0103・山賊のボスと研究所
「大量に集められた子供の中で、特に強力なスキルにはどんなのがあった? 出来る限り思い出して一つずつ答えて」
「【剛力】【魔力過剰】【気配断絶】【高速回復】【心情看破】【生命探知】………これ以上は無かったと思う。後は普通のスキル類が殆どだった。スキルを発現しないガキは殺されたので、生き残ったのは俺達だけだった筈」
「ふーん……分かった。それじゃ、後はアジトの場所と、隠したお宝の場所ね」
それらを聞き終わったミクは山賊のボスを喰らう。大した物も持ってなかったので捨てて行き、ミクは小屋を出て【火魔法】で小屋を燃やす。周辺の木で作られたであろう小屋は簡単に燃えていく。
燃え尽きるのを確認する事も無く、ミクは服を着てもう一つのアジトの方へと向かう。それは山の中腹辺りに隠されていた洞窟で、非常に見つかり難い場所にあった。そこへと入っていくミク。
中に入って幾つか分かれている道を左端へ行くと、食料庫があったのだが虫が集っていた。なので諦め、中央から奥へ行く。ここはボスの部屋なのだが、こんな所に宝を隠してはいない。ただし、ここにある物が必要だ。
ミクにとっては無くてもいいのだが、一応持っていく事にしただけなのだが。……部屋の端を多少掘ると麻の袋が出てきたので、中から鍵を取り出す。それが終わると洞窟を出て、洞窟の上を真っ直ぐ登っていく。
ある程度の距離を登って行くと、草むらの中に麻の袋に包まれた物があった。麻の袋から大きな箱を取り出して、鍵を開けて蓋を開ける。中には大金貨と地図があった。この地図は魔導国の研究所があった場所を示している。
山賊のボスが子供の頃に囚われていた場所だが、それぞれに何かがあった場合、ここに集まる事を約束したらしい。研究者を皆殺しにし、金品などを山分けにした後で約束したそうで、山賊のボスは忘れないように地図に書いたようだ。
それにしても有用なスキルを無理矢理に発現させても、そのスキルで殺されるんじゃ意味が無いだろうに。魔導国というのも存外に頭が悪いなと思うミクだった。
手に入れるべき物は手に入れたのでヴァルを呼びだし、乗ってヴォリデ町まで戻る。その最中にクレイジーモンキーを発見、殺して喰らう。ヴァルは「ソイツを喰うのか?」と言ってきたが、ミクは一度は食べてみる主義だ。<穴掘り猿>でも気にしない。
食べてみるも特に美味しくもマズくもない魔物だったので、好んで食べる事は無いだろう。ちなみにクレイジーモンキーはミクに欠片も反応しなかった。どうして人間種の男にしか反応しないのか欠片も理解出来ない。同族の雌には反応するのにだ。
ヴァルは考えるのを止め、ミクを乗せてヴォリデ町へと戻っていく。途中で馬車が山道を進んでいたが、こんな時間に進むとはどういう事だと訝しがるミクとヴァル。声を掛けてみると異常な程に警戒された。
その後すぐに表情を変えたものの、明らかに過剰な程の警戒だった。聞くと、急いでいるので必要以上に警戒してしまったらしい。レットン商会の馬車らしく、魔石を乗せて運んでいるのも警戒している理由だそうだ。
ミクとヴァルはそこで別れたが、ある程度離れたら蝶の姿になって鱗粉を撒く。あっと言う間に麻痺した連中のうち、商会の者から話を聞くと犯罪を知っていた。周りの護衛は何も聞かされていない冒険者だったので、少し脳を弄る。
短時間の記憶を忘れさせて眠らせると、馬車に詰め込んで放置。商会の者を全員喰らったら、馬に万能薬を注入してからアイテムバッグを転送し、女性形態に戻って服を着る。馬は驚いているが無視し、ヴァルに乗って今度こそ町に帰る。
あのレットン商会の馬車は小屋のある山越えのルートを進むつもりだったらしい。何でも堀と壁のある場所があり、そこで休む形で山越えをする予定だったそうだ。頻度は多くないが、偶には居るらしく珍しくはないと言っていた。
実際には堀と壁のある場所で、山賊を殺した冒険者と落ち合う予定だったようだが……。既にミクが殺して喰らっている為、永遠に合流は出来なかったろう。
『それにしても、商会はともかくとして国は碌な事をしてないな。子供を研究所に集めて実験など、無理にスキルを発現させても意味など無いというのに。目に見えるものに騙されているとは』
『いいんじゃないの。魔導国とか自称してる癖に滑稽なのを証明してるんだからさ。間抜けには丁度良いと思うけど?』
『まあ、それはそうなんだが……。そもそもどんなスキルでも使い熟せるか否かで大きく変わるというのに、それにすら気付かずレアスキルを凄いスキルとでも思っているのだろうな。主の言う通り間抜けすぎる』
スキルというのは使い熟せないと意味が無い。何より山賊のボスも【危険予知】というスキルを使い熟していた。だからこそ麻痺毒を散布されて直ぐに動いたのだ。使い慣れていなければ戸惑うだけで麻痺していただろう。
そういう意味でも使い熟せるかどうかで大きく変わってくる。子供の内に発現したスキルは、この使い熟すというのが難しい。当たり前過ぎて改めて考えないし、子供はすぐに飽きる。そういう意味でも使い熟せる者は稀だ。
それに子供の頃にスキルを手に入れると、それ頼りになってしまう為、他のスキルが発現し難くなる。そういう意味でも無理に子供の内からスキルを発現させるべきではないのだ。早くとも12歳ぐらいまでは止めておくべきである。
ヴォリデ町に戻ってきたミクとヴァルはギルドで獲物を売った後、食堂に行き夕食を注文。席に座って待っていると、ドレス姿の女性が店に来て歌い始める。
女性の前には小樽が置いてあるのだが、そこに客がお金を入れているのでミクも銀貨を一枚入れた。女性が少し驚いた顔をしたが、ミクは気にせず席に戻り食事をしていく。女性は三曲ほど歌うと店を出ていき、今度は男性が入ってきて歌い始めた。
ミクも食事を終えると宿に戻ろうとしたのだが、食堂の前で先ほどの女性が待っていてミクについてくる。何故か分からなかったので聞いてみると、自分を買ったんじゃないのかと逆に問われた。
詳しく聞くと、ああいう歌い手に銀貨を払うのは一晩相手をする意味に取られるそうだ。だから女性はついてきたらしい。ミクはそんなつもりは無かったので別にいいと言うと、女性は銀貨を返してきた。
知らない人の場合は返さなければいけないらしく、そういうルールがあるんだそうだ。守らないと仕事が出来なくなってしまうので仕方ないと、女性も笑っている。つまり、銀貨を返してもらうか相手をしてもらうかしか無いらしい。
なのでミクは相手をしてもらう事にした。女性も驚いたが、ヴァルも驚く。ミクとしては普通の女性とは? と気になったから頼んだだけなのだが、そこまで驚く事だろうかと思っている。
ヴァルは納得したが、女性はあたふたした後に顔を真っ赤にして部屋の中までついてきた。
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媚薬は使っていないものの、何となくではあるが普通の女性を理解できたミク。むしろこういう相手と経験をした方がいいのか? と思うヴァルだった。
尚、相手の女性は大満足してミクより先に寝ているようだ。それはいいのだろうか?。
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一夜明けて朝。起きた女性はミクを見て先に寝てしまった事を悟ったが、その後すぐにミクは起動した。女性は謝ってきたがミクは気にしていないと伝え、ベッドから離れて備え付けの椅子に座る。
その姿を見て固まる女性。今のミクは全裸であり、非常に美しく絵になる姿だった。昨夜、自分が相手をした人物の美しい裸体を見て惚けてしまっている。昨夜は暗く、ハッキリとは見えていなかった。
実はミクは意図的に行動をしているのだが、それを知っているヴァルは呆れている。どうやら順調に誘惑する技術は向上しているらしい。若干意味が違うような気もするが。




