2、クリスマス、郵便局は戦場だった(打ち上げ編)
そして………………
クリスマスが終わった。
クリスマスが、終わった。
「「やっとクリスマスがおわっっっったあああああああ!!!」」
「終わったぞオオオオオオ!!!」
「この野郎、無事終わったああああ!!」
ダンダンダンダンダンダン!!
バンバンバンバンバンバン!!
郵便部門の全員が、足を鳴らし、机をガンガン叩いてお祝いする。
「「「「「 おっつかれーーーの、カンパーーーイ!! 」」」」」
凄まじい量の郵便物に奔走して、奔走して、疲れ切った頃にクリスマスは終わる。
金曜日終業後の局内で、毎年恒例飲み潰れ会が始まった。
スタッフの宗教入り交じっているので、聖歌やツリーは無い。ただ、忙しかったの慰労会だ。
明日はエクスプレスだけ午前中業務が残っているので、毎年金曜打ち上げらしい。
いつもは郵便物であふれる中央のテーブルに、ビニール敷いて酒と近所の店から取り寄せた料理が並んで局員みんなで打ち上げだ。
空きっ腹でガブガブシャンパン開けて、楽しそうだ。
まあ大人達はほっといて。
サトミは初めてなのだが、1人端っこで用意されたケーキに囲まれてホクホクだ。
彼のリクエストは、とにかくケーキ、ケーキを所望する!だった。
彼には特別席が用意され、その前のテーブルには特注で砂糖をたっぷりかけたスノーホワイトケーキのホールとたっぷりチョコを使ったオペラケーキ1本に、でっかいシュトーレン1本だ。
好きなだけ食っていいと言われたが、もちろん残すなんて考えてない。
フフフフ、俺は全部食うぜ!全部だ!こんな美味そうなもの、ミサトにももったいねえ!
「おおおー、なんか砂糖いっぱいの白いのと〜、わっ、これすげえいっぱいフルーツ入ってる!
あと、なんかたっぷりチョコのケーキだ!!
うおーどれから食べようかなー、えへ、えへ、白いのからじっくり食おう。
何だこれ、俺こんなに幸せでいいのか〜?」
まずは白い砂糖かかってるのからと、1個取って一口頬張った。
外の白いお砂糖が、口の中でふわっと溶けて、中からバター挟んだケーキが……
あああ!超甘い!脳みそが癒やされる!
「あーー、うめえっ!やっぱケーキって奴最高!!あー、早くシャンパン飲んでみてえ」
「わははは!何だおめえ、ケーキにコーラか!お子ちゃまだからコーラかーっ!ヒャハハハ!
早く大人になれよ!サトミー!ヒャヒヒヒヒヒ」
ダンクは早速出来上がっている。
ビールはいいけど、シャンパンには弱いらしい。俺には違いがわからない。
「そうだなー、18から解禁だから、まだ遠いよなー」
ギャハハハハ!遠くの下品な女の笑いに顔を向けると、ミサトがボンボンをバリバリかじって酔っ払っている。
あー、あれボスから機嫌取りに送ってきた菓子じゃねえか。
ウイスキー入ってる奴だから持ってきたのに、自分で食ってやがる。
「サトミー、妹さー、取り上げないでいいのかよ?」
普通郵便のアイルが手を上げて叫ぶ。
俺は手を振っていった。
「あー、手を出すな。腕落とされるぞ」
「えーーー!!マジィ?こええええ!!」
「あーめんどくせえな」
仕方ねえので、ケーキを置き、俺が行って足を引っかけ床に倒し、手足後ろに縛って転がし武器を探る。
やっぱり後ろにナイフ持ってやがる。足にも、靴にも、腕にも、ポケットにはハンドガンかよ。
何しに来たんだよ、こいつは〜
身体中の武器という武器を抜き取り、俺のウエストバッグに入れた。
「ギャハハハハ!兄ィ!兄ちっこーい!兄ィ!ギャハハハハ!」
「うるせえっ!てめえ、明日飯抜きだ!この野郎!あー、袋3つ分も食いやがって、お前には早い」
「えー、だってぇ〜、やだ〜、……チンチンの毛ェ〜毛がねー」
「えっ?毛?」
慌てて口を押さえて、ブンブン首を振る。
「何でも無いから、気にしないでくれ」
滝汗で笑顔が引きつる。
ミサトはやがて、ブツブツ言いながら寝ちまった。
仕方ないので、事務所の仮眠ベッドに寝かせておく。
こいつにウイスキー入ってる奴は厳禁だ。
口が軽くなる、マジで人が死ぬ。
戻ってケーキの所に行こうとすると、ガイドが前をふさいだ。
何か微妙に目が据わってる。
何だ?このシャンパン、妙にみんな酔っ払ってるぞ。
みんなのカンパがいつもより多かったからって、いつもより高いのを買ったって言ってたけど、このシャンパンのアルコール度数どれだけあるんだ?
「はっはっはっ、お疲れー、今年はお前のおかげで助かったよ〜」
ガイドが、俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
俺は髪を指で整えながら、ムカッときたけど大人な笑顔で返した。
「やーほんと忙しくてビックリしたぜ。凄かったなー、何人殺ったかおぼえてねえや〜」
「いやー、そりゃ駄目だ。お前はまだ子供なんだからな、そう言う時はな、ちゃんと大人にだな……」
あーマズい。この神妙な顔のガイドは駄目だ。お説教タイムが始まりそう。
逃げたい、逃げ出したい。
俺はなー、昔から酒飲んだ大人が大嫌いなんだ。
「わかったよ、今度、今度シラフで話聞くから」
一歩一歩と後ろに下がる。
「はっはっはっは!サトミー!護衛役ごくろー!」
「ごくろー!」「ごくろー!!」「ごくろーであーる!」
バンバンバン!シャンパン飲む女子連中に、背中を強烈に叩かれまくった。
「痛い痛いいたーーーい!」
てめえら普段、か弱いフリしてやがるな!このクソ!痛い!
「ひーっひっひ、サートーミー、お前あだ名変わってんだってよー」
あー最高の酔っ払いリッターまで来た。
俺は早く1人でケーキ食いたい。
「お前、半殺し野郎から、皆殺し野郎に昇格したんだってよー!
ヒャハハハ!物騒な奴ー!!」
「な、なにぃ!」
クソッ!こっちまで殲滅部隊の親玉みたいな名前ついちまった。
もういい!俺はケーキ食って帰ろう!
「リッター!お前明日早出だろ!飲み過ぎんなよ!」
「ぶあーーか、俺ァ飲んでる状況がシラフなんだよ!ヒャハハハ!」
「あー駄目だ、明日また酒臭くてデリーに苦情言われる。
俺はもう、ケーキ食って帰る!」
俺は元いた場所に戻ると食いかけのケーキに手を伸ばし、潰さないよう、やんわり掴むと口を開けた。
ババババババババババラバラバラ
ガタガタガタ…… 窓ガラスが振動して音を立てる。
「え?!何この振動〜」
その時、突然ヘリの音が建物を揺らした。
酔っ払い相手は、また別の意味で戦場




