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7、笑い男、デッドエンドの理由(サトミに結果報告に行く 前編)

週末、俺は一人で運転して、ロンドへ向かった。

腕は痛いが、まあハンドルに手を添えるくらいは出来る。


滅多に乗らない自分の車はベンツのデカいオフロードだ。

金ばかり貯まっていくので、ロンドへ行く目的で奮発した。

タナトスでは、口封じもかねて結構な額の給料が貰える。

ただし、手元に現金が無い奴が多い。

金があると逃げるからだと言われている。

ただし事務局に希望を出すと金は好きな口座に振り込まれるので、家に仕送りしている奴がほとんどだ。


ジンとサトミも金は手元に無かった、彼らの場合は監視役が持っている。

どこへ行くのも3,4人付いてくるので、ジンを誘ったが、自分が動くとあいつら来るから行かないと断られた。

作戦以外は自由が無い、可哀想な奴だ。

まあ、自分がこうして行動しても、必ず監視の目はある。

この車にも、発信器かなんか付いているのかもしれない。


途中一泊してロンドに昼過ぎに着くと、ホテルを取って袋一つぶら下げ、歩いて町をぶらついた。

ホテルはポリスの近くで、金さえ出せば高級車はポリスの車庫で預かってくれる。

金が物を言う町だ、わかりやすくていい。

まあそれでも盗まれたら、また買うだけさ。


運転の疲れは、会う楽しみの方が大きいのであまり感じない。

元々、自動運転装備車なので、軍用車よりうんとラクだ。

それ目当てで高級車を買った。

数人で来るときは、荒野で野営する時もあるし、夜通し交代で運転して走るときもある。

武器はほどほど積んでるので、強盗と聞いてもまったく危険は感じない。

まあ、俺達が怖がるものなんて、何か考える方が難しい。


久しぶりに来たロンドは、少し人が増えた印象だ。

最近郵便増えて忙しいと言った、サトミのぼやきも良くわかる。


サトミがいつも待ち合わせに使う可愛い喫茶店に入るのも、なんだか慣れた。

女の子が、パフェですか?と聞いてくる。

俺達はこの店では、パフェ部隊に成り下がっている。

最初に来たときよりも、パフェの種類が増えてだんだん豪華になってきた。

とてもいい傾向だ。サトミが喜ぶ顔は俺達は自分のことの数倍嬉しい。

ただし、値段も跳ね上がったけど。


パフェはサトミより先に食ったら殴られるので、またあとでねとアイスコーヒー頼む。

まだ時間がある。

暇なので、女の子の雑誌を手に取りめくってみた。

女の写真が沢山だ。

暇つぶしにいい。


うーむ、この子はダメだ。

こっちはいい。趣味だ。あー、ダメだ、髪が長い。

髪の長い女は煩わしい。

身体に長ーい髪がくっつくと気持ち悪い。


こっちの女はいい。あとは臭いだな。

いや、ダメだ、爪が長い。ペニスが傷ついたら俺は死ぬ。

別の意味で死ぬ。


「あら、女性誌興味がおありなんですか?」


アイスコーヒー持ってきて、女の子が俺に聞いてくる。

うん、この女は趣味範囲だ。


「趣味にぴったりなんだ。」


「まあ!ステキね。」


ステキなのか…、まあニッコリ微笑んでおく。


「あれ?」


まだ時間には早いのに、サトミが来て手を上げた。

相変わらずちっこくて、ちょっと痩せたように見えた。


「よう、来たか。こないだの、どうなった?

あ、お姉ちゃん、俺、いつもの。昼食ってないから軽く食うかな。モーニングと同じのある?」


「オッケー、オッケー、エッグトーストと、いつもの激甘カフェオレミルク多めねー!」


「あ、俺も同じエッグトースト下さい。サトミ、少し痩せました?」


「んー、痩せたと言うより、脂肪が落ちた。

ずっと外回りだろ?軍いたときより身体動かしてるんだよな。

休みも何していいのかわかんなくてよ。

タンパク質ばかり食べて、ヒマで筋トレばっかしてるから。

んー……

ちょっとバランス悪いよな、何食っていいのかわかんないんだ。

もう少し外食増やすかな。

ああ、それよりお前どうよ。」


相変わらず刀を背負ったまま、向かいの椅子に座るサトミの姿をじっと見る。

あれ?なんだか久しぶりに見たら、ずいぶん大人っぽく見えるな。

あれ?こんなにカッコ良かったっけ?


じっと見て、ニイッと笑っていると、あからさまにイヤな顔された。


「お前ちっとも変わらねえなー。人を品定めする目つき、止めろっつっただろ?

店員の姉ちゃんを性的な目で見たら頭剃るぞ。」


バレた。

でも、正面で見るとやっぱりガキだ。

髪ボッサボサで相変わらず可愛い。


「あ、失礼しました、先日は助かりました。

おかげさまでボスは手を引いてくれました。」


「へえ〜、あのプランって、マジ実行できるんだ。

あの倉庫吹っ飛ぶと損害一体いくらになるんだ?」


ハハッと笑い飛ばす。

可愛い、そしてヒドイ。ほんとに机上のプランなんだなあ。

驚くほど具体的、予測が的確なんだけど。


「まあ、ジンは場所が場所だけに、ほんとにあいつは銃使えなくて助かりました。

ケガも左手一本ですみましたし。」


袖をめくって包帯見せる。


「だろ?ジンはとにかく死にたくない奴だ、だからあの場所が奴とやり合うなら最適だ。

奴はナイフしか使えない。だからプランとしては難易度低い。

でも、あとのプランは使うな、ほぼ死ぬ。確実に死ぬ。

ジンは馬鹿で頭は空っぽだが、舐めない方がいい。


ボスにそう言うプランがあると知られただけで十分だ。

これから少しは考えやがるさ。」


「だといいんですがねー、ノート渡せと言われて冗談じゃねえと跳ね返しました。

今ごろ俺の部屋、粗探ししてると思います。

まあ、取られたときは、またプラン下さい。ボスの先読みできるのはサトミくらいなので。」


「俺はなー、辞めたっつってるだろー」


ウンザリした様子で足を組む。その仕草も可愛い。


「まあ、そう仰らず。ちゃんと報酬払いますって。

あ!そうそう、黒蜜のワイヤー預かってきました。あと、コインセル。

ワイヤー、サンプルと書いてある奴は開発中の奴らしいです。

使ったら感想聞きたいって。」


「ふうん……ニッポン人って満足しねえ奴らだなあ。あれで十分だろ。

うん、助かった。サンクス」


「あと、次回からニッポン製はオリジナルプライスが上がるそうです。

なんであの国、yenなんですかね。妙に有事にはレートが跳ね上がるし。

代替品ならチャイナらしいんですけど。」


ニッポン製ワイヤーとセルは、この国ではなかなか手に入らない。

軍出入りの武器商が、唯一ニッポンにルート持っているのでそれを通じて手に入れている。

通常は武器商通して郵便局に直送しているが、今回急ぐというので俺が預かってきた。

頼って貰えてメチャクチャ嬉しい。


「ダメだな、倍に上がってもニッポンの使う。

チャイナは硬いんだ。しなりが悪い。巻き取りの時、モーターに負荷がかかりすぎる。

柔らかいのは簡単に切れるし。サビが早い。あれは使い物にならねえ。


……黒はなー,もう別に使わなくてもいいんだけどさ。保守が面倒だし、コストが馬鹿にならねえし。

まあ、元々日本刀って奴のまともな使い方じゃ無いしな。もう、あいつは錆びたって……」


「だっ…ダメです!!」


なんだか、言葉の雲行きが怪しい。驚いて、思わず立ち上がった。

ロンドと第1師団はだいたい1000キロくらい離れてると思って下さい。

そうですね、東京札幌間くらいでしょうか。

道が良くないので、道行きはとてもダートです。休憩挟んで一泊くらいは必要ですね。

しかし遊びに行くには、ほどよい距離かと思います。

程良すぎて、みんな来たがります。

サトミはだから、あまり寂しくありません。

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