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衣食に関するリアルな悩み・告白編

 納豆を啜って寝た翌朝のことだった。

 僕と紫衣里は、カーテンの隙間から差し込む朝日の中で、囁きと喘ぎを交わしていた。

「紫衣里……」

つややかな唇を微かに開いて、甘い吐息が漏れる。

「ダメ……もう私……ちゃんと買ってきて」

 ひと晩じゅう頑張って、もう体力の限界だった。

 それでも、この頼みだけは断れない。

「分かったよ……。ちょっとの間だけど、我慢してくれよ」

 僕はファスナーの開いた寝袋から跳ね起きると、大急ぎでTシャツと短パンに着替えた。

 果てしなく軽くなった財布をポケットに、最寄りのコンビニへと走る。

 買ってきたものを、紫衣里の前に突き出した。


「ほら、食え!」

 満面の笑みと共に、震える声が答える。

「ありがと……」

 目をしょぼつかせながら、紫衣里はずるずると布団から這い出した。

 さすがに下着一枚で寝かすのはアレなので、白地に青のストライプが入ったパジャマの上下は買ってある。

結構高かったが、それがこのアパートの台所にトドメを刺した最終要因でもあった。

「ゆっくり食えよ……」

 ないないづくしの中で意気消沈してい僕に気付いたのか、ようやく、紫衣里は申し訳なさそうに顔を伏せた。

「ごめんね……」 

 上目遣いにそう言われると、やはり何も言えなくなる。

 僕はつい、強がってしまった。

「気にすんな」

 だが、紫衣里は、さっきとは打って変わって大真面目な顔で言った。

「迷惑なら、いつでもスプーン鳴らすから」

 家計と食費と収入源のことで頭がいっぱいだった僕は、何のことだか分からなかった。

「スプーン?」

 聞き返すと、紫衣里はパジャマの胸元を開いた。

「それでいいなら……鳴らすよ」

 熱い吐息で、声が震えていた。

 白く細い指先に吊るされたのスプーンが、冷たく輝いている。

 だが、あの、鬼の眼をした老人は言った。


 「1カ月の間、鳴らしてはいけない」


「ダメだ」

 僕は即答した。

「……どうして?」

 真面目な顔で睨みつける紫衣里に、僕は真っ向から答えた。

「いつまでも、君と一緒にいたい」

 葉の浮くような言葉だったが、本気だった。

 生活費が欲しかったら、働けばいい。それだけのことだ。

 紫衣里はというと、僕から目を反らして答える。

「無理……」

 力なくつぶやく紫衣里に、僕は告白の勢いに任せて言い切った。

「やる! ……やってみせる!

実を言うと、もうe-スポーツのプロになることなんかどうでもよくなっていた。

 何なら、高校を辞めて紫衣里のために働いたっていい。

 だが、そこまで覚悟を決めた僕への返事は、予想を遥かに超えていた。

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