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0101・ウィルズデア魔導国




 次の日。王都ヨースを出発した二人は、ロキド山の北にあるローミャの町に戻るべく移動していた。周りの目を気にした速度ではあるものの、それでも圧倒的な速さで戻る。更には夜も移動を続けた為、二日で王国の王都ロンダに辿り着いてしまう。


 王都ロンダに泊まって休んだ後、ゼルダやロディアスには挨拶せずに一気に進む。王都から東にマスノ町、アウェア村、スウェロ村、ロッキ町。南東にシフォ村、セエド町。そして北東にキンダ村、ゼトン町とあって東に国境。


 ここまで二日で来た。そもそも王都から一日でゼトン町まで行っており、朝も早くから国境に居るのだ。尋常な速さではない。国境に進むと大きな砦があり、その横に大きな石造りの門がある。


 そこを通って行く訳だが、ランク10の登録証だからか簡単に通れた。アイテムバッグの中も特に調べられてはいない。まあ、そこまで調べていたら時間が幾らあっても足りないだろう。なのでそれは分からなくもない。


 だが、登録証であるプレートを見て名前を聞かれただけで通れたのだ。簡単すぎると思っても無理は無い。とはいえ、通れたものは通れたので先を進む。ここから東に行けば町があるみたいなので、まずはそこへ行こうとヴァルと話す。


 ヴァルの背に揺られていると、町の壁が見えてきた。それなりに高い石壁と堀があるが、どうやら狭間が空いているらしい。狭間とは城の壁などに空いている隙間の事で、そこから矢などを射るのだが。この町の壁には空いているのだ。


 魔導国だから何らかの魔道具でも撃つのだろうか? そんな事を考えながら列に並び、登録証を見せて町の中に入る。一応見て回るものの、特に見るべき物も無いので冒険者ギルドへ。受付嬢から地理を聞く。



 「ウィルズデア魔導国には二通りの道がありまして、首都デウスに行くには北側のルートの方が楽です。南側は山越えをせざるを得ないうえ、山賊が出ているという情報もありますので……ギルドとしては北をお勧めします」


 「ありがとう。それじゃあ」



 ウィルズデア魔導国は左右に長い国だ。国の東側は帝国に接していても神聖国には接していないほどである。ミクはヴァルドラース達は北へ行ったであろうと読み、南のルートを選択する事にした。同じルートを行っても仕方ない。



 『主は山賊の一言で南に決めたんだろう? 別に悪い事では無いと思うが、人前では言えんな。この町から南のルートは大変だが、代わりに魔物も北より強いものが多く、魔石も良質の物が手に入るらしい』


 「だからこそ魔石を運ぶ商人が居て、それを狙う山賊が居ると。ただ、商人もそれなりに護衛を雇ってると思うんだけどね。それよりも山賊の方が強いのかな? それはそれで楽しみだけど、どうなんだろ?」


 『主が戦って納得できるような相手が居る訳ないだろう。むしろ居た方が問題だ。そこまでなら人間種には対処不能だからな。ヴァルドラースですら人間種には対処不能だというのに……』


 「そういえば、そうだったね。それなりの強さだったヴァルドラースでも人間種にとっては駄目かぁ……」


 『ヴァルドラースも普通ならば、もしかしたら……という感じなんだが、主の肉を与えられているからな。【浄化魔法】も<呪い>も効かないのであればどうにもならんだろう。吸血鬼に毒は効かないしな』


 「<石化>とか<呪縛>とか<忘却>は呪い系だしね。まあ、私にもさっぱり効かないっていうか、私の方こそ何も効かないかー」



 そんな話をダラダラしつつ南ルートを進んでいると、最初の村であるフモイ村を発見。今日はここで情報収集をしようと中に入る。門番に登録証を見せて中に入り、宿に行って一人部屋をとった。


 村に暇をしている人は少ないが、それでも居るので話を聞いていく。特に山賊の話を重点的に聞いて行き、冒険者ランク10である事も言うと、意外に喋ってくれた。どうやら山賊は有名で、多くの冒険者が返り討ちにされたらしい。


 中には帰ってこない者もいて、慰みものにされたか殺されてしまったんだろうと言っていた。ソック村、ビノ村を越えてヴォリデ町の東にアレンム山があるそうで、そこを山賊どもが根城にしている。


 そこまで聞ければ十分なので、あとは村の中でのんびりしていた。夕食後、宿の部屋に戻って休んでいると、ドアの閂を開けようとしている奴が居る。外から開けた奴は中に入って来たのだが、当然ミクはこちらに意識を移していて準備万端だ。


 誰かは知らないが、麻痺毒を散布するとあっさりと麻痺して倒れる。すぐに扉を閉めて確認すると、この宿を経営してる夫婦の娘と男が三人だった。脳を操って聞くと、どうやらミクを売り飛ばそうと考えていたらしい。


 今までにも五人ほど売った事があるそうで、完全にアウトだった為<幸福薬>で洗脳した。前の組織と同じく善行を行わせる洗脳なので、後は放っておいても悪事を働かないだろう。欲のままに善行を行うという洗脳は怖ろしい。


 後は意識を失わせ、その間に宿の外に捨ててくる。本人達は何故宿の外で寝ているのか分からないし、覚えていないだろう。これで終わりだ。犯罪者を食べていないが、山賊が喰えるので気にしないミクだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。フモイ村を出発した二人は一気に進んでヴォリデ町まで来た。ここで再度情報を集めつつ昼食を食べて、アレンム山へとアタックする。山賊が目当てではなく、山の魔物が目当て……という風に見せる為に狩りを行う。


 ミクも簡単に山賊が見つかるとは思っていないし、仮に見つけてもアジトを探し出さないと逃げられてしまう。脳を操って情報を引き出してもいいが、相手の事が何も分からないままでは策も立てられない。


 なので、今日は情報収集に留めるつもりだ。町に入ったミクは、宿に行って部屋を確保した後、町で山賊の情報を集める。幾つかあったが、気になったのはコレだ。



 「山賊が出るって言われてるけど、何故か山賊っぽい奴が物を買いに来たりしないんだよね。山向こうのギュント町に言ってるのかもしれないけど、そんな話も聞かないし。山賊が居るなら、どうやって食料を補充してるんだろう?」



 町の人の指摘だが、確かにその通りだ。山賊といったところで人間種である以上、食べなければ当然死ぬ。にも関わらず、山賊っぽいのが食料を買っている形跡は無し。襲った馬車の食料を得るにしても限度があるだろう。


 毎日は襲えないだろうし、そんな事をしていたら討伐隊を組まれる。本当に山賊なら正規の軍人には勝てないのだから、討伐隊を派遣される程には荒らさないだろうし、現にそこまで荒らしてはいない。


 色々不自然で余計に見えてこないが、町の情報で全て分かるならば、とっくに冒険者に討伐されている筈だ。しかし冒険者は負けて、帰ってきていない者まで居る有様である。ミクもヴァルもしっくりこないが、とりあえず山に出発する。


 そこまで大きな山ではないし、ヴォリム町はアレンム山の麓にある。その為ロキド山とは違い、休憩所のようなものは無い。なので、ヴァルに乗りながら感知系五種のスキルを使い、丁寧に確認していく。


 途中で狩りの言い訳用の魔物を倒しながら収納し、残りを喰らっていると妙な集団を見つけた。ヴァルと顔を見合わせ、感知範囲ギリギリの集団に百足の姿で近付く。ヴァルは既に大元へと戻った。


 集団は七人だが、集まって何かを話している様だ。ミクは木の裏からそっと確認しつつ、怪しい連中の話を聞いていく。


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