これは遺言なんだと思う
ナナが死んだ ふらふらとトイレシートに行き 血を吐いて倒れ
そのまま家族に看取られ眠るように死んだ
チワワのナナ
14年と6カ月と老犬ではあるが
しっかり立ち しっかり歩き
しっかり食べた
それがたとえ薬の支えがあったとしても
老犬らしからぬ 元気さがあった
二日前 調子が悪そうだったが普通にご飯は食べていた
病院に行き診察をして 注射してもらい 明日様子が変わらなかったら
また来て と次の日は休診なのに 長年 お世話になった獣医さんは
気にせず来てと 言ってくれた
晩ごはんも完食し 水も飲んだ
トイレに自分で行き
オシッコもウンチもした
調子は悪そうだがいつも通りだった
ただ 大好きな おやつは 食べなかった
次の日 調子は戻らなかった
前は調子が悪そうな時も注射や薬で次の日ケロッとしていたのに
病院に行き 診察をしてもらった
覚悟はしておいてください と言われ
また夕方に来てと
家に帰ると その日は たまたま 家族みんながいて
ナナは つらそうながらも嬉しそうにしていた
時々酸素をあげてと言われていたが 使い切りそうだったので
母と弟に 酸素缶を買いに行ってもらった
その時には もう 力なくうずくまっていて
大好きな おやつにも反応しなくなった
その時思い出した
「とくべつだぞー」と言ってあげる
ゼリー状のおやつがあったのを
「ちょっと待ってて」と取りに行き
「ナナ ほら とくべつな おやつー」と
ゼリー状のおやつを口元に持っていくと
一度ペロッとなめてくれた 「おいしだろーもっといいんだよ」
しかし それ以上は食べず またじっとしていた
あげる酸素も少なくなり 二人はまだかと 焦っていると
突然 ナナは立ち上がり ふらふらとトイレの方へ歩き出した
オシッコかウンチかと 支えてやるがしそうにない
水の場所と 間違えたのかと連れてってやるが
またトイレに ふらふら歩いていき
トイレの上でじっとしている 「ナナ どうした?いいよ トイレだよ」
そう言った瞬間 口から血を吐き 倒れた
驚き 僕は泣きながら抱き上げ 名前を呼び
ぐったりするナナに「もう少しだけ 頑張って」と体ををさすった
震える手で母に電話をする「ナナが・・」
それ以上は泣き声でまともに喋れなかったが
察した母は「直ぐ帰る」と言い電話を切った
「ゴメンもう少しだけ もうすぐみんな帰ってくるから」とさすり続け
ドアの開く音が聞こえ「ほら みんな帰ってきたよ」
帰ってきた二人がナナと呼ぶと 少しだけ反応をして
眠るように息を引き取った 僕のわがままを聞いてくれて
みんなが帰ってくるまで 頑張ってくれた
三日前まで元気だったのに急に弱りあっけなく
薬に支えられていた体に
限界にきて
14年6カ月の犬生を終えた
朝8時 雨戸を開ける音でナナは起き 「ナナ おーはよ」とあいさつ
寝ぼけてるナナを 「しーしー無いか?」と聞くと
トコトコとトイレに行き オシッコをしする
「じゃあ めしめーしにしようか」
めしめーしとは ごはんの事
なんとなく言っていたら定着してしまった言葉だ
するとナナはトコトコと
キッチンの自分の食事スペースに行き 待っている
「じゃあ あーして」 と言い 薬を飲ませる
「よし いいこ めしめーし 食べよ」その時ナナは うずうずしていた
僕はナナの前に座りお茶碗から
一粒 ナナの口元に持っていく
それを首をかしげ一粒ずつ食べる ゆっくりと一粒一粒食べ 完食すると
庭に連れて出る すると外の確認のためか
すごい勢いで辺りの空気を一回だけ吸う
庭で「ぷりぷりないか」と言うと ナナは庭のいつもの場所ウロチョロする
庭でウンチをする気分ではない としない そんなときは 家のトイレにする
ナナの中では何か決まりがあるのだろう
ここ数カ月 硬いウンチが出るので踏ん張り切れないので
ティッシュを手に 出にくいウンチを もみほぐしてお手伝いをする
たまに転がり 手でウンチをダイレクトキャッチし大爆笑した
ウンチを手に乗っけて笑う事なんて無いと思っていたが平気で大爆笑した
ナナはきょとんとしていた
それよりもウンチを頑張るとおやつをあげていたので おやつが気になるようだった
お散歩には車で出かけ その最中もおやつを「ちょうだい」としゃべってアピールして
ウンチやオシッコしたくなったら吠えて教えてくれた
いろんな場所にいった
初めての場所はブルブルと緊張するのに 一度来た場所なら平気で
抱っこして散歩した ついでにナナの頭の匂いを嗅がせてもらうのが最高だった
お返しに僕の鼻をぺろりと舐めてくれた
夕方 晩ごはんはまだかと催促してくるが18時20分と決まっていた
お薬の時間があるから 晩ごはんを首をかしげ一粒ずつ食べ終わると
僕がご飯を食べるのをじっと待ち
最後に食べる納豆を少し分けてあげた
夜20時 ヨーグルトと焼き芋をちょっとだけあげる
また お薬の時間だ
何度も薬が続くと可哀そうなので焼き芋に隠してあげる
夜23時 僕に寝る前のおやつをくれと 僕のところまでまっすぐ来て
おやつを1つ食べ 満足して 母の布団にもぐりこんで寝る
数時間後 むくっと起きて もう一度 おやつをねだる
おやつをくれと僕を呼び 起こされるが
全然 苦ではなかった むしろ うれしかった
おやつを1つ食べ
「今日のはお終い あした おはよー してから」
と言うと納得したのか分からないが
また母の布団に潜り込んで 朝まで寝てる それで一日が終わる
それが当たり前の毎日だったのに
お気に入りの場所で眠ったように死んでいる
ナナの頭の匂いを嗅いでみる いつもの匂いがした
でも鼻ぺろのお返しは無かった
いつもはそこから お水の場所に行って 水を飲み
トイレの場所に行って トイレをし
おやつが置いてある場所を向き
ちょうだいとアピールをしていた
白内障になって目が見えなくなっていたのに
記憶だけで 家の中を普通に歩き回っていた
6カ月くらい前 目の前のおやつに気づかないことに気づいた
ごはんを見えないまま がっつくので むせてしまう
いろいろ 早食い防止茶碗とか試したが
一粒づつ手であげることになった
食いしん坊だから
ごねるかと思ったが
すんなり口を開け少し首をかしげ一粒を待つ顔は
とても可愛い顔をしていた
1年くらい前 すごく調子が悪そうだった
年だし すこし 覚悟した もうそろそろかもしれない
病院に行き 注射をし 薬をもらうと
次の日には ケロッと していた
だが飲む薬は 増えてしまった
5年くらい前 猛ダッシュして 走り回っていた ナナが
フローリングですべり 足をくじいた
すぐに そこら中にマットを引きまくったが
足の治ったナナは
猛ダッシュすることは 無くなった
10年くらい前 しゃっくりをした
可愛いと思ったが 実は
心臓が悪く肺に水が入ったからだった
それから 24時間ごとの薬は毎日の日課になった
薬を飲ませるのは大変と聞いたが楽に飲んでくれた
12年くらい前 なんとなく僕の口を
ナナは自分の口と同じものか分かっているのか気になり
口を開け「あー」といった後 「あーしてごらん」とやってると
数回繰り返しただけで 少し口を開けるようになった
すごい天才犬だ と本当に思った
お薬を飲ます時「あー」と言いながら口元を触ると口を開け
簡単に薬を飲んでくれた
何か要求があると 吠えるのを止めさせるため
おやつを見せ ちょうだいとテレビでしゃべる犬風に 教えると
すぐに出来た それからよくしゃべるようになる
おやつのほしい時だけ
まじ天才犬だ
まっすぐな目でこっちを見て ちょうだいと言われると
おやつをあげたくなってしまう
変な武器をあたえてしまった
13年くらい前 おやつの時以外は 自尊心が強いのか
あまりかまってほしくないらしく 好かれているのか わからなかったが
ばぁちゃん家に遊びにいっても 長旅なのに オシッコをしないので
心配してたが 初めて会った猫とゆう動物に 威嚇され
オシッコまき散らしながら 飛びついてきて 頼りにはされてるんだと
オシッコが かかったのを気にすることなく
うれしく抱きしめた
14年くらい前 オシッコのしつけも
室内犬のトイレの覚えさえ方もド素人だった
あちこち オシッコしまくる
オシッコの最中だが 抱っこしてトイレに置き
「ここ シーシー」とやっていた
これは長引くかもなと思ったが
突然ひとりでトコトコとトイレに行きオシッコをしたとき
すごい この仔は天才だ と本当に感動した
しかしながらトイレはそこと決めてしまったのか 外ではしなかった
我慢するようになって猫にびびって 漏らすこととなる
なぜかそれで 外でするのはOKになったようだ
それ以来 家の庭でもするようになった
車は家ではないが ここはダメだと分かっているようで
我慢するものだと思い込んでいた 僕が悪いのだが
生理現象 止められないこともある
車でおもらしをしてしまい申し訳なさそうに
ブルブルと震える姿を見ると後始末をしながら
叱ることは出来なかったが2度目は無かった
「しーしー」と「ぷりぷり」「いいよ」のコマンドで
ココならトイレしていいよと教えてあげると
そこでするようになった
最後もふらふらなのにトイレ以外を汚さないように
トイレまで自力で歩き シートの上に血を吐いた
すごい犬を飼っていたんだなと今になって思う
14年とすこし前 初めて会ったときは ナナを無視をしていた
怒っていた 犬は飼わないと決めていたのに
黙って買ってきた母と弟に怒っていた
前に犬を飼っていた 黙って両親が買ってきた犬
シェットランドシープドッグ 名前はラッキー
子供で無知だった僕はひどい飼い主だった
いたずらをした 目の前でおならをし
小石を投げるとおやつと思って口で受け 違うと分かってペッと出した
それを見て笑うクソガキで 外で飼っていた ラッキーを
雨の日もほったらかしで 雷が怖かったのか 吠えるのを怒ってしまった
ご飯も食べないのに 具合が悪かったかもしれないのに
気にせず たまに猫まんまを与えていたバカな飼い主だった
それでも しっぽを振り愛してくれていたラッキーが 亡くなって
今までしていたことを思い返し後悔ばかりしていた
こんなひどい飼い主は犬を飼っちゃいけないと過ごしていたのに
数年後 また突然 ナナがやってきた 僕は かかわらないでおこうとした
でも三日もせずに我慢ができなかった
無視する僕をまっすぐ見てしっぽを振る姿を見たら
このままだとひどい飼い主のままだと 今度は後悔しないように
この仔の一生を幸せなものにしようと やれることはやると決めた
そして14年6カ月 いろんな楽しい思い出を作った
犬のことをいろいろ調べ
いっぱい遊んだ
いろんなところに行った
体調が悪そうならすぐに病院に行った
いたずらなんか もちろんしなかった
ラッキーがヤキモチを焼くかもしれないが 大切にした
ナナが僕を思い出したときの顔は
笑顔がいいからと いつも笑顔で接した
そういえば目が見えなくなった時
僕の笑顔を 思い出してくれていただろうか
ナナを埋葬しに ばぁちゃん家に行った
そこに行く途中の車の中では 母に抱かれ
本当に普通に寝てるようだった
ばぁちゃん家に着くまでの
最後のお散歩だ
その日は遅かったので 僕の枕元に置き
いっしょに寝た
いつも母のところで寝るのをうらやましく思っていた
「最後の最後に一緒に寝れたね」と
撫でた頭はもう冷たくなっていた
ばぁちゃん家の猫が来てナナの鼻先を鼻つんした
反応が無いのを不思議そうにしていた
この猫は人以外でナナが唯一仲良くなった猫だ
最初は威嚇していたのに毎年会うたび仲良くなっていた
次の日 ナナを少しでもきれいにしてやりたくて
身体を拭いてやった ブラッシングもした
耳掃除も爪切りは特に大嫌いで大変だったのに
おとなしいナナに「すごい 我慢できるね いいこだね」と言った
そして ばぁちゃんの山にある ラッキーのお墓の横に
いつも使っていた毛布とクッション リード
最初にあげた クマのぬいぐるみ 新しいのを買ってあげても
そのぬいぐるみはお気に入りで
穴が開くほど遊んでいた へたくそながら
僕が穴を縫ってふさぐのを待ち遠しそうに待っていたぬいぐるみ
目が見えなくなってからは ぬいぐるみでは遊ばなくなっていたけど
それと 少しのおやつといっしょに
最後にみんなで サヨナラをした
僕もいろいろ言いたかったが「ありがとう」とだけしか言えなかった
埋葬し お墓を作り 花壇も作った お参りをして
家に帰ったとき もういないのは分かっているのに
勢いよく歩くので たまに頭をぶつけるのから
そこら中に張ったクッション素材のシートと
すべらないように引いたマット
襖を閉めたままでも出入りできるように犬用に
僕が作った出入口は
いつもと変りなく そこにあって
そこのカーテンを抜けて
おやつをちょうだいと催促しに来るんじゃないかと思うぐらい
いつもの変わらないのに ナナだけ いない場所を見て
涙があふれてしまった
家に残された ナナの備品や残ったエサは
近くの犬の保護施設に貰ってもらった
残してホコリを被るより 使ってもらった方がいいと思ったから
バタバタと忙しく1カ月が過ぎた
ナナの使っていたものは ほとんど無くなったが
家 庭 車 すべてに思い出が残っていて
あの日常が 今でもあるように感じてしまう
ナナの為の毎日の決まり事が無くなったのに
ついつい晩ごはんの納豆を ナナの分 残してしまい
笑いながら泣いてしまう
もっともっと こうして ナナの為に何かしたかった
ほかにも いろいろ してあげたいと
やっぱり後悔はした 後悔しないようにしていたのに
でもこの後悔は あのラッキーの時の後悔じゃない
ナナはラッキーの代わりじゃなかった
全然性格も違う 別の犬だ
目も見えず 心臓も悪く
走り回ることも出来ず食べることくらいしか楽しみが無かったかもしれないのに
それを気にせず懸命に生きたナナとの日常を もっともっと過ごしたかった
僕のわがままだ
ラッキーへの後悔は消えないが それでいい
もう犬を飼う気は無い でも飼ってもいいと思っている
そう思えるほど 犬とのいい関係が 作れたのは
ラッキーのおかげだ
二匹の犬は自分の一生を決して後悔なんかしている訳がない
ラッキーは膝に乗るのが大好きだった
ナナは僕の手足を 特に足を舐めるのが大好きだった
楽しいことはたくさんあった 楽しい方が多かったはず なら
二匹ともそれぞれの好きなことができた
素敵な犬生だったはずだ
こんな話を聞かされえてところで
他人の犬が 死んだのを
誰もそんなに悲しんだりしないことは 分かっている
僕だって 他人の犬が死んだところで こんなにも悲しんだりしないし
ばぁちゃんのところの前に飼っていた猫が死んでも
そっかー残念だったね くらいにしか思わない人間だ
薄情だ 薄情な人間だから
この気持ちもきっと薄れていくだろう
それは嫌だった
だから今 書きたかった
こんな思いの丈を書く気になったのは 犬との思い出を
何か残しておきたかったから
誰かに読まれることを想定しないで書いた乱文だ
でも誰かに知ってほしい
こんなに二匹の犬のことを大事にしていた僕がいたことを
これは遺言なんだと思う
死後の世界なんて信じていないけど
二匹はきっと天国にいると信じてる
死後の世界を信じていないぼくは
消えてしまうかもしれない
誰にも読まれる想定はしていないが
もしかして これを読んだ人がいて
その人がもし天国にいったときに
きっと仲良く一緒にいる
ナナとラッキーという
二匹の犬がいたら伝えてほしい
大好きな君たちと過ごした日々は最高の宝物だと




