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Endless Nightmare  作者: しろがね
1/2

1話「夢を見ている」

 _______夢を見ているのです。


 誰かが言っていた。


 _______この世の人達が見ているもの、それは夢なのです。


 遠い昔、誰かが言っていた。


 _______神がどこかに落とした、夢なのです。





 ******


「ふふふ、勇者よ。我をここまで追い詰めるとはな」


 魔王が目の前で笑う。

 この世界に召喚されて5年、ずっとこいつを倒すために戦ってきたんだ。

 愛剣のエクスカリバーを構える。

 仲間を犠牲にしてでもここまで来たんだ。

 何としてもここでこいつを倒さなきゃ、アイツらが報われない。


「行くぞ、魔王!!」

「さあ、こい。勇者よ」


 魔王が大きな鉤爪で攻撃しようと振りかぶる。

 だが、スピードは俺の方が上だ。

 雑念は捨てて、目をつぶり、懐に潜り込むと、一閃。

 魔王の体が真っ二つに分かれた。


「ぐふっ、さすが勇者だな………だが……な…………これは、夢だ!」


 何を言っているんだ、最後の最後で負け惜しみだろうか。

 ああ、やっと倒したんだという達成感とともに目を開く。


「えっ…………?」


 目を開けると、そこにいるのは首から血を吹き出しながら倒れるさゆり。

 俺の彼女のさゆりだった。

 右手に目をやると、血に紅くに染った果物ナイフ。

 何が起こったのか理解が追いつかない。

 魔王は?異世界は?

 だめだ、思考が追いつかない。

 何故彼女は倒れている?何故俺の右手にはナイフが握られているんだ?


 ピンポーン


 玄関のチャイムがなる。

 誰だろうか、このまま誰かに見つかるのはまずい。

 居留守を使うか。それともこのまま玄関で対応するか。

 だが、冷静に考えてみると自分の服は血で紅く染まっている。このまま出れば間違いなく騒ぎになるだろう。


「おーい、大丈夫か?さゆり」


 男の声がしたかと思うと、扉が開く音がして誰かが入ってきた。

 まずい、非常にまずい。

 焦りながらどうしようかと考える。

 咄嗟に扉が半開きだったトイレへと入った。

 息を殺して男が扉の前を通り過ぎるのを待つ。


「おーい、さゆり?居ないのか?」


 男が扉の前を通り過ぎる。さゆりが倒れている部屋に着いたのか、「うわぁぁ」と、悲鳴が聞こえてきた。

 でるなら、今しかない。

 トイレから飛び出す。男がこちらに気づいて何か言っているが気にしている場合じゃない。

 全力で飛び出し、階段を駆け下りる。

 どこへ向かえばいいのかもわからずにただただ血まみれで駆け出した。




 路地裏で息を殺す。大通りはパトカーが行き交っている。出るのは危険だ。

  それにしてもどうしてこうなった。

  いつの間にこの世界に帰ってきたんだ。

  そして、いつ俺がさゆりを殺したんだ。

 いくら考えても答えは出ない。

 だが、今捕まる訳にはいけない。逃げ出した以上このまま捕まえられたら完全に有罪になるだろう。

 とにかく逃げなければ。


「おい、おい兄ちゃん」


 声の方を向くと、そこには薄汚い服装をした40代くらいの男が立っていた。


「な、なんですか?」


 逃げるべきか、逃げまいか。幸いあっちの世界で鍛えた足がある。逃げるのは容易だ。


「兄ちゃん、追われてんだろこっちへ来いよ」


 ニヤニヤとしながら手招きをする。信じていいのかは分からないが、信じるほか選択肢がない。


「その前に、そっちに行ったら何がある?あんたは誰だ?」


 すると、その男は不敵な笑みを浮かべ「俺はお前と同種だよ」と言うと、路地のさらに裏の方へ向かって行った。

 見失わないように男について行く。

 しばらく男について歩くと、四方をビルで囲まれた少し開けたところに出た。


「おい、お前ら新入りを連れてきたぞ」


 男が声をかけると四、五人薄汚い男達がぞろぞろでてきた。


「この人たちは?」


「みんなお前と同じさ、あっちの世界とこっちの世界を行き来している」


「行き来?」


 行き来とはなんの事か、俺はこっちに戻ってきたけど今のところ向こうには行ってない。


「ああ、そうだ。行き来だ。俺達はこの世界とあの世界を行き来しているお前はまだみたいだけどな」


「なんなんだよ、行き来って。訳わかんねぇよ」


 すると、奥の方で黙っていた髭がボサボサの男が前に出てきて「誰かが言ってたよ。この世界は神の見た夢なんだってよ」と言ってニヤリと口角を上げた。


 ******


 目を覚ます。するとそこは見慣れたベット。

 王都デルタの勇者専用。つまり俺専用の部屋だ。

 全ては夢だったのか、我ながら悪趣味な夢だ。

 恋人を殺して逃げ惑うなんて。

 まあ、なんにせよ夢は夢だと割り切ろう。

 俺がベットからたとうとすると、扉が開いた。


「勇者様!!目を覚まされたんですねっ」


 扉から現れたのは金髪の美少女だった。この国の第三王女クリスタだ。


「ああ、クリスタ。俺ってどのくらい寝てたんだ?」

「まあまあ、いいじゃないですか」


 クリスタが微笑を浮かべて近づいてくる。


「ん?どうしたんだクリスタ_____ぐふっ」


 そばまで来たクリスタはそのまま俺の腹に隠し持っていた短刀を突き立てた。


「な…………ぜだ」


 すると、クリスタは気持ちが悪いほどに笑みを浮かべて「大丈夫ですよ。勇者様。この世界は夢なんですから」と呟いた。

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