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0112・魔導国の倫理観




 商会は終わったので、次はシュテンハイム家へと行く。既に屋敷の位置は聞き出しているので、後は行って抹殺するだけだ。百足姿のミクは一気に移動して侵入していく。相手は伯爵家であるし、ここは魔導国。なるべくバレないように移動する。


 一つ一つ部屋を探りながら移動していき、豪華な部屋があったのでそこに侵入。中に入ると夫婦が寝ているらしき大きなベッドがあったので、近付いて脳を操り確認する。すると息子夫婦である事が分かったがコイツらも研究所に関わっていてアウトだった。


 どうも妻側の子爵家も関わっているらしく、思っているよりも規模が大きいかもしれない。夫婦の脳を喰い転送したら、改めて先代伯爵を探す。そう、さっきのが当代の伯爵だったのだが、主導していたのは先代だったらしい。


 そして、まだ3歳の息子は関わり無し。その事は証言で分かっているので、現在は先代を探している。素早く終わらせる為に部屋の場所を聞かなかったのが悪かった。そう思いながらも気配を頼りに探していく。


 見つけたのは奥まった部屋で、中は豪華な寝室だった。そこに夫婦で寝ていたので、こちらも脳を操る。どうやら先代の妻の実家である侯爵家も関わり有りらしい。魔導国にとっては当たり前なのか、それとも一派が暴走しているのか難しいところである。


 それも聞いてみたが、どうやら伯爵家が主導し侯爵一派でやった事のようだ。それが失敗した所為で、侯爵一派は人数が随分減ったとの事。子供を集めて滅茶苦茶な事をしておきながら、それを何とも思っていないとは……。


 脳を喰い転送しながらも、肉塊である自分以下な連中に呆れるミクだった。


 情報にあった侯爵家と子爵家も喰い荒らし、宿に帰ってきたミク。気配を調べると既に吸血鬼の三人は寝ていたので、明日渡せばいいかと思い、ヴァルと交代してベッドで肉体を停止させる。


 ローネとネルは未だに頑張っているようだが、ミクは関わりたくないのかそっとしておくようだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 明けて翌日。起きている事を気配で確認したミクは、吸血鬼主従の泊まっている部屋をノックして呼ぶ。すぐにドアが開いたので入り、挨拶した後にアイテムバッグを渡す。商会長の部屋に置かれていたことを伝えた。



 「ありがとう、ミク。昨夜も三人を探していたんだけど、夜中に動き回っていると兵士に捕まってしまうしで困っていたのよ。まさか吸血鬼と判断されて捕まっていたなんて思わなかったわ」


 「そもそも吸血鬼って強い種族だと思うし、見た目じゃ分からないよね? 何でアイツらは三人を吸血鬼だと判断したんだろう。何か理由があると思うんだけど、そこまでは聞いてなかった。ゴメン」


 「いや、構わないよ。古くから魔力を感知できる者だとバレる事もあるんだ。特に有名な吸血鬼が近くに居るとバレやすい。普通の人間種と吸血鬼では魔紋。つまり魔力の波紋が違うんだ。だから知っている者には【魔力感知】でバレるんだよ」


 「……おおーっ。確かに微妙に違うね。本当に微妙だけど……成る程、こんな方法があったとは知らなかった。どうりで三人が浄化魔法を受けて弱体化させられた筈だよ。これなら分かるから、襲う前に用意したんだろうね」


 「それよりも、まさか三人がグレータークラスにのぼるとは思わなかったわよ。私としてはそっちの方が驚きね。私もそうだけど、そう簡単にグレータークラスには上がれないのよ。嬉しい反面、上がった理由がね……」


 「私達がグレータークラスになれた理由は、理不尽な目に遭いながらも諦めなかったからだそうです。<血の神>はそのようにおっしゃっておられました」



 そんな話をしている最中、ミクは両腕を肉塊にしローネとネルを外に出す。昨日と同じくボロボロになった二人が登場し、その場は何とも言えない空気が漂う。


 それを払拭ふっしょくするように、ミクは食事に行こうと声を掛ける。その声で続々と移動する全員。本当に疲れたのか、色々な意味でボロボロのローネとネルも移動していく。


 酒場で朝食を頼むも、朝から酒を飲む二人。飲まなければやっていられないらしい。気持ちは分かるが、文句は神どもに言ってほしいミクだった。



 「昨日も昨日で厳しかった。地獄のような訓練がまだ終わらない。そろそろペースを落としてほしいのが正直なところだ。神やミクのように疲れない訳ではないのだぞ」


 「私なんて何故か炉が作られて、本格的に鍛冶をする羽目になった。昨日は研ぎとか目利きだけだったのに、いつの間にか創造神様じゃなく鍛冶神様に看られてる」


 「まあ、神どもが納得するまで付き合うしかないね。アイツらあんなものだし、相手の事なんて碌に考えてないよ」



 そんな不敬極まりない事を言っていると、外を慌しく兵士達が走り回っているのが見えた。ローネとネルは気になったようだが、ミクが【念話】で予想を言うと呆れた表情になる。二人の心の中の意見は完全に一致していた。


 あんな事をさせていたなら「そりゃ、殺されるだろう」と。兵士達が入ってきて一人一人確認していくものの、ミクはランク10、ネルはランク9、そしてローネはランク14。流石に高ランク冒険者はそこまで怪しまれない。


 なので多少の質問をされただけで終わる。そもそもミクは動揺もしなければ顔にも出ない。ローネとネルは長い年月での経験がある。結局、兵士を騙すなんて容易たやすい話でしかない。


 朝食後、ローネとネルを宿の部屋に届けたミクとヴァルは、再び今日も王都をウロウロ散策する。ここ魔導国は知識を優先する国らしいのだが、それにいささか寄り過ぎている傾向が強い。


 ミクでさえ神々から倫理を学んだというのに、この国の連中には倫理観が欠如しているとしか思えないフシがある。もちろん全てではないのだろうが、しかし許される一線を超えている者が居るのも事実だ。


 そんな事を考えながらもフラフラ歩いていると、何やら子供が集まっている一角があった。何かと思って見に行くと、どうやら的当てをしているらしい。ダーツに似た物だが中心に近い方が点数が高く、合計得点で貰える物が決まるみたいだ。


 子供達がお金を払ってチャレンジしているが、上手くいかず小さな飴を貰っている。5点以下だと貰えるらしい。何とはなしに見ていると、女の子から声を掛けられた。



 「お姉ちゃん、あれ出来る? 的の真ん中に3回当てると、凄い物が貰えるんだって!」



 それを聞いた他の子も豪華商品を見てみたいというので、ミクは大銅貨1枚を払ってチャレンジする。といっても、肉塊にとってこんな物は簡単すぎる物だ。あっさりと全て的の真ん中に当て、豪華商品をゲットする。


 それは綺麗な装飾の施されたナイフだった。店主はニヤニヤしながら渡してくるが、ミクは一目で呪いのナイフだと分かった。子供達は分かっていないので見せるものの、絶対に触れさせないようにする。


 そのままアイテムバッグに入れて早々に立ち去ったミクは、いったい何を考えているのかと首を捻る。すると本体の空間に<呪いの神>が来て教えてくれた。それは<発情>の呪いが掛かっていると。


 ミクはそれを聞き、成る程と理解した。どうして店主がニヤニヤしていたのかもだ。ミクには呪いが効かないので意味が無いが、あまりにも悪質なので覚えておく事にする。場合によっては殺そうとすら考えているのは、子供達が居たからだ。


 この国は街角にすら倫理観の無い奴等が居る。正直に言って商国より汚い国だと言わざるを得ない。そう考えるミクとヴァルは間違っていないだろう。


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