4,リッターの妹 第4話 肉!肉よ!肉にはバターよ
「でさ、深刻な話、今夜の飯どうするよ。
あの油だらけの飯食う?」
サトミが家の中を指す。
「俺もう吐きそう。ちょっと吐いてくるわ。食い直す。」
ダンクがトイレに向かいかけて、ボーボーの草に隠れたバーベキューコンロが目に入った。
「あーーーー!!これだ!リッター、豆炭ある?」
「あるある!あるぜ!たまに燻製作るから。セシリー、網洗え!俺、火起こす!」
「わかった!お兄ちゃん、火起こす前に草取り!」
「了解!」
リッターが、ナイスアイデアに親指立てて飛び起きる。
急にみんな元気になった。
ヨシとサトミが手を上げる。
「俺、肉買ってくる!3ポンド(1.36キロ)あればいい?他に買うのは?」
「ソーセージも2ポンド!俺食い直す!金は?」
「おごるよ、パーティーっての?やろうぜ!」
「じゃあビールは俺が買いに行く!サトミじゃ売ってくれないし。」
「ヒャッホーー!!あの油だらけのも焼いて油落とせば食えるぞ、セシリー!」
買って来たブロック肉を、任せろとダンクが受け取る。
1ポンドで切り分けて、塩とコショウまぶしてなんか知らないハーブとやらを使って表面をジュウジュウ焼いて行く、食べてみると浸みてないけど確かに美味い。
サトミ以外はビール片手に肉食ってるが、サトミはコーラ片手でちょっと残念だ。
「くそー、俺もビールっての飲みてえ!」
「ヒヒヒ、ざまあ!大人ぶってもお子様だなーサトミよお!お子様はジュースだー!」
ムカついたらデカいソーセージ食って反撃だ。
「ああっ!それ俺が食おうと思ってたのに!」
「てめえなんか、ビールで溺れろ!俺は肉食って腹一杯になるんだ。」
セシリーのバターに浸かった食材も、焼いて油を落として何とか食えた。
激甘フレンチトーストは、サトミの腹に収まってゆく。
「あーうまー、ひっさしぶりに肉食えて幸せ〜。」
「お兄ちゃん、美味しいね〜。あたいも肉バター美味〜い!」
「もう、お前ほんとバター抜けないんだな〜。もういいや。」
給料のほとんどが酒とバターで飛ぶので、ろくな食事がなかったからなのか兄妹もご機嫌だ。
セシリーはやっぱりバターを持ち出して、焼いた肉にバター塗って食べている。
ガツガツ食べてると、ふとセシリーがご機嫌にビールを飲み干す兄貴を向いた。
「お兄ちゃん、あたいポストアタッカーになるから。」
ブーーーーーーーーーーーッ!!
リッターがビール噴いた。
「ぎゃああ!この酔っ払い、噴くなよ!きったねえ!」
「ダンク!なんで驚かねえんだよ!セシリー、無理!駄目!ちょ、何言い出すんだよ!」
「だって、お兄ちゃん。あたい手作業バイト向いてないし続かないし、家でじっとしてたら風船になっちゃったし、元々アジト生活じゃアジト守って撃ち合ってたし、たまに狩猟連れてって貰って早馬走れるし、なにより、ねえ!
あたいもう、家にじっとしてるの飽きちゃったわ!」
確かに、昼間でも怖いデリー渡りを夜中に平気でやる女だ。
リッターが思っているより、百倍肝が据わってる。
恐らく盗賊と撃ち合いになっても負けない度胸があるだろう。
「ダメダメダメ、駄目だーーーーー!!!
そ、そうだ!兄ちゃん達はな、身体にフィットした防弾スーツ着てるんだぞ!
お前、サイズないだろ!だから却下!」
「防弾なら今、脂肪着てるし。死んだらそこまでの人生よ。」
「やめてくれーーーーー!!俺はお前には普通に生きて欲しいんだ!」
「その普通押しつけられて、あたいウンザリしてんの!
あたいにはあたいの人生があるの!
あたいはアジト暮らしのスキルを生かせる仕事が一番自然なのよ!
お兄ちゃん、うざーーーーい!!」
「うざ……い……って……ああああ!!お前乗せて早く走る馬がいるかよ!」
「あら、馬ならあたいのナイトが走るわ。まだ若いからスタミナあるわよ。
だって、あたい乗せた上にバター100ポンド(45kg)載せて走ったのあの子ですもの。」
「100?!だって?!お前、どれだけバター買ってんだーーー!!」
今度はリッターが切れた。