドは驚いたものの、直ぐに表情を消してミクを案内する。それを見送ったカレンは食事を続けるのだった。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 「宜しいのでございますか? カレン様の話をお聞きする限り、極めて危険では?」


 「そうでございます。この世に3人しかおられない、高位吸血鬼であるカレン様まで殺されかねぬとなれば、あまりにも危険です!」


 「オルドラス、フェルメテ。貴方達の心配も分かるけれど、それは杞憂に終わるわ。少なくとも、神々が監視していらっしゃる以上は問題無い。それに、彼女に協力するようにも言われている。拒否するという選択肢は無いの」


 「かしこまりました。事実であればと申し上げるのは無礼ではございますが、おそらく私どもでは何も出来ないのでしょう」


 「確かに。本当に恐ろしいものであれば、私達でさえ嵐が過ぎ去るのを待つしか出来ません」


 「ええ、でも大丈夫よ。今までの話から、彼女の頭が相当に良いのは分かっているの。あれは理性ある怪物というべき者。でもそれって、私も大して変わらないのよね。圧倒的に実力が違うだけで、私も普通の人間種からは逸脱しているから」


 「「………」」


 「それは横に置いておきましょう。眷属の三人には申し訳ないけれど、学習というか、彼女に教えてもらう事になるから。よろしくね」


 「「は?」」


 「大丈夫、大丈夫。教えるのは異性の誘惑方法よ」


 「「………は?」」



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ミクは案内された部屋に入り、そこのソファーに寝転がり停止していた。現在、本体はガントレットの改良を終え、更にどう改良するかを思考している。ミクはこれが思いのほか好きだった。


 下らない事をダラダラ考え続け、「ああでも無い、こうでも無い」と益体やくたいも無く思考しているのが楽しいのだ。それがミクと言えば終わるのだが、彼女には神に滅ぼされない限り無限の時間がある。暇潰しとしては丁度良いのだろう。


 そんな事をしていると、マリロットというメイドが部屋に入ってきた。手にはぬるま湯の入ったたらいと綺麗な布を持って。


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