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1,メリークリスマス、ジン

クリスマスらしい。


クリスマスは嫌いだけど好きだ。


クリスマスは血の臭いがする。


戦時の中、俺が初めて人を殺したのは14の時だった。

死にたくない。

死にたくない、その思いは、戦争が長引くとどんどん膨らんでいく。


それは、いきなり始まった銃撃戦。

逃げ惑う人々の中で、俺は必死で逃げた。

俺は、死にたくないと自分以外はどうでも良くなる。

追い詰められた俺は一緒に逃げていたアニキを殺し、死体を盾にして3人いた兵を殺した。

それでも、アニキの身体を貫通した弾は、俺を狂わせた。

死にたくなかった、それだけで頭がいっぱいになる。


俺は、死にたくない。


それが当たり前だ、生きているからには死にたくない。

自分が死ぬことは考えていない。

なんの為に生きるのかは知らないが、俺は生きなければならない。

だから、ひたすら死にたくない。


それでも、人が死ぬのは怖い。

次は自分だと思うからだ。

俺は殺されたくない。

死にたくない。


だから、俺は狂ったように武器を持つ奴を殺し、罵声を浴びせる奴を殺し、そしてクリスマスも近づいた頃、俺を責める親を殺した。


何をどうすればいいのかわからなくなっていた。

俺は浮浪者のように廃墟の町をさまよい、敵国の兵を、市街戦で隠れる味方である自分の国の兵を、武器を持つゲリラや一般人を殺すことで身の危険を回避していた。

世の中のすべてが、俺を殺そうとしていた。




その日、恐らくはその部隊は俺の始末に来ていたんだと思う。

俺は必死で殺した。

装備がしっかりして、普通の部隊より統率が取れていた。

恐らくこれが特殊部隊って奴だろう、人をゲームのように狙ってくる。

俺は追い詰められ、次第に焦り、それは俺を狂わせる。


俺はただ、死にたくないだけだ。


だから、殺すしか無かった。

どれほど装備をしていても、中身はただの人間だ。

俺は気配を殺し、敵の背後に回り確実に殺して回る。

敵が焦ると、俺はなぜか笑った。

容赦や戸惑いなど無い。

確実という言葉がすべてだ。

銃は弾切れが怖いので、殺したら死体の銃からマガジンを抜いた。

ナイフは多いほど安心出来る。血や脂で切れなくなったら捨てればいい。


通信機を奪うと、敵の動きもわかった。

敵は3つに分かれて3方からこの地区を襲っている。

何かドローンというモノが飛んで俺を探しているようだ。

壊れたビルに上って見ると、何か小さなモノが3台飛んでいる。


わけがわからないモノは怖い、落ちて来て死ぬかもしれない。

いいや、きっとアレは気がつかないうちに、いきなり俺を殺すに違いない。


殺した兵のライフルを奪い、ことごとく打ち落とす。

俺は少し安心しながら、空も気になるようになった。

みんなが俺を殺そうとしている。

恐怖心が跳ね上がった。


逃げてる女子供も怖くて殺した。

殺すと、敵が減ったような気分になってホッとする。

そして、俺は殺したあと頭の中が快感に満たされるようになっていく。

敵は、誰も背後から近づく俺に気がつかない。


その内、俺は自分が透明人間だと言うことに気がついた。


軍人はフル装備だと防弾装備が凄い。

どこを狙えば殺せるか、死体で試してそのポイントを把握する。

だんだん、殺すのが面白くなっていった。


面白い?

いいや、それより俺は死にたくない。



「へえ、お前、そんなに死ぬのが嫌か。怖いのか。」



俺より小さいガキが、軍のスーツ着て背後から声をかけた。

2人殺して、最後の1人にナイフで競り勝ったときだった。

思わず笑い声が出たときだった。


信じられなかった。

俺は、そいつがいるのに気がつかなかったからだ。


パンパンパンパンッ!


キンキンカンキン!


そのガキは、近くの鉄の棒を持って、俺の撃つ弾を全部弾いた。

そいつは装備がやたら少ない。

ヘルメットも無く、ただ顔に迷彩のストール巻いて、ゴーグルを首にぶら下げている。

頭には、通信機のヘッドホン。腰にはナイフを何本も差している。

銃さえ持っておらず、背中に変な棒を背負っていた。


銃はダメだ、ナイフを抜いて飛びかかる。

ことごとく、振り下ろすナイフは避けられた。

まるで、猿のように身軽に避ける。


「キハハ、お前」


強いな!


ニイッと笑い、ナイフを突いて、逃げたところを撃った。


パンパンパンパンッ!


ギンキンキンッ!


「ぐあっ!」


跳弾が2発、俺の足に当たった。

強烈に、死にたくないという感情が満ちあふれた。

しかし、そのガキはどんなにナイフと銃を向けても当たらない。


ガキに撃った弾が跳弾して俺の腹に当たり、腕に当たる。

それでも、死にたくない思いは、その痛みを凌駕して沸き起こった。

クリスマスは、やはり短編。

ジンの思い出クリスマス。

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