表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

友人についての私的見解

 僕は、田岡英一(タオカエイイチ)という男を、仕方なく誰かに紹介するときは、一言「占い師」と言うことにしている。

 と、言っても彼はムカつくことに、僕のことを今まで一度も占ってくれたことがない。

 だから、あくまで本人の申告を、僕が真に受けてそう言っているだけだ。

 僕の性格は、田岡と違っていたって真面目で、正直なところが取り柄だ。

 そんな素直で! 純朴で! 真面目な! 僕でも、最近は多少疑うことを覚えて、もしかしたら、彼は詐欺師かもしれないと思っている。

 彼にくだらないことで騙されてばかりだった学生時代と比べて、僕はちょっとだけ成長した。


 僕こと、森島和巳(モリシマカズミ)は、田岡のことを実は何も知らない。

 何せ田岡は僕と違って不真面目でいい加減で、嘘ばかりつくからだ。けれど、その嘘のなかに本当があるから、大変に面倒臭い男だったりする。

 全部嘘だったら、大学時代に知り合い、二十九まで奴に付き合ったりしていないだろう。

 僕は、その嘘を注意深く観察して、本当を探すことに学生時代からとても苦労している。

 驚いたことに、そんな風に正反対な、僕と田岡が実は友人らしいということをつい最近知った。

「二、三回話せば、友人なんだよね。君はちゃんと辞書を引け。好きか嫌いかなんて、そこには書いていないだろう? 馴染みがある人全てが私の友人だ」

 その定義は調べる辞書によると思った。

 田岡は、博愛主義者というわけではないが、この友人の定義の持論については崩さないつもりらしい。

 そういう理由で、僕は、僕が田岡のことをどう思っていようと、彼の定義で友人になってしまっている。

 僕には百年たっても田岡と同じ次元で会話ができるとは思えなかった。


 ――森島和巳は、田岡英一を未だかつて一度も友人だと紹介したことがない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ