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愛の伝え方  作者: レモン
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第一章 秀樹への恋

 「お前、何読んでるんだ?」

 「えっ、何でもない!」

 16歳の星野美波は慌てて、少女漫画を幼馴染の高橋秀樹に見られないように机の下に隠した。

 「おいおい、俺たち幼馴染だろ?また推理小説とかじゃねえのか?」

 「嫌だ、秘密よ!」

 美波と秀樹は高校1年生になった。二人の関係は相変わらずで、探偵の美波は相変わらず推理小説も好きだった。

 しかし、最近は推理小説に加え、恋愛小説や少女漫画も読むようになってきた。それは、秀樹のことが好きなことを密かに自覚していて、それをどうやって伝えればいいのか、どうしたら恋が実るのか気になっていたからであった。

 「お前、最近なんかおかしくない?前まであんなオープンだったのに…」

 「べ、別に変わらないよ!」

 美波は赤面しているのを見られたくなくて、後ろを向いた。


 文化祭の時期になって、美波はついに秀樹に告白することを決めた。これ以上、もどかしい気持ちでいることに耐えられず、フラれたらフラれたで仕方ないと思い始めたからである。それに、秀樹はモテるから、他の女の子に取られたくなかった。

 今までになく、洋服やメイクに時間をかけて、鏡の前で何度も決め台詞を練習してから学校へ行った。

 学校へ行くと、秀樹はクラス企画の受付をしていた。美波は秀樹のシフトが終わる時間を事前に調べていた。お客さんが途切れたところで、美波は秀樹に声をかけた。

 「秀樹、ちょっと12時にいつもの場所に来てくれないかな?」

 「え、どうしたの?」

 「いや、あの、話したいことがあるの。」

 「いいよ、じゃあ12時な。」

 美波は文化祭で展示物の警備係だったが、全然集中できなかった。『うまく言えなかったらどうしよう。』とか『フラれたらどうしよう。』とか『嫌がられたらどうしよう。』というように、秀樹のことで頭がいっぱいだった。

 ついに12時になり、美波は体育館の裏にある林の入り口に行った。ある木に目印の赤いハンカチがついていた。ここが美波と秀樹の「いつもの場所」であった。少し待っていると、秀樹が「悪い、遅くなった!」と走ってきた。

 美波は頭が真っ白になり、足が震えた。

 「お前、顔色悪いけど、大丈夫か?」秀樹は少し心配して聞いてきた。

 『やばい、ちょっとしっかりしなきゃ。』と美波は思った。

 「秀樹、あのね-」

 バンッ!その時、大きな銃声がした。

 美波はすぐに走り出した。秀樹は彼女の後を追うように走った。銃声がしたのは、おそらく校舎の屋上から。人が校内にたくさんいる文化祭で誰もいない場所というのは限られていた。

 屋上にたどり着くと、男性が頭から血を流して倒れていた。右手に拳銃を持っていた。

 「秀樹、すぐに警察に連絡して!」

 「分かった!」

 数分後に警察が到着した。警察の調べにより、亡くなったのはこの高校を卒業し、現在会社員をしている室井周という男性であることが分かった。彼は同級生で妻の室井佳奈子と同じく同級生で彼の友人であり彼の妻と浮気していた男性でもある滝沢光一と一緒に文化祭に来ていた。

 「それで、君が発見してから、誰も遺体に近づいていないのだね?」岸丈太郎警部は美波に尋ねた。

 「はい、そうです!」と美波は答えた。

 「オウ、ミナミさんじゃないですか~!お久しぶりですね~!」外人警官のジョン・マツシタが岸警部の後ろから手を振りながら叫んだ。

 『げっ、またこの人だ』美波は嫌そうに秀樹の後ろに隠れるようにして下がった。

 「嘘でしょ、信じられない!」泣きながら屋上に走ってきたのは妻の佳奈子であった。

 「周、嘘だろ!なんでお前が…」友人の光一も佳奈子の後に走ってきた。二人は遺体に近づこうとするが、警官に止められる。

 「現場に入らないで下さい!」

 「そんな…」佳奈子はショックで泣きながらしゃがんだ。光一はそんな彼女の肩に手を置いた。

 「お二人は彼がいない間どこで何をしてましたか?」

 「体育館でダンスを見ていたわ。」

 「俺は同じ体育館の違う会場で演劇を見ていた。」

 「この文化祭で他に知り合いは来ていなかったですか?」

 「ええ、卒業したのが15年以上前なので…」

 「つまり、アリバイはないってことですね?」

 「えっ、まさか、私たちを疑っているんじゃないですよね!?」

 「本人は右手に銃を持っていたので自殺の可能性が高いと考えています。念のため伺っているだけです。」

 「警部さん、よく見てください!」ある女性警官が言った。「この血の跡はおかしいです!誰かがこの血痕を靴で踏んで歩いた跡があります。」

 美波は既に気づいていたが、先に指摘されてしまい、ちょっと悔しかった。

 「なるほど、さすがだね、三島くん!」

 その三島由衣という女性警官は秀樹に得意気にウインクした。

 美波は少し顔をしかめたが、ちょうどその時あることに気づいた。

 「犯人はこの校舎の一つ下の階のトイレに逃げたに違いありません!でなければ私や秀樹と階段ですれ違っているはずです!」美波は叫んだ。

 一同はそのトイレに行くと、案の定返り血を浴びた黒い上着と黒いズボンが置き去りになっていたが、それ以上の手がかりはなかった。犯人はおそらく手袋をつけて、違う服を下に着ていたようである。黒い上着と黒いズボンから指紋は検出されなかった。

 また、佳奈子にずっと思いを寄せていた同級生の山形哲朗、周にずっと片思いだった同級生の吉村栄子も文化祭に来ていて、その二人もアリバイがなく容疑者とされた。

 しかし、佳奈子と光一を含めた容疑者4人の靴から周の血液は検出されなかった。どうやら犯人は既に血のついた靴を違うところで処分したようだった。

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