薔薇園の誘い
こちらは女主人公で私立の男子校に女子一人のシチュエーションでありながら逆ハーレムでもない謎のテイストの恋愛小説になります。主に恋愛部分はBLになりますが、NLもあります。GLも連載が続けば出てくる予定です。
諸々拙い文になりますが少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
■登場人物紹介
□主人公:一色 光
…三白眼につり眉で仏頂面がトレードマークの勉強大好き女子。勉強の虫。全国模試一位。集中して勉強できれば大抵のことはどうでもいい。図書室と実験室に引き籠ることが好きで運動は苦手だが、山奥の過疎地域で育ったのでアウトドアに抵抗はない。
座右の銘は人生色々
□主人公の叔父:一色 眞波
…光の父の年が離れた弟。20代半ば。自他ともに認める極度のブラコン。15歳の光に大人気ない態度をとることが多い。自覚ありのゲイ。自分と同じく思春期に性的嗜好で悩む少年達を集め、”普通じゃないこと”で悩まずに楽しい学園生活を送れるようにと私立薔薇園学園を設立した。
□魔性の美少年:七瀬 咲夜
…男を惑わす魔性を持って生まれてしまった超絶美少年。本人の嗜好はどノンケであり、むしろ無自覚に女好きのヤリチン気質が漂う性格をしている。顔はとても可愛いが口は悪い。熊専だろうがノンケだろうがなぜか強烈に男を誘惑できてしまう。ノンケを男もいける道に無理矢理覚醒させてしまうことに葛藤を覚え、むしろゲイしかいない薔薇園学園にきてノンケ男に出会わないようにしている。本当は共学で可愛いJKとキャッキャウフフしたい。
サボテンのトゲは厳しい環境を生き抜くために葉っぱが変化したものらしい。
いっぽう温室の中で手塩にかけて育てられてる癖にトゲのある、このハナはなんてなんて甘ったれなんだろうか?
Rose Color School Life
「薔薇園の誘い」
カチャリ、と煎れたての熱い紅茶を一口飲んだあと叔父はカップを皿の上に置いた。
「この学校は俺が理事長を務める私立の学校というのは、もう話たよな。」
あれから叔父は真木さんに自分の分の紅茶も用意させると、二人部屋には大きいL字型ソファの曲がり角の背もたれにゆったりと腰を降ろした。
背中を向けているのは七瀬少年対策なのだろうか。
そして大袈裟に勿体ぶりながらに私の問いに答え出す。
「それは聞いたが…男子校なんて私は聞いてないぞ。父さんや母さんは知ってるのか?」
私はこの男の職業も知らなかったが、父さんと母さんは知っている筈だ。なら叔父の学園に入学することが男子校に入学するということだと知っていることになる。
この叔父が私に意地の悪い行いをするのはいつものことだが、父さんと母さんまで曲がりなりにも年頃の娘にそんな重要なことを隠すなんて…と少しショックだった。
「知ってるよ。まぁ、更に詳しく知ってるから、男子ばかりの中にお前を入れても大丈夫だと思ったんだろう。
あと、なんだかんだ俺は兄さんと乃薔薇さんに信頼されているからな。」
フフンッと私を煽るような意地の悪い笑みを浮かべて叔父は、再びカップの紅茶を一口飲んだ。
「え?何、光ちゃんにここがホモ専の高校だって言ってないんですか?」
「正確にはホモ専でもねーよ。俗過ぎる言い方をするな。
思春期に性嗜好の問題で悩む男子諸君ものびのびと生きられ、青春を謳歌できるように考えて設立した志高い学園だ。」
ソワソワとしながら私の影に隠れている七瀬少年は、私より早く叔父の言葉に食いついた。
それを受けて叔父は不機嫌そうに話を返すと、気を取り直すように紅茶をまた一口飲んだ。
さっきからやたら紅茶を飲んでるが、叔父ってこんなに紅茶好きだったろうか。
「性嗜好の問題で悩むっていうのが…所謂ゲイだったりバイだったり…ってこと、か?」
「そうらしいよ。眞波さんの個人的経験と似たような女子校の存在に触発されたんだって。」
私がなんとなくはっきり聞いていいのか迷い、たどたどしく叔父に疑問を答えを問うと、また横から七瀬少年が勝手に答えをくれる。
「お前は……。もう黙ってろ。ま、そういうことだ。だから男子ばかりの中に放り込むと言っても、十人並み以下のお前がいらない心配をする必要はほぼないぞ。対象外だからな。」
七瀬少年の横やりに呆れながらも、しっかり私を貶しながら女としての心配はいらないと返す。ついでに八つ当たりで私のつむじをつつきながら…。大人の癖本当に大人げない。やめろ。
しかし、こんなにペースを乱されている叔父も珍しい。普段の叔父なら冷たい言葉でやり込めるだけだろう。
七瀬少年は愛嬌から先に生まれて来たのかもしれない。普通怒られるような言動をしてもどこか憎ませない不思議な魅力があった。
「まぁ、この隣にいる少年のチャラさ次第だけど、そういう心配はいらないだろうってわかった。でも男子だけの花園になんでわざわざ私を入れようとしてるんだ?男同士の空間に安心したい他の生徒にとっては異物じゃないの?」
「それだよ。」
俺は対象内だよ!っと無駄にほざく隣の少年を牽制しながら、やっぱり消えない疑問を投げ掛けると、鋭さを含んだ一言が返された。
「ここは温室だ。優しい場所でありたい。ここで位は気兼ねなく過ごして欲しい。理解し合えるもの同士で出会って、仲良くして欲しい。素直に好きだと叫べるように、一生で一度の青春くらい、楽しんで欲しい。
ーーーだが、ここは決して世界の全てじゃない。ここを卒業した先の世界がある。」
凄く、真剣で真摯な声だった。
私が初めて聞く声だった。
ソファの背もたれに座る真っ直ぐな背中を、初めて会う人を見るように見つめてしまう。
「だから、お前を呼んだんだ。」
答えになっていなかったけれど、なんだか不思議と納得出来てしまう気がした。
頭の中で、柔らかな声が聞こえた気がした。
優しい場所でありたい、どこかで聞いたことがある気がする。
優しいだけじゃイヤなんだ、どこかで誰かが泣いた気がした。
「とりあえず、お前は七瀬を守ってやれ。お前もコイツもこの学園の嵐の目だ。異物同士で仲良くしろよ。」
「光ちゃんは、アレで納得出来た?」
あれから、叔父は飲みきった紅茶のカップをそっと真木さんに手渡し、語ることはもう無いとでも言うように201号室を跡にした。
真木さんも紅茶容器などを片すと、叔父の後を追うように部屋を後にした。
二人が去った後の部屋に沈黙が満ちると、この空気が苦手なのだろう七瀬少年が口を開いた。
「納得出来たような…出来ないような…。とりあえず、私はアンタを守れって言われたけど…。
アンタはこの学園に入って本当に良かったの?」
なんとも言えなかった。素直な気持ちだ。
わかったような、わからないような…あの時頭に響いた声はなんだったんだろうか。
「アンタじゃない。な・な・せ・さ・く・や。咲夜って呼んでね。」
「…七瀬くんはこの学園に」
「咲・夜。」
可愛らしい頬を膨らませながら少年は不満げに呼称の訂正を求める。距離の詰め方が半端じゃない。
「わかった。咲夜、咲夜ね。もう呼び捨てでいいかな。私のことも光ちゃんじゃなくて光って呼んで欲しい。そっちの方が慣れてるから。
咲夜はこの学園に本当に入ってよかったのか?」
「えー咲夜呼び捨てはいいけど光ちゃんて呼びたいな〰️。でもだんだん素が見えてきて嬉しいよ!そーゆー無愛想なしゃべり方なんだね。クール女子も好きだよ俺!」
「」
相変わらずペースを乱される。質問に答えないしどうでもいい部分に食いつくし…。
「んんっ。…光ちゃん。俺はね、男に襲われるこの体質というか呪いが嫌なんだ。だから自ら男の園に入っていくのは自殺行為に見えるかもしれない。
それはそうなんだけど、この学園に入った一番の理由は、ノンケの友達を男もイケるようにしちゃって友情が壊れたことがショックだったからなんだ。」
私がジト目で見つめると何かを察したのか、咳払いをして咲夜は割りと真剣な面持ちで先ほどの質問に答えを返してくれた。
ああ、一番の悲痛な叫びは確かにその部分だったな、と思い返す。
「知らないやつならまだいいんだ。でも、一番の親友だと思ってたやつまであんな風にしちゃうとなると、俺ってもう男の友達作れないのかな~って、ちょっと考えちゃってさ。
だから、とりあえずノンケ男との付き合い方を見直そうとおもって。最初から恋愛対象として見られてると自覚出来ればまたまた違うし。ここで一拍おいて距離感つかみ直したいんだよね。」
びっくりした。
距離なしで馴れ馴れしかったりチャラかったりで、深刻な悩みの割に考えることを放棄して、勢いと感情のままに生きていくタイプの人間かと思っていた…、よく、考えてこの学園に来ていたのだ。
さっきの真剣な叔父の背中を見ても思ったけれど、私は自分で思っているよりも上部だけでしか人を見れていないのかもしれない。
「そっか。真剣に考えてここに来たんだ。」
私の素直に感嘆を込めた相槌に、咲夜は顔をほころばせた。
「だったら、この学園でうまくやってけるよう手伝うよ。私もやりたいことがあるから付きっきりは無理だと思うけど、咲夜が変な目に合わないようになるべく側にいるよ。」
嵐の目、叔父は私達をそう言った。
その意図の全てはわからないけれど、この優しい場所でありたいという学園で私たちはどんな結果をもたらすんだろう。
わからないけれど、私達はただ、前に進みたいんだと思う。
>>>To Be next
やっと導入の終わりです。
次からはメイン三人以外もどんどんキャラクター出てくるし掘り下げて行くと思います。
気長に気軽にお待ちいただければ幸いです。