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第3話 理由

○ 木屋町通り(夜)

  高瀬川沿いの満開の桜が ライトアップされている 

  大勢の酔った人達が騒ぎながら行き交っている

  美砂子 早紀 酒に酔って はしゃぎながら歩いている


 早紀    「そやったら 美砂子 三浦に 戻ったんやな」

  美砂子 微笑んで

 美砂子   「うん!」

  美砂子 上着のポケットから 名刺入れを出し

 美砂子   「よろぴくー!」

  美砂子 早紀に 名刺を差し出す

  早紀 受け取り 名刺を見て

 早紀   「三浦って・・・ あんた もう 名刺 作ったんかいなー やるき 満々やな」

 美砂子  「仕事 早いでしょー 久しぶりの独身 気分爽快!」

  早紀 美砂子のショルダーバックを見て

 早紀   「あっ! それ まだ 付けてんの?」

 美砂子  「ええ?」

 早紀   「ほら カバンに付けてる お守り」

  美砂子 ショルダーバックを見て

 美砂子  「ああ これ?」

  ショルダーバックに 色あせた赤いお守り袋が付いている

 早紀   「それ 昔っから いつもカバンに付けてたやんなぁー? それどこのお守りなん?」

 美砂子  「知らなーい これ 母親の形見なの」

 早紀   「お母さんの?」

  美砂子 微笑んで

 美砂子  「う うん・・・ あー 身体が 軽い ルンルンルン・・・」

  美砂子 早紀の前を スキップして行く

  早紀 首を かしげ

 早紀   「ちょっと 美砂子! 待ってよ!」

  美砂子 スキップして行く


○ 西木屋町通り 団栗橋付近 (朝) 

  美砂子(声) 小さな声でテネーシーワルツのハミング

  朝日に輝く満開の桜並木

  高瀬川沿いの桜のトンネルの中を犬の散歩をしている人 ウォーキングをしている人 

  ジョギングをしている人が行き交っている

   

  美砂子 周りの景色を見ながら歩いている


 美砂子(M)「頭 痛・・・ 久しぶりに飲んだなぁー 昨夜 あの店を出て・・・ どうしたん

        だっけ? 木屋町のバーで飲んで・・・それから・・・それから ラーメン屋で 

        おじさんにナンパされたんだっけ それから・・・そうだ 三条の橋の上で早紀と

        別れて それから・・・ あの おじさん達とどこで別れたんだっけ・・・ まさ

        か早紀? 早紀ちゃんと帰ったかなぁー」

   美砂子 鴨川の土手を歩いている


 美砂子(M)「その頃の私は会社の同僚はいましたが プライベートなことを話せる親友と呼べる

        友人はいませんでした なので あの夜の早紀との再会は 私にとって 砂漠でや

        っと見つけたオアシスに 飛び込んだ時きに感じるようなエクスタシーでした 

        私の仕事はライターです ライターって言っても 私がなりたかった シナリオ

        ライターではなく 温泉専門雑誌の小さな出版社のしが無い物書きです 良く言え

        ば少数精鋭 言い方を変えると 人手不足のブラックな この会社では休む暇もな

        く全国の温泉地を 周っていました 勿論カメラマンなんていません 撮影もチケ

        ットの手配も 全部私の仕事でした 時には 入浴シーンのヌードモデルまでやる

        始末でした おかげで子供が出来ないは 夫は 不倫するは 挙句の果てに私まで

        不倫しちゃいました その結末は離婚 当たり前と言えば当てり前ですよね 

        京都には二泊する予定でした 結婚式以来やっと取れた有給休暇でした でも次の

        日の早朝の新幹線で 一旦 横浜に戻って 家には帰る暇もなく出勤して会議の後

        秋田行きの鬼のようなスケジュールでした」

        

   美砂子 一組みの手をつないだ老夫婦とすれ違う 美砂子 振り返り 微笑み

        桜のトンネルを 歩いて行く(後姿) 


 美砂子(M)「京都に来た理由は 早紀に会う以外に もう一つありました それは・・・」



○ 河原町通り (朝) 

  車 通勤 通学の人達が行き交っている  

  美砂子 歩いてい


 美砂子(M)「彼とはどこにでも転がっている様なごく平凡な出会いでした 彼は雑誌の製本会社

        に 勤めていて打ち合わせでちょくちょく会ってる内にランチに誘われたのが始ま

        りでした ルックスとか性格とか妥協点ほ色々とありましたが四十路前の彼の強引

        なアプローチに根負けしてズルズルと付き合っている内に ランチからディナーへ

        ディナーからブレックファーストへ平凡ですよね」


○ 河原町通り沿いのカフェの店内 (朝)


  美砂子 窓際の席で行き交う車や人達を見ながらコーヒーカップを両手で持っている


○ 湯気が上がるコーヒーカップ


○ 同店内

  美砂子 窓際の席で 外を眺めている


  (回想) 少女の笑顔


 美砂子   「あの子・・・」


 美砂子(M)「訳あって私には両親がいません そのせいか私はどこにでもあるごく普通の家庭に

        憧れていました 優しい夫とやんちゃな息子とおちゃめな娘に囲まれて家事に追わ

        れながら年をとって行く そんな平凡な人生に憧れていたんです その時は 彼が

        その夢を叶えてくれそうな気がしたんです」

   美砂子 窓の外を眺めている


 美砂子(M)「昔の歌に合わせた訳じゃないですけどちょうど結婚して3年目 子供もいないし 

        お互いに 不倫するには丁度いいタイミングだったかもしません」

 

   ラインの着信音が鳴る

   美砂子 カップをテーブルに置き スマホに目を落とす


 美砂子   「ありがとう・・・それだけ? 他に言う事 ないのかなぁー それも ラインって

        今更 声聞きたくはないとは思うけど 電話ぐらい 出来ないのかなぁー いろい

        ろ 整理するもの あるのに たく!」 

   美砂子 天井を仰ぎ 大きくため息をつく


 美砂子(M)「新居は小さな賃貸のアパートでしたが 久しぶりに二人で行った映画の帰り道に立

        ち寄った新築のマンションのモデルルームに彼が一目惚れ 営業マンに今の家賃に

        ちょっと足すだけで買えますよ なんて言われちゃって 1年後 こんなことにな

        るのも 知らずに買っちゃたんです まるでスマホの料金プランを決めるように」

   美砂子 コーヒーを一口飲む


 美砂子   「あのマンションどーするのよ! 頭金の半分と毎月のローンの半分 私が出したん

        だからねぇー 震度7でも大丈夫な あのマンション半分にぶった切りますか! 

        もう!・・・ あ! この写真・・・」


○ モノクロ写真

  軍服を着た白人と芸者が座敷で並んで座っている 







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