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ギルドなスクールのヤツら 1

俺達はとうとうスエリア領で最大の街、ヨバーンに到着した!

勘当されてからなんだかんだで20日経っちまったぜ。月、跨いじまった。

ヨバーンは賑わってる。高い建物も多いが馬車用道路の他に、よりパワーのある竜車(りゅうしゃ)用道路まであった。運びまくりだぞ、オイっ。


「都会だっ、人の密度! 祭かっ?!」


「そわそわしてしまうなっっ」


田舎者丸出しで城門近くで挙動不審になる俺達! そこへ、


「ちょっとお姉さ~ん。1人? 俺と逢えるなんて、ディスティニぃー・・。いいカフェがあるんだけど、どう? パフェが有名・・」


よせばいいのにナスカにクセ強めでちょっかいを掛けてきた金髪のイケメン人間族の魔法使い? に無言で弓を構え、魔力を乗せた矢尻を眉間に合わせるナスカっ。


「今、良い感じだったのに興を削いだな? 『脳髄』を石畳に撒き散らしたいのか?」


そんな良い感じだっけ?? 急にドSスイッチ入ったぞ?


「っ?! おっとぉっ、他のレディを待たせてるんだったぁっ! それじゃ、そういうことで・・アハハっ」


不運なイケメン魔法使いは意外な脚力で逃げ去っていった。


「もそっとマイルドに追っ払えよ? 衛兵呼ばれんぞ」


「ふんっ! ギルド支部に行く前に何か名物でも食べるぞ? ジュウエモン!!」


「名物?」


「パフェが有名らしい」


「・・ま、いいけどな」


どうかとは思ったが。



名物パフェは2種類のアイスとナッツ練り生クリームにトリプルベリーと蜜豆が乗り、それらに苦味のある柑橘エッセンスを一振してスプリングミントを添えた『ヨバーンの恥じらい』という物だった。

他の店でも普通に出されてるようだが商品名考えたヤツは独特だな、と。

味は普通に美味い。ナスカも「値段は高いが悪くはない、ふふん」も機嫌を直していた。大体どこでも名物食おうとする傾向がある。


俺達は城門近くのカフェから遠かった冒険者ギルド支部のあるヨバーンの町の外れまで、竜車は高いので馬車で来た。

町中の1つ駅に1時間中に数本馬車の便があるのがやっぱ都会だぜ。


「学校は天竜王(てんりゅうおう)の月かららしいから、手続きだけだ」


「おう」


しっかりした造りで役所からも独立しているギルド支部に入っていった。


「はい、ジュウエモン・シルバーモルトさんね。この間、サポーターになったばかりで汎用型で大雑把に登録してるのに行く先々で駆除系クエストこなしてきたんだ。『流しの辻斬り』だな! ガハハハッ」


眼帯付けたハーフドワーフの受付担当の人はなんかウケてるが、鬼軍曹と旅してきたから駆除系ばっかしやらされたんだよっ。


「いやまぁ、ども・・」


「レベル判定で10か、ステータスも高いな! こりゃ将来有望だ。冒険者スクールは雨季から! 資料や座学のテキストをどっさり渡すから、それまでしっかり勉強して自主トレして、あとは学費も貯めるんだぞ? 分割でも総額は80万ゼムっ! 前金も30万ゼムだ!『必要な金を作る』それが最初のクエストだからな!! ガハハハッッ 」


すんげぇ笑ってるよ。例によって後ろの待合席にいるナスカを振り返ってみたら肩を竦められた。と、


「ちょとぉっ!! 前金30万ゼムって高くないっ?! 4ヶ月の学校でしょ?!」


隣の受付でピンク髪のハーフフェザーフットの同年代くらい? 女子がワーワー言ってる。確かに安くはないな。俺も賢い弟や、鬼軍曹に仕事させられてなかったら、今期入校できてたか怪しいもんだ。


「わかったよっ! 稼げばいいんでしょっ?!」


短気そうなその小柄な女子はプリプリ怒って支部から出ていった。


「・・入校直前は鍛えた方がいいが、それまでは普通の仕事も体験した方がいいかもな。まだ若いんだしよ?」


不意に受付の眼帯ハーフドワーフのおっさんが言ってきた。見透かした感じだ。


「それは、考えときますよ」


俺は曖昧に答えた。

普通の仕事、か・・



手続きと前金の支払いを済ませ、俺達は町に3つもある時計塔の1つの展望台に上がってきていた。

風が、気持ちいい。俺は乱れた髪を押さえていたナスカに向き直った。


「ナスカ。ここまで、世話になったな。学校始まるまでに金はまた貯める。帰りの旅費くらいは払わせてくれよ? 散々ドSドSと言ったし、実際客観的に見てもドSだな、ああドSともさ、とは思うが、お前がいなかったら今頃俺は野垂れ死にか、それか野生に還り過ぎてなんかのモンスターに成り果ててた気がする。本当に、今までありが」


「私は帰らないが?」


「の、は?」


ナスカは不敵に笑ってみせた。


「私も冒険者になろうと思う! 君が支部でトイレに言ってる間に手続きは済ませた。私は『レベル33』あるから、学校はパスで、特待生として来月一杯研修を受けることになった!」


俺は唖然としたっ。


「・・っっ、いやなんでだよっ?! 付き添いだろ??」


「ここまで『付き添った』ろう? ここからは私の好きにする」


「え~??」


「森の暮らしには飽きた。というか、お前と旅して飽きていたことに気付いた。私も冒険してみたくなったんだ! 世界を股に掛けてしまうぞっ?! ふふふふっ!!」


なんか、俺みたいな女が目の前にいるぞ?


「ジュウエモン!」


ナスカは両手を俺の肩に置いてきた。くっ、俺より背が高い!


「これからは正式に冒険仲間としてよろしくなっ!」


「・・・う~ん」


俺はナスカを両手を退かして、展望台の手摺の方に向かった。近いわ。


「取り敢えず、晩飯は奢る。『区切り』が悪い」


「よし! 今日は飲むぞっ!」


なんだかなぁ。めちゃんこ強いヤツだし、魔法も使えるが、ちょいちょいアレな所があるから注意は必要だな!



この流れで夜、結局普通の宿屋の食堂で飯を奢ることになった。俺がケチったワケじゃない。ナスカがレストランなんかは面倒がったからだ。俺もそういう店はよくわからんから内心助かったが。


「すいません」


メニューを確認しナスカも決めたので俺は男性店員を呼んだのだが、その店員の手が空かなかったらしく、こっちからだと後ろ姿だけ見えたわりと珍しい薔薇人(ワーローズ)族の女性店員に対応がパスされたようだ。別に誰でもいい。

酒はまだ飲めない俺はデザートのメニューを確認していた。ヨバーンの恥じらい、はもういいや。


「御注もぉん、お決まりですかぁ?」


間延びした喋り方だな、オイ。と思いつつ振り向いたら、


ぼい~んっ!!!


「ふぁっ?!」


すんごい爆乳の谷間と俺の視界が至近距離で合致してしまった! え? 何? 注文・・えっ? なんでオッパイ?? 超いい匂いもするんだがっ???


「あ、すいませ~ん。制服小っちゃくてぇ~、テヘヘヘっ」


なんのことはないっ。『オッパイの大き過ぎるワーローズ族の店員さん』だった!


「いやいやいやっっ、全然大丈夫です! デヘっ、デュフフフっっ」


必死で『紳士だから無反応でしたよ?』と取り繕おうとしたが、上手くゆかないっ。と思っていたら。


っ?!! 殺気!! バッと見ると、ナスカが猛吹雪のような冷たい、腐って干からびたスライムの遺体を見るような目で俺を見ているっっ。


「違うって!」


「何がだ? チッ。すみやかに自分の注文をすべきだ。『乳房への凝視』と注文は別の行動だぞっ!」


「わぁかってるよ! ・・あ、すいません。ええっと、メルメル鶏のバター焼き煮と」


「はいはぁ~い」


俺はどうにか平静を装って注文もやり遂げた。

その後の夕食は終始ピリピリしてたぜっ。くっそ~っ。食堂来るまではいい感じだったのにっ、乳に! 唐突な乳にっ! 負けたっ!! ぬぬぬっ。

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