5 あの子は転校生
工口高校にたどり着くと、奈吾さんは校舎玄関の所でペコリと俺に頭を下げて礼を言い、職員室へ向かって歩いて行った。
う~む、顔は可愛くスタイルも抜群。
おまけに礼儀も正しい。
彼女はぜひとも俺の居るクラスに入って欲しいものだ。
そう切に願いながら、俺は玄関をくぐって靴箱の所で上履きに履き替えた。
そして廊下に出るとそこに、やけに頬を膨らませた伊緒が、仁王立ちで俺を待ち構えていた。
「ヤー君、竹刀で叩かれた頭は大丈夫?」
俺が近くに歩み寄ると伊緒はそう言ったが、その気遣いの言葉とは裏腹に、表情は完全に怒っていた。
俺は伊緒に尋ねる。
「頭は大丈夫だが、まだ怒ってるのか?」
すると伊緒は少し声を潜めてこう言った。
「ヤー君、さっきの子、誰なの?」
伊緒は、俺が玄関の所まで一緒だった、奈吾さんの事が気になるらしい。
どうやら一緒に学校へ登校した所をバッチリ見られていたようだ。
なので俺は正直に答えた。
「あの子は今日からこの学校に通う事になった転校生なんだが、来る途中に道に迷ってたから、ここまで案内してあげたんだ」
「ふぅ~ん、優しいんだねっ」
そう言ってそっぽを向く伊緒。
何やらまた気を悪くしたようなので、俺は冷静を装って弁解した。
「待て待て、俺と彼女は今日初めて会ったばかりだから、伊緒が妄想するような淫らで淫猥でフシダラな事はしてないぞ」
「そんな妄想してないよっ!それはヤー君の方でしょ!」
「いかにも」
「いかにもじゃないよ!」
などという会話を経て、俺と伊緒は三階の一年A組の教室にやって来た。俺と伊緒はクラスも同じだ。教室に入ると、クラスメイトで悪友の片桐直也が、上機嫌で俺に声をかけてきた。
「よ~う、聞いたかよ古賀?」
「やけに上機嫌だな。新しい××なDVDでも手に入れたのか?」
「違うよ。そうじゃなくて、今日ウチのクラスに転校生が来るらしいんだ。それも、とびきり可愛い女の子」
その言葉に、傍らの伊緒がムッとした顔をしたが、俺は構わず直也に言った。
「ああ、そうみたいだな」
「何だ知ってんのかよ?でもまぁ、お前には関係のねぇ話だな。何せお前には、そちらの伊緒ちゃんが居るんだもんなぁ」
すると伊緒は、ジトッとした目で俺の方を見た。
俺はその視線をいなし(・・・)ながら続けた。
「ああ、そうだな」
「くはーっ!言ってくれるねぇマッタク」
自分の額に手を当て、悔しそうに天を仰ぐ直也。一方俺の言葉を聞いた伊緒は、幾分機嫌を直した様子で自分の席へと歩いて行った。
可愛い奴め。
そんな中直也が、俺を指さして言った。
「まあそういう訳だから、転入生の子には手出しすんじゃねえぞ。その子は俺が頂くんだからな」
それに対して俺は、キッパリとこう答えた。
「それとこれとは話が別だ!」
「おいおい」