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4、笑い男、デッドエンドの理由(プラン決行する)

ジンにはサトミに連絡取って、プランを使えと指示されたことを伝えた。

ジンは天気が良すぎると機嫌が悪く、サトミに電話したことが気にくわないと、ボディアーマーに10発ほど銃弾をぶち込んでくる。

まあ、いつものことだが、それでも勝手にしろと許しをくれた。


部下の班長たちはプランの存在を知ってはいるが、命がけで現実的では無いと告げている。

その時話し合って、ボス対策プランノートは俺が預かり、誰かがトライするときは部屋のドアにある言葉を書くことを決めた。


と、言う訳で、アサルトライフル1丁とハンドガン2丁、ナイフ数本、マガジン、水、携帯食をベストに入れ込んで、まあいつもの装備で部屋の前に立つと、マジックのキャップを歯で噛み、ポンッとキャップを取る。

「 Rp 」でっかく書いて、マジックをドアの前に置いた。

Running the plan(プランを実行する)の頭文字だ。


サトミが使っていた角部屋まで来て、敬礼する。

ここはそのまま誰も使う予定は無い。と言うか、勝手に使ったら殺されそうな雰囲気だ。

ドアは沢山の、黒蜜が貫いた穴だらけだ。

身を守る寝ぼけ癖は、唯一の子供らしい一面で、クスリと笑った。


「プラン決行する」


ボス対策プラン、Noise, and silence. 頭文字取ってプランNS。


騒いで黙れって事だ。


内容は詳細に書いてある。

考えられる相手の反応から次の行動まで。


このノートにはボスに一泡吹かせるプランが難易度別に10本ほど書いてあるが、完成度高い3本残してバツが引いてある。

バツしてあるプランも読むと、どこがダメなのかわからない。

これは随分前からヒマなとき、楽しんで書いていたって言うんだから末恐ろしいガキだ。

マスターノートは隠して、メモに移してポケットに入れた。




師団本部の、弾薬庫敷地へ向かう。

弾薬庫はもちろん、ゲートを通らねば入れない。

見張りにパスを見せると、上手いこと下の奴が来ていた。


「部下の方にご用ですか?」


「ああ」


ニッコリ、うなずいて微笑みで返す。

ここが一番難関だったが、すんなり通れた。


第一師団の弾薬庫敷地は広い。

部隊別で、特にはずれにあるタナトスの倉庫は武器も装備も秘匿事項なので別にA、B、2つのデカい倉庫に分かれている。実は他にもあるのだが、場所は公開されていない。


「あれ?副隊長何か?どうしたんです?重装備して。ここ、火気厳禁エリアなんですが。」


部隊の下っ端が二人、B倉庫から出てきた。

ファイルを持っているところを見ると、リストチェックなのだろう。

顔を見ると、戸惑って二人顔を合わせている。


「ああ、気にするな。お前たちはお前たちの仕事しろ。

俺はちょっとヤボ用だ。」


「は?はあ……鍵は…かけますけど。」


面倒くさい、笑ってうなずく。


「ああ、そうだ。俺と会ったことは喋るな。」


「え?」


「いいな」


「は、はい」


真顔で返すと、一変して蒼白な顔で、倉庫に鍵をかけて、そっと離れる。

A倉庫に向かい、シャッターの前に立つとポケットから電話を取り出し、いつもの直通ラインにかけた。

特に作戦を行っている時間でも無い。

不審を感じたのか、直通なのに秘書が出る。

自分が何故電話をかけたかを感づいたようだ。

ボスのカンの鋭さは時々イヤになる。


「何故かけたか、ご存じのはずです。

出て頂けないのでしたら、倉庫Aを破壊します。


あー、違いますよ〜

ははは!冗談じゃないですとも。

え〜、信じてくれないならGPSで確認して下さいよ〜。って伝えて下さい。」


電話を切って、その場で待つ。

本部の方を、双眼鏡で確認する。

しばらくすると、ずいぶん離れた官舎の方から偵察ドローンが上がった。


「ヒヒヒ、ちょっと慌ててやがる。」


アサルトライフルを構え、打ち落とす。

まあ、宣戦布告だ。

ここに立っていると,どこからでも狙撃される可能性はある。

だが、ここは火気厳禁の火薬地帯だ。


サイレンが鳴って、総員室内待機の放送が鳴った。

この目立つ行動を一般兵に見せないためだ。

「目立つ」それはタナトスが、ボスが一番嫌う方法だ。


電話が鳴った。


通話ボタンを押してみる。

ボスの声が静かに始まった。

要求は何かと聞く。


「おわかりかと思いますが。


…えー?階級なんかどーでもいいんですよ。

どーせ俺達は生きるか死ぬかしかないじゃないですかー。

ええ、サトミに連絡取ったの俺です。


何しろ、お友達ですし!


ははっ!

一応サトミの受け売りですが、言っておきます。

俺達に脅しはいらない。俺達に必要なのは信頼だ。

間違った時にだけ、手を貸してくれ。


俺が何年あんたの下にいると思ってんです?

表の知り合いに語ってはいけない事項くらいわかってますよ。

俺があんな野郎頼って逃げるとでも?亡命?暴露?


ハハッお笑いですね。俺はあんたと一緒に腐っていいと思ったから付いてきたんです。

そうじゃなきゃ、とっくにもう、頭撃ち抜いて死んでますよ。

あんなすぐ死にそうな奴まで隊に入れる必要は無いんです。」


なんの話かわからないという。

まあいつものことだ。

この人には回りくどいこと言っても、一緒にグルグル回るだけだ。

核心にはちっとも近づかない。


「あのですねー。

ジミー・ブラウンは普通の、なんの取り柄も無い一兵です。

タナトスに入るような奴じゃ無い。

俺との付き合いも、今のところ天気の話くらいです。

まあ、趣味範囲だから酔っ払ってセックスくらいするかもしれないけど、ガキじゃ無いんですから。


それともなんですか?いっそタナトス終了して普通の部隊に変えますか?

いいですぜ、付き合いますよ。まあ、しないでしょうけどね。」


するわけが無い。

こんな殺人部隊。


ドブに入ったら洗えばいい。

だが、その事実はいつまでも臭いで残るのだ。

この国も戦後の今は、汚れ仕事も減ったと思われます。

最高に口封じやら何やらで忙しかったのは、終戦の混乱時です。

それでも、いつ混乱がやってくるかわからない、この国の基盤の脆弱さです。

そして有事が来ると、彼らはその時、また暗躍しなければなりません。

足手まといは口を塞がれる厳しさです。

デッドはそれを知っているから、黙っていられないのです。

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