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0109・ヴァルドラース達との話し合い




 食事をしながら、ある程度の情報をネルに教えていく。カレン達の事、ヴァルドラースの事。説明されて初めて納得したネル。理解できるだけの情報が無いと、やはり理解は難しかったのだろう。



 「成る程。こちらの大陸にはアーククラスもの吸血鬼が居て、正しい貴族のように領地を持って維持していたと……。それは凄い。言葉は悪いけど、東の大陸は乱世。少しの間は平和だったけど、また乱世になった」


 「へー、良い事聞いた。こっちが終わったら東の大陸に行ってみようっと。乱世だと肉が沢山食べられそうだし、襲ってきてくれる奴も多そう。私にとっては楽しみな所だね」


 「そういえば東の”大陸”と言っているが、どうやってこちらの大陸に来たのだ? まさか船で来たのではあるまいな。あんなもの、いつ海の藻屑になるか分からんぞ」


 「ちゃんとした航路がある。一年に一度しか使えない航路だけど、そこを使えば大陸間を移動出来る。海竜が一年を通して移動しているから、十分に離れた時がチャンス。それ以外の季節は無理」


 「ほう。かつて帝国の東にある国に行った事があるが、海の向こうに大陸があるなど聞いた事が無かったのでな。あれは……600年くらい前だったか? 気紛れで一度行っただけだからな、あまり覚えていないが……」


 「………600年も経っていたら航路の一つや二つぐらい出来ていて当たり前。それよりも、ミクの為すべき事を考えると神聖国へは行かなくちゃいけない。そして、その前に周辺国で暗躍している者を潰すのは正しいと思う。でも、どこまでやる?」


 「徹底的には無理だね、喋らせても限度はあるし。それでも壊滅と言えるくらいに追い込めば、後はその国の裏の奴等が何とかするよ。連中だって神聖国がのさばって納得している訳じゃないし」


 「だろうな。こちらがやれば済む程度で構わんだろう。一から十までやってやる必要もあるまい。やったところで誰の為にもならん。喫緊にやるべき事は、ここ王都デウスを調べる事だ。特に裏組織などをな」


 「この国は研究所の事もある。ついでに潰せる所は潰しておいた方が良いかもしれない。ミクにとっては喰える肉が増えるだろうし、神々も人体実験は許さないと思う。ここの連中は流石にやり過ぎている」


 「昔からある事とはいえ慣れていい事ではないな。それにレアスキルを使い熟す子供が現れんとも限らん。スキルとて限度があるが、上手く使われるとミク以外は殺されかねんから注意が必要だ」



 酒を飲みながらする会話ではないが、基本的に酒場では他人の与太話など聞いていない。仮に聞かれていても内容が内容だ、まともに受け取りはしないだろう。そんな会話と食事に酒を終えて、ミク達は宿に帰る。


 宿のロビーにはオルドラスが待っており、一人だけ食事を先に終えて戻ってきていたらしい。御苦労様だなと思っていると、後ろからヴァルドラース達も来た。同じ二階の部屋だったので一緒に行き、一番奥の広い部屋に入る。


 ミク達の部屋は階段に近い部屋だ。ヴァルドラース達の部屋に入ると早速話していくが、まずはミクとヴァルで話していく。



 「まずは私達ね。私はロキド山を越えて商国に入ったんだけど、ロキド山に商国の特殊な騎士隊が来てた。デスホーネット地帯を見て慌てて逃げて行ったよ。まあ、仕方ないんだろうけどね」


 「それはそれでしょう。デスホーネットって言えば致死毒の蜂よ? 刺されたら死ぬしかないじゃない。そのうえ山なんだから、万能薬でも持たない限り助かる確率はゼロ。当然だけどね」


 『逃げて行ったのは男四人の女一人で、女が隊長だった。そいつらにはローミャという町の食堂で襲われてな。主は睡眠薬で眠ったフリをして連れて行かれた。まあ、相手の女がフェルーシャだったのだが』


 「はあ? フェルーシャが騎士? 何でアイツそんな事をしてるのよ。それ以前に国に雇われてるっておかしいでしょ。アイツは裏組織<淫蕩の宴>のトップの筈よ。昔襲ってきた奴に拷問して聞きだしたもの」


 「それがね。フェルーシャは商国の建国に深く関わってるらしく、<淫蕩の宴>は見逃されてたよ。それと商国内では女性を攫ったりしてなくて、娼館の経営をしてるみたい。他の組織に比べても健全な経営をしてるんだってさ」


 「成る程。<淫蕩の宴>は他国では暗躍を、自国では真っ当な商売をしているのですね? それなら大手を振って生きていられるのも分かります。ただ、何故騎士をしているのかは分かりませんが……」


 『他国に対する破壊工作員だな。建前上は騎士の位にあるだけだ。実際には<淫蕩の宴>の支部を作ったりとかしてるんだろう。本人も裏の騎士だと言っていたしな。ちなみにカレンを襲ったのは位階を上げる為だったようだ』


 「そうそう。魔界のサキュバスの女王がアーククラスらしいんだけど、それを越える為に力を求めてたんっだってさ。それで色々なものを溜め込んでたカレンをターゲットにしてたみたい。今は止めたけどね」


 「えっ!? あのしつこい奴が止めるなんて……何かあったの?」


 『単に強くなる方法が間違っていただけだ。サキュバスが強くなるには、性的な戦いでの負けが必要らしい。負けても尚サキュバスであらねばならないそうだ。その負けの経験が無いから強くなれないと、淫欲の女神が言っていた』


 「ああ、神に言われたのなら確実だろうね。しかし、負けの経験が無ければ強くなれないか……。私も過去に幾度も負けた事があるけど、その度に強くあろうとしたのは正しかったようだ」


 「アーククラスにのぼるには色々な経験が必要なのであろう。フェルーシャとやらに必要だったのは、後は負ける経験だけだった。そういう事だろうな」


 「それ以外にも<怪力>とかいう奴を殺したり、その護衛をしていた奴から色々聞きだしたよ。神聖国は王も貴族も<幸福薬>を使われてるってね。王妃や側妃は代々<神聖教>の慰みものなんだって」


 「「「「「「………」」」」」」



 それは初めてだったのか、ネルも唖然としながら聞いている。ただ、ネルは悪魔が教皇なのを知っているので納得したが、吸血鬼主従は驚いたままだ。気持ちは分からなくもない。完全に国家として狂っている。



 「その後は森で<人形>とかいう<死霊使い>に勝ったり、娼館の用心棒をしたりだね。その時に神聖国の裏組織である<清浄なる祈り>とかいうのを潰したよ。コイツら薬で狂って突撃するだけの連中だった」


 『敵を殺す為だけに組織された、頭の狂った奴ばかりの組織だな。仮に捕まっても頭のオカシイ事しか喋らない狂人ばかりだ。<幸福薬>を使われずに狂っている奴もいたな』


 「そんな頭のオカシイ奴等がね……本当に面倒で厄介しかない国ね。ヴァルドラース様の領地を奪い、そんなクソみたいな国を作るなんて許せないわ」


 「後は……鬱陶しい<闘鬼>を血祭りにあげて、商国のダンジョンを攻略して聖霊水を手に入れたんだっけ。で、王女の呪いを治して商国を出たんだよ。王国を経由して魔導国に入って、南からぐるっと回って王都に来たの」


 『大分抜けてるな。南の山で山賊のボスを倒して尋問したら、その昔研究所でレアスキルを発現した者だったんだ。持っていたのは【危険予知】。で、他にも【剛力】【魔力過剰】【気配断絶】【高速回復】【心情看破】【生命探知】を持った奴がいる事が分かった』



 流石のレアスキルに吸血鬼主従も驚くのだった。どれも強力なスキルであり、使い熟せれば非常に厄介だからだろう。しかし使い熟せない可能性に思い至り、すぐに冷静な顔になった。


 この国も碌でもないと共有できたようだが、その後も話は続く


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