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第4話 ノスタルジア

○ 錦天満宮  (朝)

  閑散としている 

  美砂子 拝殿の前で手を合わせる


 美砂子(M)「結局 ネットでは この写真の正体は 判りませんでした」


○ 新京極通り 映画館の前  (朝)

  美砂子 映画館を見上げる


 美砂子   「シネコンに なったんだ]


○ 書店の店内  (朝)

  美砂子 映画雑誌を立ち読みしてる


○ 木屋町通り (昼前)

  花見客 観光客等で賑わっている

  美砂子(小声)テネーシーワルツのハミング

  美砂子 歩いている


○ 木屋町通りのとある路地裏 (昼前)

  美砂子 カフェレストラン ノスタルジアの前にやって来る


○ 同店内 

  ドアが開き美砂子 入って来る

  ジャズが流れている


 リカ   「いらっしゃいませ あ!」

  リカ 美砂子を見て微笑んで会釈する

 美砂子  「おはようございます」

 リカ   「昨日は あの後 大丈夫でした?」

 美砂子  「えっ?」

 リカ   「そうとう お二人とも 酔ってらっしゃたようなので」

 美砂子  「はぁ・・・それが あまり覚えてないんです・・・何か変なことしなかったですか」

 リカ   「いいえ お二人とも 気分良く 出て行かれましたよ 叫びながら」

  美砂子 恥ずかしそうに

 美砂子  「叫び・・・ そ、そうですか・・・」

 リカ   「今日も お待ち合わせですか?」

 美砂子  「いいえ 一人です」

 リカ   「それでは こちらへ どうぞ」

  リカ 美砂子を席へと案内しようとする

 美砂子  「すみません ちょっと お願いが あるんですけど」

 リカ   「はい なんでしょう?」

 美砂子  「昨日の席に 座りたいんですけど いいですか」

 リカ   「昨日の席ですか・・・ えーと ちょうど空いてます いいですよ」

  リカ 美砂子を席へと案内する

 美砂子 モノクロ写真を見ながら席に座る

 リカ   「ご注文は どうされますか?」

 美砂子  「そうですね 何に しようかなぁー」

 リカ   「お腹は 大丈夫ですか?」

 美砂子  「そう言えば 朝 コーヒー飲んだきりで まだ 何も 食べてないんです」

 リカ   「それじゃ 玉子サンドは いかがですか? ここの玉子サンド 評判なんですよ」

 美砂子  「じぁ それにします 後 ミルクティー お願いします」

 リカ   「かしこまりました 玉子サンドとミルクティーですね」

  リカ 奥へと行く

  美砂子 モノクロ写真を見つめる

  × × ×

  ラインの着信音が鳴る

  美砂子 スマホに目を落とす

 美砂子  「早紀 今 起きたんだ 今日 休みって 言ってたっけ? まさか あの おじさん

       と・・・ そんな訳ないか・・・」

  美砂子 スマホをいじる

 リカ   「おまたせしました」

  ミルクティーを美砂子の前に置く

  美砂子 少し驚いて

 美砂子  「ありがとう」

  リカ 立ち去ろうとする

 美砂子  「すいません」

  リカ 立ち止り

 リカ   「はい 何か」

  美砂子 モノクロ写真を見て

 美砂子  「これ 何の写真か 判ります?」

  リカ 腰を屈めて写真を見る

 美砂子  「昔の映画のスチールでしょうか?」

 リカ   「さぁー でも この写真 不思議なんですよ」

 美砂子  「不思議って?」

 リカ   「オーナーが あっちこっちに掛け変えるんです 私が入った時は 確か レジの横に

       掛けてあったんですけど お店の中を ぐるぐる回って 今はこの一番隅っこの席に

       落ち着いてるんですよ いったい 何の 写真なんですかね」

 美砂子  「そうですか・・・ 私もスマホで調べては見たんですけど こんな映画ないみたいな

       んです」

 リカ   「オーナーに 聞いてみはります?」

 美砂子  「はい・・・ オーナーさんって 今 おられます?」

 リカ   「オーナー 何時も 3時頃 来られるんですよ」

 美砂子  「そうですか・・・じゃあ また 来ます それから 昨日 何て 叫んでました?」

 リカ   「えっ?」


○ 三条大橋付近の鴨川の河原 (午後)

  美砂子 土手に川に向いて座っている

  美砂子の後をカップルが談笑して次々と通り過ぎて行く


 美砂子  「36かぁ・・・年とちゃたなぁー」

  美砂子 川に石を投げる

 美砂子  「この年になっての離婚って きついよなぁー」

  美砂子 川に石を投げる

 美砂子  「これからどうしよう? 今の仕事続けて 年とって行くのかなぁー」 

  美砂子 川に石を投げる

 美砂子  「もう 結婚はこりごりだよ よく 早紀 3回もしたなぁー」

  美砂子 川に石を投げる

 美砂子  「昨日 早紀に スライムとか強気な事言っちゃたけど 恋愛も もういいや」

  美砂子 川に石を投げる

 美砂子  「でも 時間が立つと また したくなっちゃうのかなぁー」

  美砂子 川に石を投げる

 美砂子  「後始末 大変だなぁー」 

  美砂子 強く 川に石を投げる

 美砂子  「まぁ 子供がいないのが せめてもの 救いっか!」

  美砂子  川に石を高く放り投げげ川の流れを見つめる 

 美砂子(M)「その時 いくら考えても堂々巡り 前向きに生きて行くヒントすら出ませんでした

        まぁ 離婚は初心者ですから仕方がないと言えば仕方がなかったんですが・・・」

   美砂子 先斗町を歩いている


 美砂子(M)「私は一人っ子で母子家庭で育ちました 母は水商売をしていました 具体的に言う

        と 横須賀のキャバレーのホステスでした 母ともすれ違いの毎日でした 朝 起

        きると 母は 酔って寝ていて 学校から帰ると何時も鏡台に向かって化粧をして

        いました」


○ アパートの部屋 (回想 昭和50年代) 

   ドアが開いて 美砂子(小学生 ランドセルを背負っている)入って来る 

  美砂子 「ただいま」無音

   三浦リンダ(母) 鏡台に向って化粧をしている 

   リンダ 振り返って 笑顔で

  リンダ 「お帰り」無音

   

    テーブルの上 千円札


 美砂子(M)「母は 何時も机の上に千円札を置いて出て行きました 夕飯はその千円で好きな物

        を食べられることが 私のせめてもの楽しみでした」

    

    リンダ(派手なメイク 服装) 笑顔で手を振って出て行く

    美砂子 笑顔で手を振る


○ 回想 アパートの部屋 (昭和50年代) 

   美砂子 寝ころんでテレビを見ている


 美砂子(M)「甘い香水の匂いか残るアパートの小さな部屋で テレビだけが友達でした 特に

        映画劇場は私の心をとりこにしました ローマの休日 サウンドオブミュージッ

        ク 猿の惑星・・・ 見るだけで飽き足らず 作り話をノートに書ては 一人で

        読んでニヤニヤしてる 気持ち悪い子供でした」

   

   美砂子 キッチンのテーブルでノートに何か書いている


○ 錦市場 (午後)

  沢山の人が行き交っている

  美砂子 店頭に並ぶ食材を見ながら歩いている


 美砂子(M)「小学5年の春 今日のような 春うららかな日 学校から帰ると アパートの小さ

        な窓から射し込んだ夕陽の光が 小さなキッチンを照らし出していました」


○ 回想 アパートの部屋 (昭和50年代)

  窓からオレンジ色の夕日の日差しが差し込んいる   

  ドアが開いて 美砂子(小学生 ランドセルを背負っている)入って来る 

  「ただいま」無音

  リンダ キッチンで倒れている


 美砂子(M)「テーブルの下で母が倒れていました 口から流れる鮮血の赤い色と夕日のオレンジ

        色が混ざった色は今でも忘れることができません 末期の胃癌でした」


  リンダ 口から血を流している

  美砂子 無表情でリンダを見下ろしている


 美砂子(M)「入院してたった 2週間はどで あっさり 死んでしまったんです あの日 病室

        の窓から見えた満開の桜の花が とても綺麗だったのを鮮明に覚えています」


○ 回想 病室 (昭和50年代)

  リンダ(ベットに横たわっている横顔)

  背景に窓 窓の外には満開の桜の木


 美砂子(M)「母も一人ぼっち 身寄りがなかったので お葬式も キャバレーの支配人さんと

        学校の担任の先生と数人のクラスメイトだけの ひっそりとしたものでした」


○ 回想 葬儀場の玄関 (昭和50年代)

  雨が降っている

  霊柩車 止まっている

  参列者(数人の大人 小学生 傘をさしている)

  美砂子 担任の先生 霊柩車に乗っている

  霊柩車 動き出す

  強い風で無数の桜の花びらが舞う

  

○ 新京極 (午後)

  沢山の人が行き交っている

  美砂子 歩いている

  美砂子(小声)テネーシーワルツのハミング


 美砂子(M)「不思議なんですが母の顔 全く覚えてないんです 写真も残ってないんです 母が

        死んだ後 誰かが処分したのか それとも 写真が嫌いだったのでしょうか その

        秘密は 私が 結婚した時に判りました・・・ そう言えば私も最近 写真が嫌い

        になってます 年のせいでしようかね」


○ 四条河原町 マルイの前 (午後)

  沢山の人が行き交い 待ち合わせの人達が立っている


 美砂子(M)「ここでよく 待ち合わせしたなー 早紀と・・・ 母が死んで 私は横須賀の児童

        養護施設で高校まで過ごしました そこでの生活は 一人ぼっちの 私に とって

        一度に沢山の家族が出来た様で 意外と楽しいものでした 自分で言うのもなんで

        すけど 成績優秀で高校を卒業した私は施設の理事長の紹介もあって 京都の信用

        金庫に めでたく入社出来たんです 施設の仲間との別れは 辛かったですが無色

        透明の自分に新しい色を付ける ために思い切って京都に来たんです ただ その

        時は ここが 母の・・・」


  (回想) 少女の笑顔


○ 四条木屋町  (夕)

  沢山の人が行き交っている

  美砂子 夕日を浴びて木屋町通りに入って行く


 美砂子   「母の名前は りん凛の はずでした・・・」


○ 高瀬川 (夕)

  美砂子(小声)テネーシーワルツのハミング

  夕日が水面に揺れている

 

 美砂子(M)「おかあさんと 遊びたかったなぁー」


○ ノスタルジアの店内入口 (夕)

  ドアが開き美砂子 入って来る

  ジャズが流れている


 リカ    「いらしゃい・・・」  

  リカ 美砂子をみて

 リカ    「オーナー 来られてますよ 呼んで来ますね」

 美砂子   「ありがとうございます 早紀に怒られそう・・・」

  美砂子 ドアの横で立っている

  稲垣陽一 奥から来る 

  美砂子 会釈する  

 陽一    「いらしゃいませ お伺いしております こちらへどうぞ」

  陽一 笑顔で 美砂子を席へと案内する

  美砂子 振り返り リカに会釈する

  リカ 微笑む

  陽一と美砂子 席につく

  陽一 写真を見て

 陽一    「この写真ですよね なかなかの 美男美女でしょう」

 美砂子   「ええ 古い映画のスチールでしょうか?」   

  陽一 首を振り

 陽一    「いいえ この写真 実は 父の遺品なんです」

 美砂子   「遺品・・・ ですか?」

 陽一    「はい」

  リカ 水を二人の前に置く

  陽一 リカに

 陽一    「ありがとう」

  美砂子 リカに会釈する

 陽一    「5年前に父が亡くなったて遺品整理していたら この写真が金庫から出てきたんで

        す」

 美砂子   「金庫から・・・ ですか?」

 陽一    「はい 大事そうに 和紙に包んで」

 美砂子   「そうですか・・・ で このお二人に 見覚えは?」

 陽一    「えっ?」

 美砂子   「ごめんなさい 職業柄 つい 実は・・・」

  美砂子 ショルダーバックから名刺入れを取りだし 名刺を陽一に差し出す

 美砂子   「私 こう言った 者です」

  陽一 受け取って名刺を見て 

 陽一    「ありがとうございます 三浦美砂子さん 温泉ライター・・・ ですか?」

 美砂子   「はい 全国の秘境温泉の取材をしてたりしおります」

 陽一    「秘境温泉ですか それは おもしろそうですね 私も 温泉は 大好きですよ」

 美砂子   「そ、そうですか」

 陽一    「お勧めの 温泉は どこですか?」

 美砂子   「青森の・・・それは 後で ゆっくりと」

 陽一    「ごめんない こちらも つい・・・ このお二人ですよね 実を言うと 私にも 

        見覚えが ないんです 多分 終戦直後 京都に進駐軍がいた時の写真かと思うん

        ですが・・・」

 美砂子   「進駐軍? でも 何で この写真を お店に飾られてんるんですか?」

 陽一    「ああ このお二人が あまりにも 魅力的だったのと お客様の中で この二人の

        事を ご存知の方が いらっしゃらないかと思いましてね 最初は 一番 目立つ

        レジの横に掛けてたんですが まわりまわって 今は一番落ち着く隅っこの この

        席に」

 美砂子   「そうなんですか・・・ ここどこなんですしょうか? 誰かの家でしょうか?」

 陽一    「そうですね たぶん たぶんですが どこかの 料亭かと」

 美砂子   「料亭のお座敷ですか」

 陽一    「テーブルの上の灰皿を 見てください」

  美砂子 写真に顔を近づける

 陽一    「灰皿の上にマッチ箱が 乗ってますよね」

 美砂子   「はい」

 陽一    「こう言った 気の利いた灰皿は 料亭かと思うんです」

 美砂子   「確かに そうでね なかなか 一般の家庭じゃあ こんなの無いですよね」

 陽一    「それに 床の間の掛け軸」

 美砂子   「これ 何の花でしょう?」

 陽一    「たぶん 椿かと」

 美砂子   「椿?」

 陽一    「はい 椿は 冬の花 お二人の服装からしても たぶん 季節は冬かと」

 美砂子   「冬・・・」

 陽一    「ここまでは 推理 出来るんですが ここから先は・・・」

 美砂子   「そうですか」

 陽一    「実は この店 前は 大正時代か続いていた 洋食屋だったんです」 

 美砂子   「そうなんですね」

 陽一    「それを父が亡くなって 私が引き継いだんです ここ 花街が近いでしょ なので

        昔から 花街の人達は いい お得意さんなんです」

 美砂子   「ええ」

 陽一    「ですから この写真の芸妓さん 多分 祇園か宮川町か先斗町の方だと思うんで

        す」

 美砂子   「はい」

 陽一    「以前 この写真を持って この辺りの置屋さんや お茶屋さんに聞いて回った事が

        あるんですが 結局 この芸伎さんの事を 知ってる方は 誰も・・・」

 美砂子   「そうなんですか・・・ で さっき おしゃっていた その進駐軍って いつごろ

        京都に いたんですか?」

 陽一    「私も よくは知りませんが 多分 戦後すぐですから 昭和20年頃と思います」

 美砂子   「昭和20年・・・」

 陽一    「でも 何で この写真に そんなご興味を?」 

 美砂子   「本当に不思議なんですけど 何か 見た瞬間 懐かしかったんです」

 陽一    「懐かしかった?」

 美砂子   「そうなんです まるで 古いアルバムを開けた時のような・・・  そう ノスタ

        ルジア ノスタルジアを感じたんです」






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