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5話 工房開設 前編

俺は獲得した中隊長の軽装鎧を装備した。


中隊長の軽装鎧:レジェンダリー防具:防御力1万

指揮官シリーズ:第8位

シリーズスキル:敵が同格以下の編成の場合、自動的に味方を鼓舞/守備強化の状態にする

セットスキル:レベルアップの度にスキルソケットを増設できる(ソケットレアリティは都度抽選)


 レベル1の現在は編成可能人数が6人、使用可能陣形は偃月陣形となっている。編成人数は兎も角、陣形を何とかしないとこのままでは強敵相手には自殺行為だろう。どうすれば新たな陣形を獲得できるか考えていると咲夜が声を掛けてきた。


 「オレ、ヨワイ。ツヨクナリタイ、オシエテホシイ!」


 「ボクモ、ツヨクナリタイ!!」


 咲夜達は先の戦いで2体の歩兵しか倒せなかったことに悔しさを感じているようだ。


 「儂も不完全燃焼だな。白夜の奴、食い意地が張っていかん」


 ジュラもまだまだ戦い足りなかったようで、折角だしナイトメアモードも少し覗いてみるか。


 「よし、丑三つ時まで一緒に冒険を続けよう。けど、ナイトメアモードにはまず俺一人で挑んでみるから直前で解散するからな」


 「ウン、ヨロシクネ!」



 咲夜の契約主はアンナなので事前了承が必要だと思ったが、フレンド登録があり、テイムモンスター自身が希望すればパーティーメンバーに出来るみたいだ。最初にクロスボーなどをプレゼントしたからか友好度も影響しているのだろう。



契約者:アンナ/簡易パーティー主ウラン

メイン枠:咲夜スティールライダーレアレベル1

生命力:1500

硬さ:S45C

攻撃手段:射撃/バックスタブ/突進

 最高時速:30km

 友好度:最大10/現在1

 保有経験値:3000


硬さって?防御力の間違いだろ。炭素鋼なら汎用度は高いが、うーん。


 「イオン、重くないか?」


 「ヘイキ、ウランニイチャン。コレモアル」


 頭を揺すって俺があげた鞍の事を指している。それでももし全身炭素鋼で構成されていたらかなりの重量になるはずだから、咲夜の体表面だけがS45Cで覆われていると考えるのが妥当だろう。


 いずれにしても物理耐性は高いはず。アタッカーの役割だから先ずは攻撃力を向上したほうが良さそうだ。


 「咲夜、クロスボーのレベルを上げられるか?」


 「ワカッタ。レベル2。ボルト2ハツ」


 「イオンは毒キノコを探してくれ」




 俺たち3人組は敵を蹴散らしながらでナイトモードを探索した。籠一杯の毒キノコ,松茸とポルチーニ茸も収穫でき、幾つかキノコを貰っておいた。途中、使用しているスキルのせいか、堪らず生のままの松茸に齧り付いたが巨大化はしなかった。ゲームで得たスキルは有用すぎるので、アンナの人たらしのようにペナルティが有るかもと心配していたが今のところ問題ない。



 「毒キノコを加工してボルトの先に塗布すれば、命中した敵をデバフ状態に出来る。必要な時に使うといい。だけど、FFフレンドリーファイアには十分注意してくれ。ボルトを2発同時に射撃できるようになったから弾切れにならないように時間が有れば準備しておくこと」


 「ミカタ、ウタナイ。テキダケ」


 「敵の動きを止めるには足を狙うか視界を奪うために目に当てるか。目標が小さくなるほど、動きが速くなるほど当てること自体が難しいから練習あるのみ。偏差打ちも意識するといいよ」


 「テキノウゴキ、イメージスル!アリガトウ。コレ、アゲル」


 <スティールライダー咲夜との友好度が上昇しました>


 咲夜はボルトの為に取っておいたのか剥がれた爪、束ねた髪の毛、赤銅の固まりとイオンからは進化した際に抜けてしまった今より一回り小さい牙を貰った。


 「咲夜、イオン、有難う」


 「ウランよ、咲夜ばかり狡くないか。儂にも教えてほしいぞ。武器も要る」


 「ジュラは壁役にもアタッカーにも成れる。まずは成体になることが第一の目標だから、倒されないように注意しながら出来るだけ獲得経験値を生命力に振って大きくなって欲しい。ところで幼体なのにどうして儂なんだ?」


 「なんじゃ、気付いていなかったのか?儂も白夜も大分類は特殊個体だが種別としては古代種じゃ。この地域に縁でもあるのだろう。まあ、いい。成長方針は分かったわい。なんか武器は無いのか?」


 「咲夜とイオンに貰った素材があるから直ぐに作れるが、このままだと装着感が良くないと思うよ。どこかに十分な皮素材が有ればな、チラチラ」


 「分かった。儂も進化した際の全身脱皮と現在の鱗数枚、乳歯を提供しよう」


 俺は素材を組み合わせて炭素鋼ワイヤ付王冠と、尻尾での薙ぎ払い用に爪と乳歯付きスパイク防具を作成しジュラに渡す。コモンスキル:縫製を獲得した。そろそろ午前2時になる。


 「一端解散しよう。倒されないように気を付けろよ」


 「お前もな」




 咲夜達が急いで居なくなり、ジュラも貰った武器と防具を装着して姿を消した。緊急事態を告げるような不快なビープ音がこだまする。


<ナイトメアモードに移行します。モンスターのレベルキャップが開放されますのでご注意ください>


 アナウンスが終了した瞬間、途轍もない悪寒を覚える。ワザと5発目を外そうとした時以上で耐え切れずに膝を着く。脂汗が滝のように吹き出した。


 「汚いの」


 穴熊かイタチか、体長70cmほどの野生動物が俺を見下ろしていた。


 「しかし、久しぶりの獲物だ。適者生存。悪く思うな」


 一瞬で防御力1万を誇る中隊長の軽装鎧は破られ、無敵化ポイントを6回補充したことを示すように無限増殖pが3万減った。噛みつかれただけで8万ダメージ食らったみたいだ。


 「硬いの、どんな体をしておる。余のひと噛みを凌ぐなど人にあるまじき生命力。いや、スキルというやつか。まあ、よい。痺れさせれば何の問題もなかろう。電光石化!」


 一帯は瞬く間に雲に覆われ、雷を放つための準備運動をしているようにゴロゴロと不穏な音を奏で始めた。ある逸話を思い出しイチかバチかで叫んだ。


 「くわばらくわばら」


 <コモンスキル:言霊を獲得しました。ナイトメアモード中の獲得の為、2段階上昇のレジェンダリー化されます>


言霊:シチュエーションに応じたおまじないを唱えることにより危機を脱出できる。一日一回限定のスキル。


 言霊のお陰で一帯に振り注ぐ雷は俺を避けている。しかし、それどころではなかった。軽い気持ちで挑んでいい難易度ではない。何とかして脱出しないとこのままではキャラロストだ。


 「ほう、馬鹿ではないようだ。だが、余も空腹での」


 「お待ちください。えっと穴熊様?」


 「阿保。余の名前は雷獣ラーテル。貴様らの分類上ではユニーク級モンスターになるかいな」


 「ラーテル様。茸はお好きですか?少々の鹿肉も御座います故、粗食ではありますが見逃して頂けないでしょうか?松茸とポルチーニ茸もあります」


 「不味かったら己も食らってやるが、分かった。はよ、準備せよ」


 手早く炒め物を用意し、ジュラから貰った鱗を皿代わりに盛り付ける。


 「お待たせ致しました。鹿肉と茸のピリ辛炒めでございます」


 「うむ。余は炒めた物を口にするのは初めてであるが悪くないの。いあ、旨い。特にこのピリッと来る茸が隠し味に効いておる」


 毒キノコであわよくば死んでくれないかと混ぜてみたが結果オーライだ。


 「はは。それではこれにて失礼いたします」


 「チョット待て!」


 俺はビクっと全身を硬直させる。万事休すか。


 「見逃す替りに余の給仕番に任命する。以後10日と空けず馳走を支度せよ」


 「えっ、面倒くさい(ボソッ)」


 「なんじゃ(ギロッ)、文句でもあるかいの?」


 「私は軟弱者ですので、ナイトメアモード滞在中に護衛をしてくださるなら喜んでお受け致します」


 「うむ。仕方がないか。雷獣ラーテルともあろう者が飯を集るだけではヤツと同じになってしまうしな。これも持って行け」


 破損釜(岡山由来)を貰ったがゴミを押し付けられた。


<給仕係に任命されナイトメアモード限定で雷獣ラーテルの守護を獲得しました>


「それでは改めて失礼いたします」


「忘れるでないぞ!10日と空けずに戻って参れ」




 アドベンチャーエリアを脱出し待機エリアで情報と予定を整理する。1月2日午前4時7分、ゲーム内時間は1月28日午前2時40分で、アンナとの約束もあるから7時間以内にもう一度ラーテルを訪ねるとしよう。現状の保有ポイントは以下の通りだ。


 ウラン

パラメーター基本:100 生命力/精神力/空腹

無限増殖による残ポイント:5万3,564

経験値 12万7,378

所持金 13万8,578

感情値 100


 

 大量のポイントが手に入ったので武器を上限まで、レジェンダリースキル:無限増殖レベル2に留め、コモンスキル夜目/作成/縫製も上限までレベルアップした。


 さて、折角手に入れたレジェ防具が破損状態なので何とかしないといけない。アンナが言っていたガチャも気になるし一般エリア、その中でも生産エリアに目標に定めて待機エリアを後にした。




 スポーン先は見覚えのない広場だった。RPGで2か所目に訪れる町ぐらいの規模で、噴水を中心にして各種案内所が立ち並んでいる。喧噪の中聞き取れる固有名詞は「ミーちゃん」と「歌姫」ぐらいで、目的地に転移されるのか次々と案内所からプレイヤーの姿が消えてゆく。


 「こんにちは。特殊工具の星型ドライバーと修理が出来るお店に行きたいけど、案内してもらえますか?」


 そう言えば、人型NPCと話すのは何気に初めてかも知れない。


 「ウラン様、いらっしゃいませ。ご用件は以上でよろしいでしょうか?」


 「料金にもよるけど工房の開設も考えているから空き店舗も見ておきたいかな」


 「それでは生産エリア工業地帯店名:天目あまのまと該当地区管理組合事務所をタグ付けしておきます。いってらっしゃいませ」


 「ありがとう」


 


 工業団地のような碁盤目に仕切られた一角にザ鍛冶屋の佇まいの天目があった。店番が子供で職人のおじいちゃんが行方不明といったテンプレ展開だと間違いなくお使いクエが発生するからその場合は断るつもりだ。


 「朝早くすいません」


 「いらっしゃい。天目一箇神あまのまひとつのかみです」


 鍛冶の神様でした。


 「修理と特殊工具の星型ドライバーが欲しいですがお願いできますか?」


 「物を見ないと判断できないよ。星型ドライバーは何に使うの?」


 「はい、使っている武器を分解してみようと思います」


 中隊長の軽装鎧、アサルトライフル、破損釜を取り出し、破損個所とねじ山を見て貰った。


 「軽装鎧の修理は素材を持ち込みなら1万エンか経験値1万、素材が無ければ10万ね。星型ドライバーはラチェット機能付きで3万。アサルトライフルは精密な作りだからトルク管理を忘れずにね。破損釜は付喪君の管轄だから隣でお願いして」


 手持ちの素材アイテムを全て見せるとジュラの鱗と咲夜の炭素鋼ワイヤでアップグレードまでして貰えるようになった。


 「サービスしてくださって助かります。よろしくお願いします」


 「いいの。鍛冶仕事に興味を持ってくれるのは私も嬉しいし、ウラン君は適正がありそうだから教え甲斐もある。手持ちの仕事も無いから早速取り掛かるよ。待っている間に作業がしたければ好きに使ってくれて構わない」


 天目様は代金の4万エンと素材を手にすると軽装鎧を持って奥に行った。俺も作業を始める。作業机に備え付けてある万力にスライムのドロップアイテムである干からびた皮で包んだアサルトライフルを固定した。動かない事を確認して、メモ帳に書いた略図にパーツごとのトルク値を記入しながら分解していく。作業を終えるとアナウンスが流れる。


 <レアスキル:リバースエンジニアリング(銃火器)を獲得しました。初達成者の為、レジェンダリースキルに昇格します>


 確認のためにレジェスキルを入れ替えてみる。その瞬間、俺の頭の中には分解したアサルトライフルの仕様書がフォルダとなって現れた。素材から公差の入った部品図、組図まで全てを網羅している。これで俺専用武器作成に一歩近づいた。気を良くした俺はベアーバイトに取り掛かろうとするといつの間にか作業を終えた天目様に慌てて止められた。


 「ウラン君、楽しいのは分かるがスキルレベルをキチンと把握してから分解作業に取り掛かろう。今のレベルではコモンアイテムのメイン枠までしか適用されないからそのまま続けると貴重な武器が壊れてしまうよ」


 「スキルの確認を忘れていました。助かりました。」


レジェンダリースキル:リバースエンジニアリング(銃火器) レベル1

コモン武器メインアームを分解することによって仕様書を獲得できる。仕様書を獲得した武器はカスタム武器として自作でき、愛用度が付与されるためレアリティの壁を超えることが出来る。愛用度は経験値ではなく撃破の累積数で上昇する。


 「君の持ってきた防具に修理ついでに属性ソケットを付けておいた」


 「属性ソケットですか?」


 「属性も含めて答えられる範囲でなら何でも質問してくれて構わないよ」


 天目様はぶっちゃけて下さいました。


次回、工房開設 後編です。


ブックマークありがとうございます。

次回の更新は21日午前8時の予定です。


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