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ギルドなスクールのヤツら 4

ジョブごとに用意された汎用装備を身に付けた俺達、今期入校者全員は、高価な転送門(てんそうもん)を使ってヨバーンの町近くのギルド所有の野外演習場へ着ていた。

転送門なんかがある施設から出ると雨の中『雨具使用禁止』の謎ルールで歩かされ、広大な演習場が見下ろせる高台まで来ると俺達は絶句したっ。


ゴーレムだ。虫型、獣型、人型・・様々な形状のゴーレム達が400体くらい? ビッシリと演習場に配置されていた。どう見ても家事や労働用の個体じゃないっ。

演習場自体にも特徴があり、何か魔法的な効果の付与されてるらしい番号付きの円柱状のスポットがいくつも場内に造られていた。そこにはゴーレムは配置されていない。

ギルド職員は十数名いたが、スエリア領支部のギルドマスターの褐色の肌のエルフ族の男が珍しく来ていた。ワーライノのムキムキ教官と、座学の講義でしか見ないオーガ族の眼鏡指導官も来ている。

運営側も誰も雨具を使ってない辺りがギルド的だな、と。

つーか、眼鏡見辛くない?


「今から『特殊状況対応実習』の現時点での総括を行う」


ギルドマスターが口を開いた。


「期限は最大1時間。お前達はそれぞれ演習場に点在する『安全地帯』のいずれかにたどり着けばこの実習は終わりだ」


ザワつく俺達今期生達。大雑把過ぎじゃね?


「ただし、事前に登録した小隊(パーティー)の編成に対するゴーレム撃破数や終了のタイミングの適切さ、どの安全地帯を選択するか? 諸々審査する。評価がD以下のパーティーは補習だ。Cは任意とする」


ますますザワつく俺達っ。ややこしい実習だった!


「開始は10分後だ。その間であれば棄権やパーティーの差し替えも受け付ける」


「ビチ〇ソどもっ、授業での治療の保証は『怪我』までだ! 蘇生は3割負担っ、後遺症は一切関知しないっ! パーティーごとの目標設定ミスるんじゃねーぞっ?」


「雨天のこの状況での属性魔法の使用はそれなりの配慮は必要です。わかっていますね?」


マスターや指導官達の言われ、俺達は一斉に自分のパーティーでミーティングを始めるっ。

俺のパーティーは勿論、テオ、ルペサリタ、ラクスミだ。


「ちょいちょいある『デス授業』だ!」


「あ~っ、あたしこの間の取得選択で『サンダーボルト』選んじゃったよっ。忍者っぽかったから! でも今日、つ・か・え・な・い~っっ」


「え? 待って。ゴリゴリ近接乱戦だよね? 俺の体力で装備が『木綿のローブ』と『樫の杖』なんだけど? 棄権していいかなっ?」


「うーん。4人分『プロテクト』の魔法を維持して戦うと『ヒール』の魔法を使う余裕無いかも、ですぅ」


俺達は動揺しまくったが、時間は無い、俺はルペサリタに『クナイ』を2本分けてもらい、回復アイテムは俺とルペサリタが3個持っていた『魔法石の欠片』を1個ずつテオとラクスミに渡した。


「俺達はこっから右手の、18から20番のどれかの安全地帯を目指そう。たぶん荒れる。撃破数で決め込むより『場所』で行こうぜ?」


18~20は全安全地帯の中では中距離のやや外れ、他のパーティーと混線すること自体たぶん減点されるし、そもそも危ねぇからなるべく避ける!


「いいと思うが、攻め切れなかった時も考えて、手前の15~17番もありありで考えとこう! プランBを残しておくのがイケメンの思考だっ!」


「忍具は大体華奢だから『炸裂玉(さくれつだま)』頼りかぁ」


「テオは私の後ろに隠れてなさぁい」


大体、俺達の方針は固まった! その上で、仲いいヤツが多い他のパーティーを探して協議しようと思ってる内に時間切れになったっ。ぐぅっ、



そして雨足が強まる中、特殊状況対応実習は開始されたっ!

各パーティーがそれぞれの思惑で突進してゆくっ。『戦闘型』じゃないヤツらが棄権はせずに、一番近い安全地帯を速攻目指してるのはちょっと痛快でもあった!


「ガガガッ」


「モモモッ」


無意味に喚くゴーレム達は石材ベースで造られてるっ。『形状通り』の性能で、飛行タイプはいないようだ。


「プロテクト×4っ!」


「ライトキューブ×2っ!」


ラクスミが俺達全員に防御魔法を掛け、テオが照明魔法をルート上の最前列のゴーレム達にブチ当てて怯ませるっ。


「ルペサリタっ!」


「よしきた!」


ルペサリタは5個支給された炸裂玉の1つを怯んだ最前列に投げ付けて起爆! 前列を半壊させた! そこに『銅のサーベル』と『革張りの盾』を持った俺が斬り込むっ!


「『エンチャントマナ』! スキル『ヘビィスラッシュ』っ!!」


剣に魔力を乗せ、半壊したゴーレム達を纏めて斬り割いて仕止めるっ。

すぐに2列目が来るがっ、ルペサリタとラクスミが追い付き、テオもラクスミの後ろに必死で付いて魔法で援護するっ!


この繰り返しでガンガン攻めて、16番の安全地帯までは突っ切れたがっ。

雨のせいで体温は奪われ続け、水で身体は重くなり、手足が滑るので無駄に力を使い、視界も悪く、ミスも増える!

俺の銅のサーベルと革張りの盾は耐久値が限界っ。

ルペサリタは『玉系』のアイテムを使い果たし、華奢な忍具類も残りはボロボロの鎖鎌とあんま効かない手裏剣だけ。

テオは樫の杖を折られ、今は予備の『練習生の短杖(たんじょう)』を持ってるが、自慢のイケメン顔を結構殴られて残念な具合になってる。

銅のメイスを二刀流で振り回すラクスミはゴーレムと相性のいい装備なのとパワー型のラクスミ自体がゴーレム達と相性がよく、比較的消耗は少なそうだが、魔力は尽きかけていた。

全員回復アイテムは残り1個程度。

今期生全体の成果でゴーレムの総数は250程度に減ってる感触はあったが、安全地帯に着いて『一抜け』するパーティーも増えてきて、もう一段間が空くとおそらく1つのパーティーに殺到するゴーレム群はむしろ開始時より増えるだろう。

・・潮時、か。


「テオのプランBで行く! 16番だっ。俺が『奥の手』で押し通るっ!!」


「アレ、ヤバいんじゃないの?!」


「2分くらいならギリ、セーフっ!」


俺はルペサリタに言って、回避しつつ蜘蛛型のゴーレムの急所にサーベルを投げ付けて仕止め、最後の回復薬(ポーション)を飲み、盾も捨ててクナイを二刀流で構えた。


「エンチャントマナっ! スキル『獣性(じゅうせい)』っ!!」


両クナイに魔力を乗せ、続けて『獣の本能』を解放するっ! 野生暮らしで感覚を掴み、スクールの訓練でスキルまで昇華した! 感覚とフィジカルが跳ね上がるっ!


「グルルッッ、ガァーーッ!!!」


俺は吠えてっ、一気にゴーレム達を蹴散らして16番の安全地帯までの血路を開くっ。

意識が飛んで、暴走しそうになるがっっ


「落ち着け」


ナスカのツッコミを頭に浮かべて耐えるっ!

俺は一番乗りで16番の安全地帯に飛び乗りっ、その後からメイスをブン回すラクスミを先頭に、錬金術で環境を利用して魔力消費の軽い『水飛沫(みずしぶき)』を連発しているテオを挟み、ヤケクソ気味に手裏剣投げまくってるルペサリタが殿(しんがり)を務め、安全地帯まで到着した!!


「グルル・・解除」


俺は獣性スキルを解いた。クナイも1本は砕けてた。


「はぁ~っ、しんどっ!」


他のメンバーもさすがにヘバっていたが、それでも俺達はこのクソ実習で『B判定』をもらうことに成功したワケだ。よしっ!



・・・9月、骨竜王(こつりゅうおう)の月、地獄の授業を乗り越えた俺達は無事卒業を迎えていた。

入学式と作法の授業以外では着なかった式服を全員着ている。羽根の付いた玉葱みたいな帽子付きだ。


「各種死亡失踪保険は慎重に選ぶように。以上・・卒業おめでとう」


「ビチ〇ソどもっ、式帽(しきぼう)は中古業者が回収するっ!!」


「わぁーっ!!!」


歓声が上がり、皆一斉に式帽を講堂の宙に投げ上げた!


あばよっ、冒険者スクール!!!



その約一週間後、防寒具とスノーシューで固めた俺、テオ、ルペサリタ、ラクスミは極寒の氷属性ダンジョン地下3層の魔除けの野営地を目指し、吹雪の中、凍った坂道を延々上っていた。


「・・洞窟の中でめ~ちゃ吹雪くって意味わからんのだが? なんか明るいし」


マッパーオーブ(オーブに対応したマップと現在地を幻像で映す魔法道具)を手にボヤく俺。


「ダンジョンだからなぁ」


返しがテキトーなテオ。


「・・・」


ルペサリタ、無言。


「野営地に着いたらぁ、さっき捕まえた『雪モフダマ』でシチューを作りましょうかぁ?」


ふんわり笑顔で、顔面を粉砕されて良い子には見せられない状態の雪モフダマを引き摺ってるラクスミ。


「はぁ~っ、またモフダマか」


下処理、大事だかんな?

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